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13話

「...はぁ。こりゃどっちもどっちじゃねえかよ。両方とも、俺がいないとてんでダメになるな」

「「うっ...」」

自覚していたことをはっきりと伝えられると非常に苦しく感じる。事実、正論、無感情な声。三拍子が俺と凛華を直に抉る。恋だからこそ...俺たちに何の隠し立てもなく言ってくる「悪友」の言葉だからこそ、なおさら心が折れそうになってしまう。

「「だってーーー」」

「ああいい、そういうのは聞き飽きた。もう一回、相手に対する憎悪は忘れて話を聞いてみろ?多分それで解決するレベルだから」


渋々といった様子で凛華が頷いたせいで、俺も頷かざるを得なかった。

「...恋が刺された後、一緒に寝たんだよ」

「へえ、同衾か。一昨日の夜はずいぶんお楽しみだったな?」

「ちげぇよ!?手は出してないし、何もされてもいないはずだ!...多分。...凛華、俺に手出してたりは、してない...よな?」

心配になって聞くと、凛華は目を逸らした。

「本当に俺に手出したりなんて...ないよな?ないならないって言ってくれよ!?」

焦る俺の声を聞いたのか、すごく嫌そうな顔の凛華が答えてくれた。

「...前のお返しに、額をナイフで彫ってやった」

「こっわ!?まじかよ!?というか傷残らないなんてどんな特殊能力使ったんだよ!?」

若干引いていると、凛華がくすりと笑って、

「冗談だよ、冗談。ホントは...縁日の時のお返しで、同じことをしただけだから」

「...!?り、凛華?あの時起きてたのか!?」

だとしたら、俺が額にキスしたお返しとして...。

「〜ッ!」

耳が赤くなって行くのを感じる。「だ、大丈夫?」と聞く凛華を見ていると、また赤面してしまった。


「...何したの?」

「え?」

「いや、あれってカマかけただけなのに焦ってさ、正直驚いたんだよね」

「...え!?」

まさかの失態に脳が空回りし...ようやくまともな思考ができるようになってきた時には、俺の顔はまた赤くなっていただろう。...ん?じゃあ、お返しって何をしたんだ...?

「なあ、凛華。俺がやったこと知らないなら、お返しに何をしたんだ?」

「...え!?」

返しに予想していなかったのか、凛華の頬が紅潮していく。何かをぶつぶつと言っていたが、やがて意を決したかのように、

「...言えないこと、した。いっぱいして、僕の頭がパァになるかと思った」

「ま、待て。それってものによっては俺が捕まる案件だぞ?」

「ま、そもそも年頃の男女が一つ屋根の下で同衾してるんだよ?無駄なところで鈍感なナツはともかく、僕はーーー」

とそこまで言って、何かに気づいたように凛華は口を塞ぐ。俺がおかしいなと思っていると、恋がニヤニヤしてこちらを見ていた。


「...なんだよ」

「いいや?やっぱり凛華も恋する乙女なんだなって思って、面白がってるだけだ」

「ー〜ッ!?ち、違うよ!?ぼ、僕は恋なんてしてなくて、その...と、とにかく違うからっ!」

恋の一言で今までに見たこともないくらいに頬を紅潮させた...というよりかは少し黒くなった頬で妙に吃った言葉を放った凛華は、飛ぶように帰って行った。

「...恋。お前のせいで凛華と和解できなかったじゃねえか」

咎めるように視線を送ると、「いや、大成功だ。それ以上に、アプローチの仕方を変えさせれることに気づいたからな」と全く反省していなさそうな言葉を吐いた。

「さっきまでのお前らは何も話せていなかったのに、今のアレはただ胸中を見抜かれて暴走しているだけだ。ナツ、お前が優しい言葉をかけてやればコロッと陥ちるぞ?しかも間違いなく、デレ付きで」


言っている内容が理解できなかったが、もう一回聞くと呆れたような視線をくれた後、

「要は、あいつがお前に恋心を抱いているのを俺に言い当てられて焦っているってことだ。しかも、凛華にはそれが恋だっていう自覚もないから余計にタチが悪りぃ。だから今まで通りとはいかねえかもしれないが、会話自体は問題なく進むはずだ。...んで、思わせぶりな言葉を言ってやれ。それで『え、いや、僕は...!?』なんて感じで吃ったら、こう言ってやればいい」

「本当は、俺のことが好きなんだろ?ってか」

「ああ、そうだ。ま、お前が意外と肝っ玉太いってのは前にわかってたからな。...あとは、これで死亡フラグが立っていてあの女に刺されないようにすれば...。」

「...あの女?」

「ああ、こっちの話だ。気にするな」


いや、気にするなって言われてもなあ...。

そうは思ったが、とりあえずは帰るか。別れの挨拶を恋に告げると、いつもの帰路に着く。...いや、着こうとする。

「...ナツ、遅かったね」

「凛華?...もしかして、俺のこと待っててくれたのか?」

それなら嬉しい。早速、恋が自然な会話をさせてくれた恩恵があるということなのだ。しかし凛華はなぜか頬を紅潮させて、

「あ、いや、僕は...!?」

どもっていた。

...もしやこれ、本当に脈アリか?そう思って、俺は恋との会話通りに動く。ついでに壁があるから、シチュエーション的にどきどきするだろう壁ドンもつけて。まあ、自分にも気恥ずかしさが反射するんだが。

「え、何...」

「凛華。...本当は、俺のこと好き...なんだろ?」

意図的に作ったイケメンフェイスと俺なりのイケボで凛華に伝える。

しかし凛華は、

「あ、な、ナツなんて大っ嫌いだー!」

頬を赤くしながらも、俺を突き飛ばして走って病院から出て行った。

...あれー?おかしいなー?

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