23話
「ああ、いらっしゃい夏凛!待ってたよ!...って凛華まで!?私って幸せ者だ!」
「...谷町って家だとこれが素なんだ」
十一月二十三日土曜日。俺たちは谷町の家に来ていた。ちょっとだけ離れているが、それでも俺たちの家からは割と近い。そして谷町だが...ガッツリと女装していた。いつも学校にいる時の、「クラスに1人はいる優等生」から一変して「だれがみてもちょっと棘ありそうな美少女」になっていた。実際扉開けた瞬間まで無愛想な顔だったのが印象に残っている。
「...か、勘違いしないでよ。僕はあくまで、ナツ君が心配で...。」
「まあまあ、私の工房に案内するからそこで私のコーデが嫌だったら見てるだけでもいいから!」
若干のツンデレ発言をする凛華を、無理やり言いこめるようにして谷町は俺たちを自室へと招いた。
「ようこそ、我が谷町家が誇る美少女・谷町 美治の部屋へ!」
地下に特別に作られた谷町(おまえ、そんな名前だったのか)専用の工房は、至る所にマネキンが置いてあった。これはコーディネートの一例を出しているのかもしれないし、それで何かを作っているのかもしれない。
「今の私に慣れるには時間かかるだろうから、今日は20%ぐらいにしてるんだ!それと、私はネット通販してるからね!ハンドメイドだから一作で大体二週間ぐらいかかるけど、結構評判いいんだよ?特に、私が好きなゴスロリシリーズとかは創作が湧くからついつい新しいのがどんどん生まれて同じ型番でも6フェーズ目とか7フェーズ目のもの作ったりもするし」
20パーでこれなら、最終形態はどんなのになるんだ。それと、あの...72-6コス?あれもこうやって作られてたのか。
「それに、君たちがいるから上客の『多頭蛇』にも流しやすいし♪それに、あそこからライセンス契約って形で量産体制になってるから、私は何をしないでも不労収入が発生してるんだよねー」
「ここもか『ヒュドラ』!」
あの親父め、身近なところにどんだけ根を張ってんだ。
「あ、そういえば今日は夏凛のコスだっけ?君は元がいいから、私みたいにメイクなしでも問題なく化けれるね。というか、逆にメイクすると素材がダメになる気もするし。じゃ、はじめよっか」
そのまま腕を引かれて、奥にあった小部屋に通される。そこにはとてつもない量の服があった。
「ここはね、私とコスしたいって人しか入れない部屋。...君の場合、なんでも合いそうだけどーーー」
「...じゃあ、凛華ちゃんにお披露目してあげてね!」
そんな谷町の声と共に、俺は部屋から出る。...少し変な感じだが、意外と悪くない。そう思って凛華の顔を見ると...表情が抜け落ちていた。
「...り、凛華?」
心配になって声をかけると...あ、プルプル震え始めた。
「...可愛い」
呟いた凛華に、俺は捕獲された。いつもの、「かわいいーっ!」て感じではなく、無表情でただ撫でたり頬擦りしてくる姿は若干怖い。
「凛華ーーー」
「...黙ってて。あなたは私のもの、いい?」
「お、おーけー...」
今の俺って、凛華の一人称変えるぐらい強烈なのか。
「...ありゃー。やっぱりこうなっちゃったか。でも可愛いよ、夏凛くん」
いつもの声が聞こえる。そこにいたのは、相変わらず女装姿にも関わらず意識として「男」な状態の谷町だった。心の性格のモード変えるほどって...ほんと、どんな形なんだか。
「凛華ちゃん、そろそろ離してあげたらどうかな?そろそろ疲れてきてるみたいだし」
「...わかった」
すごい不服そうな声だった。それにしても、あんな凛華は2度と見たくない。
少しだけとまどっていると、谷町が
「あ、多分君は自分の姿を見てみたいと思うから姿見持ってきたよ」
「ーーー」
完全にショートした。
めのまえにいたのはだれがみてもびしょうじょだった。
こんなやつをしらなかったなんて、おれはどんなにふこうーーー
「ナツ君!」
「いでっ」
...はっ!意識が飛んでいた。
「...うん。夏凛のコスは永久に封印してようね」
ちょっとだけ残念だ。
その代わりということなのか、凛華がコスを着た。物は違うが、なかなかに可愛い。
...男子の学生服に、黒い猫耳付きの帽子。
横に谷町がいたが、それを塗りつぶすような可愛さだった。
「...どうかな?ナツ君。僕、可愛い...?」
「ーーー間違いなく可愛い」
「!ほんと!?」
その後、飛び跳ねた凛華を家まで送って、今日はジェネシスを控えた。
...そして二日後、十一月二十五日月曜日。
「...おはよう、ナツ君」
久しぶりに俺の腹の上に乗っていたのは、相変わらずの凛華。
...ただし、服装は男子用の制服になっていたが。




