表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/32

15話

「ナツ、おっはよー!僕はナツが気になって夢の中でナツと一緒に無理やり恋君を病院から引きずり出してたよ!やっぱり僕たちって友達思いだよね!」

「...何言ってるのか理解はできないが、おはよう。あと、避けてくれ」

「んー、キスしてくれたらどいてあげるよ」

9月16日月曜。凛華のいつもの目覚まし...のはずなのだが、俺は気が気ではない。今、俺は完全に凛華に覆いかぶせられていた。コイツがそのまま倒れ込めば、俺の唇が奪われるようなそんな体勢だ。しかも、両腕は先週まではこんなに強くなかったはずの凛華に拘束されていて動かすことは出来ない。...万事休す、という状態なのだ。


「ほらほら、起き上がりたいんでしょ?そのためにはどうすればいいか...分かってるよね?」

「うっ...。」

俺をいじめるのが楽しいのか、お前は!...などと言ってしまえば、更に扱いがひどくなるだけだ。だが、拘束されて身動きが取れない状況の俺にはそれ以外にできることなどない。

木曜におかしくなって、金曜はまだマシだった。相変わらず馬乗りの起こし方だったが、こんなふうに露骨ないじめを行ってくるほどではなかった。

「...分かった」

仕方なく、俺は凛華の要望を呑む事にする。

「はあ、ナツは最初から素直に僕の言う事聞いてればいいんだよ。...でも、反抗的な視線もそれはそれで...。」

鳥肌が立った。コイツ、間違いなく俺の事をいじめるのを楽しんでやがる。

最終手段としていた父さんを呼ぶことも禁じられたような状況で、本当の本当にキスする市亜k無いのか...?


「...!」

「どうしたの?早くキスしなよ、ナツ?」

「ああ分かった、目を閉じてろ」

「え!?あ、まあそう言うシチュがいいなら僕も吝かじゃないけど...?」

赤面しつつも、凛華は目を瞑った。キス待ち顔、これで俺に恋人が出来た時には「ファーストキスを奪われた」だのなんだのと言って俺を破局させて、更にそのネタを使って俺を飼い殺しにするつもりなのだろう。だが、そうはいくものか。

俺は、凛華にキスした。...ただし、頬に。

「...?」

「ほら、俺はキスしたぞ?さあ解放しろ」

「え!?あ、いや、でも僕が言ってるのは...」

「誰も、『口に』キスしろなんて言ってないからな。頬だろうが額だろうが良いだろ」

「...分かった。でも、明日は口にしてもらうからね?」

「嫌だね。そうなったら俺は不登校になる」

「うぅー...。そんなに僕のことが嫌いなの?」


...なんでそんな話になるのだろうか。凛華のすねたような顔も案外可愛...じゃなくて、凛華の事が嫌いなわけがないのに。

「嫌いな訳無いだろ?寧ろ、好きだ」

「!...じゃ、じゃあなんで僕を拒むの?」

「弱み握られたら怖えからだよ!あれでキスした日には何要求されるか...。」

その瞬間、凛華は目を光らせた。やべっ、と思う間もなく凛華は、

「弱み、かあ。...弱みを握られたらまずい事でもあるの?」

「あ、あるわけねえだろ?大体、弱みを握れる奴も作る奴もお前と恋ぐらいだろ」

その瞬間、凛華から表情が抜け落ちた。

「...つまり、恋君とそういうことしてるってことなの?」

「んなわけねえだろ!?というかどうやってそんな思考になるんだよ!」

「へえー...。」

聞いちゃいねえ。ただ、恋と俺に握られちゃまずい事なんてあるわけがない。...まあ、凛華がこうなる為のシチュエーションの設定のための打ち合わせをしたって意味では言えないかもしれないが...。


「...本当なんだ」

「なんでそうなるんだ!?」

「いや?そうだよね、男同士の爛れた関係の中に僕が入っても受け入れてくれるはずないもんね。...気持ち悪っ」

凛華の、心の底から軽蔑するような視線が俺を刺す。俺に向けられることに納得は出来ないまでも、少なくともその感情だけは分かる。大体、俺と恋がなんでBから始まってLで終わる感じだと思っているんだか。

その勘違いを解くためなら、流石に身を切ることも仕方ない。永久にからかわれそうだが、いうか。

「そんな事は無い」

「はいはい、そうやって隠そうとするなんてみっともないし気持ち悪いから汚れたその身体で見ないで」

結構痛い。心がグサグサと言葉の刃に貫かれる。だが、俺は続けるしかない。

「本当なんだ。俺が好きなのはお前だから」


「...!?」

その言葉に、凛華は明らかに表情を変えた。いや、目の色を変えた。

「...ほんとに?嘘言ってるわけじゃない?」

鋭い。ただ、これで嘘だと気付かれれば恋と体の関係にあると勘違いされたままになる。それだけは...死んでも回避しなくてはならない。

「本当だ。ただ、キスとかはちゃんとした時にしたいからな。無理やり唇を奪われるのは本望じゃないんだよ」

「...!そ、そこまで言うなら僕も引くしかないね」

あれ?思ったのと反応が違う。「えー?僕の事、好きなんだー?」って言ってくると思ったんだけどな?

「ふふ、もうナツってば純情さんなんだからなー」

盛大な勘違いをしているらしいが...まあいいか。少なくとも、恋との体の関係という妄想がなくなったのだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ