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25話

悔しいことに長くなってしまいました!あと、昨晩までのサボり気味な私をお許しください。

「...くぁ」

あくびをしながら、俺は市の中心部へと降る坂を降りて行く。

凛華は、もう家に着いているだろうか。俺はまだ学校から始まる長い下り坂を降りきれていないが、自転車の早さなら余裕で家まで着いていることだろう。ただ、家の鍵は凛華も持っているのでドアロックされていないかが心配だ。

こうやって歩いて帰るというのもなかなかに新鮮だ。本当は凛華と帰りたかったが...そう考えて、一筋の涙。

さっきの凛華の拒絶は、俺の心に結構なダメージを与えたみたいだ。秋の時みたいに喧嘩しているわけじゃない。今回は、こっちに非があることを理解しているからこそこうやって落ち込んでいるのだ。しかも、それを挽回しようとして拒絶を受けたらーーーいつもなら、チョップして「落ち着け」なんて言ってから話してことなきを得る...といった感じだったろうが、一日無視された後ではすっかり弱ってしまっていたようだ。

思い出して、また落ち込んで歩幅が小さくなる。今日家に帰ったら、ゆっくり眠ろう。凛華のことは思い出さないようにして。

...そう思うことこそ、アイツを想っているということに気づきながら、俺はそう自分に暗示するしかなかった。


家に帰ってみても、凛華は姿を現さなかった。大方、ジェネシスオンラインに潜っているのだろうが...今、彼女をみたらムシャクシャして手を上げる気がする。その行為は悪友にするそれではなく、もはやただのDVだ。

ジェネシスオンラインが挿さったファイガンクレイドルを見て少しだけ歯噛みしつつ、俺は飯を取る時に凛華の顔も見たくなくてすぐに寝た。そして姿が見えなければ絶対に乗り込んでくるだろうからと、扉の前にバリケードを作って誰にも入れないようにした。それで何か言ってくるなら、凛華と同じ反応をしてみるのもいいかもしれない。

「は、はは...」

気がつけば、涙が出ていた。自分でもその行為が虚しいことはよく分かっているのだ。...だが、そうでもしなきゃ俺はだめになってしまいそうだ。

眠る直前、誰かが扉を叩いてきた気がしたが気にせず俺は眠った。


「...おはよ、ナツ」

「...凛華?なんでここに」

翌朝。目が覚めると凛華が俺の腹の上に乗っていた。バリケードは綺麗さっぱり無くなっており、凛華の顔には罪悪感ひとつない。

「?ナツを起こすためだよ?変なことなんて何にもないじゃん」

...何かおかしい気がする。凛華なら、多分罪の意識で心が潰れているはずだ。こんな気軽に挨拶するわけがない。しかも、バリケードは内側から撤去しなければ扉を開けられない。それもおかしいのだ。

「そろそろ夏祭りだね。僕がとっても可愛い浴衣を見せてあげるから、待っててね!」

「...ああ、なんだ」

「む。なんだって何?」

凛華のその言葉に、俺はやっと理解した。これは夢だ。俺が幸せだと思っている瞬間を捏造した夢。夏の時、凛華はまだ家の外から起こしてきていた。それに、こんなに気安く話しかけてきているということは秋のアレの前...喧嘩していない時期だから、凛華が俺の腹フェチを拗らせていた時期だろう。


「...変なの。ま、いっか。ナツ、学校行こ?」

「いや、今夏休みだろ。俺は惰眠を貪るから、凛華は下で飯でも食ってろ?」

その瞬間、明らかに凛華...の虚像は狼狽した。ただし非をすぐに認め、「...うん。じゃ、お休み」とすぐに帰って行った。

よくできた夢だ。俺はやっぱりウサギさんみたいだ。凛華に無視されるから、せめて夢の中では幸せでいたいと。

...ただ、今部屋を出て行った夢の中の凛華が、夕方の俺のように見えたのは気のせいだろうか。

そう思った瞬間、風景は変わった。

そこは、暗い俺の部屋だった。バリケードは相変わらずあって、ここが現実なのだと強く理解する。

『...ナツぅ。起きてるなら返事してよぉ...。』

扉の外から、凛華の泣き言が聞こえた。嗚咽も時々聞こえる。俺は口を開いて...力なく項垂れた。どうせ、扉を開けて話しかけようとすればまた繰り返しだ。それなら夢の方が何倍もマシだ。やっぱり、俺はまだ凛華に顔を合わせたくはない。


『...僕のこと怒ってるなら、無視してて。でも、僕はやっぱり寂しいよぉ...。』

「...ッ!」

また涙が浮かんだ。心の中では、今すぐに叫びたい激情に駆られたがなんとか自制した。今なら、「なんで夕方の時に無視したんだ!」と責め立てることもできる。だが、それじゃ秋の時の繰り返しだ。

俺は少しづつバリケードを撤去して行った。数時間しか寝ていないらしい体では、なかなかに重労働だった。

「...ナツーっ!」

扉を開けると、凛華が飛びかかってきた。俺はそれをーーー支えない。床に鼻をぶつけた凛華が俺を驚いた顔で見ていたが、すぐに夕べの顔になった。

「...そう。そっちがその気ならーーー」

「...寂しかったんだぞ」

「え?」

戸惑っている凛華に、もう一度言う。

「凛華が話してくれなくて、俺は今日一日本当に寂しかったんだからな?心が磨耗して、それで関係を戻そうとして言ったら拒絶されて...俺はな、凛華が望むくらいに器用じゃないんだよ。それでお前がつまんない見栄を張るから、お前も俺も泣く羽目になるんだ」

「ち、違っ!僕は泣いてなんか...!」

その言葉に、強さはない。


「...そうかよ。ならいい、さっさと帰れ。顔なんて2度とみたくない」

口元からその言葉が出た瞬間、やってしまったと思った。これじゃ、まるきり秋の時と同じだ。慌てて、そっぽを向いた顔を凛華に向けると...笑われた。

「...僕の真似?ナツも結構趣味悪いねー」

「...?怒らないのか?」

「今の言葉に怒りたい」

「うっ...。」

「いい?大体ね、僕に冷たいのが悪いんだよ?せっかくこんなに可愛い僕が、ナツとデートしてあげるって言ってるのに!喜ばなきゃ損だよ、損!」

俺をつっつく凛華。その行動に、俺はあることに気づいた。...きっと、いま凛華は俺に朝のやり直しをさせてくれてるのだ。なら...!

俺はなおも言い募ろうとする凛華にさらに接近して、親指の太い方の向き一本分ぐらいの距離まで顔を近づけた。

「...!?あ、え...!?」

焦って顔を離そうとする赤面した凛華。その瞬間何故か、胸がズキっとした。

「...?」

何もしてこない俺に戸惑ったか、少し下から覗き込むように俺を見る凛華。その顔を見て、なぜか赤面するのが感じられた。


「...ナツ?」

少しだけ不安が入り混じったような声に、俺は顔を逸らした。

「...つ、冷たい態度は取らないようにする。だから明日は、いつもの姿で起こしに来い!」

「...うん!明日も起こしにくるね、ナツ!」

嬉しそうに鼻歌混じりで帰って行く凛華に、俺はその背を見て階段を降りたところで扉を閉め...一人小さく悶えた。

...これが「恋」、なのだろうか?

もし恋なのだとしたら...と思って今までのことを振り返り...その後眠るまで、軽く三桁は悶えた。

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