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27話

終わりそう、でも終わらない。あと数話お付き合いください。

十二月に入り、十一月末から降り始めていた雪も既に5cmほどの積雪が見られるようになってきていた。三牢沢の標高が高い部分は非常に寒いのでもっと雪が降っているだろうが、そもそも2000mもある山がある時点でこの市がおかしいことは当たり前だ。

「ナツー、そんな格好だと風邪引くよー?僕特製の、「凛華カイロ」であっためたげるよ」

「ありがとなー。...うん、やっぱり子供みたいにあったかいな」

「子供みたいに、は余計だよ!...まあ、まだ高校生だから子供だけどさ?」

俺たちの関係は...変わらないわけではない。案外「恋」と向き合ってしまえば楽なもので、無事...とは全く言えないが、それでも一応は「恋人」という形に落ち着いた。まだまだ道のりは長いが、いつかは...その、「家族」...になれるのだろうか。

「?ナツ、顔真っ赤だよ?熱でもあるの?」

ぺたっとした感触が俺の額に触れる。凛華の少し冷たい手が俺の額に触れているのだが、「なんでもねえよ」と返してやって、手を離させる。

そろそろ、自転車で行くと積雪に滑って坂が登れなくなるので自転車通学はダメになった。ということで、俺たちは今歩きで通学していた。

『わあ、見せつけてくれるじゃんあのカップル...。』

『...やぁっと夏凛くんは素直になったんだ...。』

後者の人間ーーーおそらく、というか確信を持っていえるが谷町、お前のせいだからな?


「...ああ、おはよう。ずいぶん寒そうだが...まあ、いいか。それと凛華、黒ストッキングじゃもう風邪引くで済まなくなるからやめとけよ?」

「やだ!ナツが僕の脚についつい欲情した視線を向けてくれるからーーーいたっ!?ナツ!?」

「欲情とか天下の往来で言うな。せめて家にしろ」

「えー、だって家だとえっちするしー...てっ」

「捏造すんな」

学校に着くと、北斗と一緒の恋が声をかけてきた。北斗の無言ぶりもだが、恋が女を連れているというのも見慣れた光景だ。

というか、本当に欲情とかいうのはやめてほしい。周囲の視線が割と痛い。俺たちは急いでクラスに向かった。


「おはよう、悪友集団。今日は原点回帰して1-1コス、いわゆるセーラー服だね。『多頭蛇(ヒュドラ)』を通してこの学校にも卸してもらってるし、そのうち私服と制服が選べるようになるかもだね」

学校に着くと、凛華よりも寒そうな谷町が声をかけてきていた。今日の気温は現在マイナス7.3度、この時期にしては少し寒いぐらいだが足は黒いハイソックスでその上は生足である。...凍傷が心配だ。

セーラー服は色が緑が首元に入っており、他は白地というものだ。やはり西アニのアレを彷彿とさせるが、谷町は上に灰色のベストを着ていることから少々趣旨が異なるのかもしれない。

「いやあ、それにしても僕たちの『多頭蛇(ヒュドラ)』はすごいね。さすが、Alt-Noa社元会長、岸川 原初(あると)が作った組織なだけあるよ」

一瞬、俺たちの間に沈黙が降りた。しかし凛華がすぐに立ち直ると、

「...美治?あとで、じぃっっくりと、お話しよう...ねぇ?」

「ひぅっ」

哀れな谷血は悲鳴をあげていた。まあ、凛華の手がワキワキしていたから酷いことになるのは確実だが、『もうコスできないかも...と涙ながらに言われるのもそれはそれで困りものだ。というか、谷町は女装に全く持って頓着しなくなった。周りからは、『優等生が馬鹿になって女装を始めた』と思われているらしい。コイツの本質がそこにあるとは知らずに。ちなみに、谷町は以前の文化祭で意気投合した男...白口とは仲良くやっているらしい。顧客と製作者、といったところだが。


「...さて、悲しいことだがそろそろお前らにも現実を見せる時期だ。学期末の定期考査が足並み揃えてそろりそろりとやってきたぞ。さあ、勉強の沼に堕ちろ」

『うぎゃぁぁぁぁああ!』

悲鳴が各地から聞こえる。おそらく、赤点付近を低空飛行する奴らだろう。

「それと、今回は特別に、うちのクラスだけで順位をつける。上位5名には、先生から特別なプレゼントもあるから期待しておけ」

その言葉で、クラスはざわついた。この男がプレゼントといえば、去年のことを思い出す。昨年の2期期末定期考査でトップを取ってしまった凛華は、プレゼントとしてペンケースと万年筆をもらっているのだ。実用性があり、尚且つあまり高価でもない「もらうと嬉しいもの」だ。

「じゃ、今日はこの辺で締めだ。坂道で転ぶなよー」

なぜだろう、凛華含め皆が敵に見えた気がした。


「じゃ、帰ろっか!」

「ああ、そうだな。...ああそうだ、凛華は手袋を忘れたみたいだからこっちな」

そう言って、無理やり俺のアウターのポケットに凛華の手を収納し、手を握る。

「!...もう、気づくの遅いよ、馬鹿」

とっても嬉しそうで何よりだ。凛華の「馬鹿」にも、愛情が感じられた。

「...それで、だけどさ。今回は生物が壊滅的にダメな気がして...。」

「マジか?俺は生物だけすげえからなぁ...。...おし、俺が生物を教えて凛華にそれ以外を教えてもらうってのはどうだ?」

「うん!もー、ナツはお馬鹿さんなんだからなー」

「70もとりゃ十分だと思うけどな。生物以外90台のお前の方がおかしんだよ」

「あー、僕のことおかしいって言わないのー」

「うるせえ」

やっぱり、このくらいがちょうどいい、そう思いつつ転んで凛華に笑われた帰り道だった。

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