表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

捨てられた幼女、ツンデレ魔女に拾われる

作者: 雨帆傲離
掲載日:2023/02/23

 稀に見る不作の年だった。

 気まぐれでいつもは行かない森の入り口まで散歩をしていた。

 ふと何か小さな影が視界にうつった気がした。

 近づいて見てみるとそれは見窄らしい格好をした1人の少女であった。


「こんなところで何をしてるんだい」


 そう私が尋ねると。


 目をぱちくりとさせながらも


「待ってる」


 突然現れ、挨拶をした私に少女は驚きながらも一言返事をした。

 いや、驚いたのは私のこの銀髪だろうか。

 人間でこの髪の色は珍しいだろうからね。


 さてしかし、返事は『待ってる』か。

 待ってるとは誰だろうか。おそらく親が兄弟だろう。

 こんな森の入り口に子供を一人で放っているのは明らかに危険だ。

 放置されている。つまりこの少女の親は迎えに来るつもりなどないだろうな。

 捨て子。珍しいことではない。

 不作の年。口減らしのためにこの少女は捨てられたのだろう。


 寒さからだろうか。少女の顔色はよくない。頬も痩せこけている。

 満足に食にありつけてないのだろう。

 ここに放置していては、そのうち寒さで死ぬか。

 もしくは獣の餌になるか。

 少なくとも明日まで持つことはない。

 普段の私なら、見て見ぬふりをしただろう。

 なぜなら私は人間が嫌いなのだ。


 だが、しかし。

 この時の私は虫の居所がよかったのかもしれない。


「待ってるにしても一人でかい?ここは魔女の森って大人から聞かなかったのかな」


「……知ってる」


「危険だと聞かされているだろ?」


「……でもここで待ってろって」


 健気な子だ。捨てられた事にうすうす気づいているだろうに。

 それでも頑なに親を信じているのは、何故だろうか。

 親への親愛か。それとも依存か。

 人間とはよくわからない生物だ。


「君は親に捨てられたんだよ」


「…………」


 無言か。否定したくてもできないのだろうか。

 まぁ、捨てられたことは意地でも認めたくないか。

 適当な枝木を集め私は指を鳴らす。

 一瞬小さな光が指先に灯る。その直後、枝木から炎が生まれ焚き火となった。


「寒いだろ? お姉さんが一緒に待ってあげるよ」

「ほら焚き火の近くにおいで」


「…………」


 少女は少し悩んだ素振りをみせた後コクリとうなづくと、私のそばに座り込んだ。

 それから数時間。太陽が傾きあたりを夕日で赤く染め。

 さらに数時間。太陽が落ち夜の帳が下りる。

 そして、その数時間後。夜の闇の中を真っ白な雪がひらひらと降り始めた。


「まだ待つかい?」


「…………」


 少女は顔を俯きながら横に首を振った。

 捨てられたことを理解したのだろう。

 理解はしただけで納得をしたわけではないだろうが。

 さてさて、丁度小間使いも欲しかったところだし連れて行くことにしようかな。


「もし行くところがないなら私の所に来る気はないかい?」


 少女は少し黙ったあとに小さく頷いた。


「それじゃあ行こうか、何か聞きたいことがあったら言ってくれたまえ」


「……お姉さん、誰?」


「私かい? 私は魔女さ」


「魔女ってなに?」


 ふむ。なにと言われても返答に困るが。

 まぁ人間からよく言われていることでも返そうか。


「魔女ってのは悪い人のことさ」


「……ふーん、わたしにも悪いことするの?」


「ああ、そうだね。私のために死ぬまで働いてもらおうかな。何せ私は悪い魔女だからね」


 そう、私は悪い魔女。

 人間に嫌われ、人間を嫌い、全てを遠ざけ、一人森の奥で暮らす。

 そんな悪い悪い魔女。それが私なのだ。


「……でも、魔女さんはわたしと一緒に待ってくれた。良い人……だよ?」


「それはただの気まぐれさ、今だけでもそう思ってることだね」


 私は少女と共に森の奥に向かう。

 人間には不可侵領域と言われる魔女の住処だ。



 森の奥にある私の家にたどり着いた。まずはこの見窄らしい身なりからどうにかしていくとしよう。


「ここが私の家だよ、これからここに住み私のために働くんだ。いいね?」


 少女は俯きながら小さく頷いた。不安なのだろう。私にとってはどうでもいいが。

 さてまずはどうしようか。よく見ると服が薄汚れている。

 とりあえず服は洗っておこうか。


「では早速その小汚い服を脱いでもらおうか。代わりにこれを着とくんだよ」


 そう言い私は薬草の調合のときに使うローブを少女に渡した。


「……これ……大きい」


「文句いうんじゃないよ。ほら早く脱いで風呂に入るんだね」


 そう言い少女を風呂に入れる。

 風呂から上がった後は軽く口に食べ物を詰め込む。

 適度な眠気もきたことだしそろそろ寝るとしようか。


「さぁ夜も遅いし今日は寝るんだよ」


「……はい」


 朝が来た。薬草が少なくなってきたし採りにいこうかな。

 丁度いいことだしどこで採ってくるか教えておこうかな。


「薬草が少なくなってきてね。次からは一人で行ってもらうけど今日は案内として連れていってあげよう。」


 少し不満そうな顔をしてるのを横目に私は少女と一緒にいつも行っている泉まで薬草を採りにいった。

 やはりここの空気はいい。


「いいかい、薬草はこの泉の近くに多く生えてるからここから採ってくるんだよ」


 一回来ただけで道を覚えられるか不安ではある。出来れば一回で覚えてほしいものだ。


 「……」


 これじゃあこの先大丈夫なのか少し心配になってきたよ。

 ただ今そんな事を心配していても仕方がない。とりあえず薬草を集めて家に帰るとしよう。

 薬草を集めて家に帰るまで少女は一言も話すことはなかった。

 家にたどり着いたときには日も欠け夜に差しかかろうとしていた。

 動いた事だし晩御飯にするとしようか。


「なにか食べたいものはあるかい」


「……卵焼き」


 これは困った。いつも適当なものしか作ってないから作れる気がしない。

 いつも食べている蒸かし芋や調合の余りではダメだろうか。

 流石に子どもだし変なもの食べさせるわけにはいかないか。


「上手くできなくても文句言うんじゃないよ」


 仕方がないので言葉から想像して料理をしてみる。

 卵焼きか。とりあえず卵に砂糖でも入れて焼けばそれなりの形になるだろう。


「砂糖はどこにしまったかな。あぁっ!!卵が焦げる」


 ふぅ、なんとか出来たといっていいのだろうか。

 色は黄色というより黒に近く形もイビツだった。

 だから料理なんて嫌いなんだ。


「冷めないうちに食べるんだよ」


 食べものなんてお腹に入れば皆同じ何だから味なんてどうでもいいじゃないか。そうだ、うん。


「……おいしいかい?」


「おいしい!!!」


 まずいと言われると思ったから驚いた。

 そう言われると思っていただけに褒められると嬉しい思いが溢れ出て止まらなくなった。


「そっ、そうかい」


 美味しいって言われるのはこんなに嬉しいものだとはね。

 少しむず痒い感じだけど悪い気はしないもんだね。

 ニヤニヤが止まらない。私は誤魔化すように話を逸らす。


「無くならないからそんな急いで食べるんじゃないよ」


「魔女さんは食べないの?」


「私は後で食べるからいいのさ」


 さっきまでお腹は空いていたが今は食べている少女を見ていたいという気持ちが上回ってしまった。

 しかしはてさて卵は調合用であった最後のものだったし他になにか食べるものあったかな。

 あとで適当なものを探しておかないといけないかな。


「……ふーん」


「さ、食べたらお風呂入って寝るんだよ」


「はーい」


 その日は色々あった事もあり疲れた。

 軽く風呂に入りその日は寝ることにした。

 部屋が余っていたことだしそこに寝てもらうことにしよう。

 部屋に案内しこれからはここで寝るんだよということを説明し私も寝床につく。

 しかし横になっても中々眠れない。無意識にだが緊張しているのだろう。

 横になって目を閉じているとふと何か音が聞こえてきた。

 違和感を感じ音の先を追ってみると少女の部屋から聞こえて来るものだった。

 一体何なのだろうか。

 気づかれないように近づいてみると啜り泣いている声が聞こえた。


「……お母さん……お父さん……なんでルチナを置いって……ったの……っ……」

 

 口数も少なく元気がないようだったがあれが普通ではなかったようだ。

 よく考えれば年端もいかない少女が親に捨てられたのだ、悲しくないわけがないだろう。

 だが私には関係ないことだ…関係ないことなのだ。

 暫くすると泣き声が聞こえなくなった。おそらく泣き疲れて眠ってしまったのだろう。

 思うところがないわけではないが私にはどうする事もできない。明日も早い事だし私も寝ることにしよう。

 そう自分に言い聞かせベッドまで戻るのであった。


 次の日に朝目を覚ますと少女の顔が飛び込んできた。

 あぁ、そうか。昨日は心配になってしまってベッドの横で少し様子を見ていたのだがそのまま寝てしまっていたようだ。

 少し顔を見たらすぐに部屋に戻るはずだったのに。


 「……魔女さんどうしてここで寝ているの?」


 まずいな……なんと答えたら良いものか。

 子どもだし適当なことを言ったら誤魔化せるだろうか。

 

「実は昨日私の部屋に虫が出てね。この部屋で虫がいなくなるまで時間を潰していたら寝てしまっていたのさ。」


「……どこの部屋でもカサカサ虫の音してたけど」


「っ……!!そんな事より朝ご飯食べるよ。着替えたら早く下に降りてくるんだよ」

 

 思ったより鋭い子のようだ。

 危なかった。とりあえず今ので誤魔化せた……はず……。

 さてそれでは朝ごはんでも作るといようかね。

 昨日食べものを探していたら大豆が出てきた。

 かなり前に買ってそのまま忘れていたのだろう。芽が生えてるものもある。

 とりあえず煮込んだらどうにか食べられるだろう。多分。

 朝ご飯を作っていると少女が降りてきた。


「もうすぐ出来るから顔を洗って待っておいてね」


「……それ……何?」


「これかい?これは大豆のスープだよ」


「……」


 少女は何か言いたげな顔であったが何も言わずに顔を洗いに行った。

 朝ご飯も食べ今日はどうしようかと考えたところで昨日のことがふと頭をよぎる。


「今日は天気のいいようだし私のよく行く場所にでも行こうか」

 

 なんだって!?

 口に出した後に自分で驚いた。そんなことを言うつもりは無かったのに。

 自分でも思った以上に昨日のことについて気になっていたということなのか。


「……うん」


 少女は小さくコクンと頷いた。

 折角いくのならばしっかりと用意をしていくとしようか。

 だが困ったな。食べ物がない。

 何かのときのために作ってある保存庫に食べものをとりにいこうかね。

 そそくさと食べものをとりにいってくる。

 バスケットにパンとチーズ、そして水をいれてから出かける事にした。

 少し歩くと視界は開け目的の場所へとたどり着いた。


「……ここは?」


 日差しがよく当たり風が心地よく吹いている原っぱだ。

 ここは結界を張っているために人や獣が寄りつくことはない。

 木の実も成っていて家からもそう遠くない。お気に入りの場所だ。


「ここかい?ここはね私が昼寝をしたいや嫌なことがあったときに来る秘密の場所さ」


「君も何かあった時はここに来るといい」


「……うん」

 

 どうも元気がないようだ。はてさて人間とはよくわからないものだ。

 私にどうこう出来るわけでもないしのんびりとしたら過去のことなんてすぐに忘れるだろう。


「今日は折角来たことだしゆっくりしていこうか」


 そう言い手を離すと、突然少女の顔が曇り顔から大粒の涙が溢れてきた。


「ど…どうしたんだい!?何か私気になる事をいってしまったかい?」


「ごめんなさい……ごめんなさい。何でもないです」


 突然泣かれるとどうしたらいいかわからなくなる。

 人間はこんなときにどんな言葉をかけるにだろうか。


「……何でもないってことは無いだろ。……実は昨日も聞こえたんだ。無理をすることは無いんだよ。」


 少女は相変わらず泣いていたが少し様子が変わった……ように思えた。

 少女が落ち着くのを待ってから話を聞いた。最初に森に連れていかれる前から置いていかれる予感がしていたこと、ずっと寂しい思いをしていたことを。

 日も傾いてきたので少女を背負って家に帰ることにした。

 家に帰りつくと少女は泣き疲れたのか夜食も食べずに寝てしまった。

 起こしてしまっては悪いと思い一人で簡単に夜食をすませた。

 少女が途中で起きても大丈夫なように作り置きをしてから床についた。


 それから数日経った日の朝

「おはよう!」


「あぁ、おはよう」


 少女はすっかり元気になっていた。

 暗くいられるよりかは元気なほうが色々とやりやすいから便利ではある。

 いや元気になりすぎではあるが……


「今日は掃除をします!」


「いきなり何をいってるんだい」


 突然の宣言にスプーンを床に落としそうになる。


「前から思っていたんだけど家を綺麗に掃除した方がいいと思うの」


「別に私は気にならないけど」


 正直なところ面倒だという気持ちが大きい。

 掃除はろくにせず年に数えるくらいだろう。

 そのせいなのか埃が目に見えるくらいには汚れている。


「ルチナが気になるからダメなの!ちゃんと手伝ってよね」


「全く……めんどくさいね」


 今まで静かにしていたのが嘘にように元気だ。それにしてもまさか掃除について言われるなんて……面倒なのは嫌いなんだ。

 しぶしぶ掃除を始めるために色々と準備をする。

 さてさて掃除道具はどこにやったかな。

 掃除道具も探しだしようやく掃除を始める。


「ホウキは丸く掃いたらダメよ、端までちゃんと掃いて」


「……そんなにしっかりやらなくても適当でいいじゃないか」


 ダメ出しを散々言われながらも掃除をする。部屋はホコリが舞っていて視界が悪い。

 こんなにも汚れていたのか…普段はあまり掃除なんてする事なかったからここまで汚れているなんて思いもしなかった。

 くしゃみをしながら掃除を進めていく。


「こんなもんで良いかしらね、じゃあお昼にしましょう」


 とりあえずひと段落がつき時間もお昼頃だということで何か食べることにした。

 ここまで動くことはないからここまでお腹が空いたのは久々だ。早く何か食べたい。


「こんな状態のキッチンで料理してたの!?信じられない」


 キッチンを見せた第一声に言われた言葉が『汚い』だった。

 ろくに片付けをしておらずカビが生えた状態のキッチンを見て呆れた顔をされる。


「調味料もこれしかないの!?しょうがないわね」


「どうしてここまで言われなきゃ……」


 私は人々が忌み嫌い恐れられている魔女なのだが。今は一人の少女に頭の上がらない状態である。

 この前まではあんなに無口だったのにこの元気さは一体なんなのだろう。

 そんなことを思いながらキッチンも簡単に掃除する。

 それからようやく料理にとりかかる。


「早く卵とって、あとお砂糖」


「はいはい仰せのままに」


 半分不貞腐れつつも少女が料理をする手伝いを行う。

 少女は手際よく料理を作る。小さいわりには慣れているなと感心する。

 少女の作った料理は見た目もよくいい匂いがしていた。

 まぁ見た目は悪くないかも知れないが問題は味だ。美味しくなかったら嫌味の一つや二つでも行ってやるとしようか。


「⁉︎おいしい」


 ついその言葉がでてしまっていた。


「でしょ~作り方変えたら美味しくなるんだから」


「…少し考えを改めたほうがいいかもしれないね」


 これは予期せぬ収穫だ。

 調合の道具採りにでもと思って連れてきたが他に雑用をやってもらうのもいいかもしれない。


「何が?」


「いいや、こっちの話さ」

 

「えへへ」


「もう、何笑ってんだい。さぁ、早く掃除の続きしますか」


「うん!」


 昼ご飯も食べ終わり掃除を再開する。

 まだ掃除が続くのかと少し気怠さがある。

 ただ何だろうか。一人でするよりも綺麗に掃除できたのかわからないがいつも掃除をするよりも清々しさがあるように思える。


「今まで特に何も思わなかったけど綺麗にするってのは悪くないもんだね」


「ね!だから言ったでしょ~」


 なんて事はない雑談をしながら掃除を進める。

 人と会話をしながらする作業はこんなにも楽しかったのだなと思いつつ部屋を綺麗にする。


「掃除も終わったことだし夜ご飯を食べるとしようか」


 よく行く部屋の掃除が終わり外も日が陰りだしだしたのでその日の掃除には区切りをつけ晩ご飯の準備をする。

 晩ご飯も二人で話ながら作った。

 ルチナが一緒に入りたいというのでお風呂にも一緒に入ることにした。

 この辺りはまだまだ子どもだなと体を洗いながら思う。

 その夜から二人で寝ることが習慣となった。


 あれは天気のいい初夏のころだった。

 至る所で虫が泣いていて今日は暑いなと考えてるときだった。


「早く外に行こっ!!」


 ルチナが元気な子犬みたいにはしゃいでいる。

 今日はいつにも増して元気だ。

 無理もない、今日は久々の二人でのピクニックだ。私も内心少しだけウキウキしている。


「急がなくったっていいだろう」


 大人な私は内心を悟られないようにそう言う。


「だってこんなに天気がいいんだもの、早く行かないと勿体無いわ」


「最初の頃はあんなに大人しかったのに」


「そんな頃忘れたわ、早く早く」


「はいはい、じゃあ行こうかね」


 手を引かれながら私はルチナと草原へピクニックにいく。

 行ったとして特別何かするわけでもない。のんびり話をし昼寝をしお互いに好きなことをする。いつもそんな感じだ。


「何を作ってるんだい?」


 しゃがみ込んで何かしていたので気になって声をかけた。


「これ?花冠よ、つけてあげる」


「ハハッ、何だか少し恥ずかしいな」


 女の子らしいことなんて最近は全くしてこなかった。恥ずかしい気持ちもあったが比べ物にならないくらい嬉しかった。


「そんな事ないわ、凄い可愛いわよ」


「ふふっ、お世辞でもそういってくれると嬉しいもんだね」


 ルチナとそんな会話をしながらゆっくりと過ごすのは楽しかった。いつまでも続けばいいのに……





「ちょっとこの店に寄ってもいいかい?」


「うん、いいよ」


 今日はルチナと町に出かけていた。

 いつもの買い出しではあるのだが今日は別に理由があった。


「ふむ、これとかだといいかな」


「何選んでるの?」


 ここは……まぁ正直に答えるべきか


「実はルチナの誕生日に髪留めでも買おうかと思ってね」


 その気持ちもあるのだが実はもう一つ理由がある。

 ルチナも大きくなり行動範囲が増えたために危ない目にあわないか心配になってきたのだ。

 そのために何かあったときのために魔法を込めておける装飾品を探していたのだが…


「えー!、それならルチナ魔女さんの髪留め選ぶー」


「それなら私のはルチナに選んでるもらおうかね」


 それから髪留めを選んでいたのだがルチナがお揃いがいいと言い出した。お揃いは少し恥ずかしいから別々のにしないかと言ったがダメらしい。

 結局のところ押し切られ二人で何がいいか話あって決めるのだった。


「えへへー魔女さんとお揃いだー」


「お揃いとは言ったけど別にイニシャルまで彫ってもらわなくても……しかもお互い逆のだなんて」


 ルチナがお互いのイニシャルを彫っているほうがいいというので、私の髪留めにはルチナのRをルチナの髪留めにはニーナのNを刻んでもらったのだ。


「だってこれ持ってたらいつだって魔女さんのことを思い出せるもん」


「……あまりそういうこと外でいうんじゃないよ」


「はーい」


「ところで魔女さんのイニシャルってNだけどお名前なんていうの?」


「それは秘密さ。魔女は名前を明かさないものだっていったじゃないか」


「魔女さんのケチ~。絶対いつか聞いてやるんだからね」


「頑張ってみるんだね」


 嬉しそうに髪留めをつけてる姿を微笑ましく思いながら二人で家に帰ることにした。




 ルチナも育ち見た目は私と変わらないくらい大きく育った。


「魔女さん!!魔女さんってばっ」


「聞いてるよ、いいんじゃないかな」


 最近ルチナはオシャレに目覚め始めた。

 肌は綺麗にしなきゃダメだとかもっと可愛い服がいいだとか…


「いつもそんな事言って。じゃあ何って言ったか答えてよ」


「…今日は良い天気だね」


「ほらー、可愛い服がないから買いに行きたいけどいいかって話してたでしょ!」


「あぁそうだったね。でも……服か……今あるやつじゃダメなのかい?」


「ダメっ!!だって可愛いのないんだもん」


「服なんて着れれば別になんでもいいじゃないか…」


「そんなんだからニー姉の服はダサいんだよ」


 容赦のない言葉をいってくる。服なんて着れれば何でもいいのだが。


「決めました。今日はニー姉にも可愛くなってもらいます。いいえとは言わせません。」


「いやっ私は別に……」


「はーい、じゃあ早く用意して。町まで時間かかるからすぐ出るよ」


 結局押し切られてしまい町へ行く準備をさせられる。

 ルチナはルンルン気分で楽しそうだ。


「はぁ~~やっと着いた。そしたら早速服を見に行くよ」


「少し休んでからでもいいんじゃないかい?」


「ダメよ、服見た後は香水屋いって可愛いお店でご飯食べるんだから」


 なんだって…今日中に回りきれるのだろうか。いやはや簡単に折れなければよかったのだろうか。

 いざというときは町で宿でもとるとしようか。


「そんな急がなくたって間に合……」


「あーー!あの店の服可愛い!早くいこっ」


 ルチナに手を引かれつつ服屋に向かうだった。


「今日は楽しかったー」


 太陽も傾き始めた頃やっと買い物が一段落した……一段落したよね?


「楽しかったけど…これは買いすぎなんじゃないかい」


「そんなことないよ」


「早く帰って着てみようよ」


 早く帰って今日買ったものを色々試したいようだ。

 私も買いたいものは買ったことだし帰るとしようか。

 家に帰り着いた頃には太陽は落ちていた。

 ルチナはそれでも元気いっぱいだ。一体どこからこんなパワーが出ているのだろう。

 

「ほらっ座って座って」


「私は別に……」


 早速化粧台のほうへ連れていかれる。


「そんなこと言わないの。ニー姉可愛いんだからオシャレしなきゃ勿体ないじゃない」


「ほらお肌はこれをつかって…髪も櫛でちゃんととかしたら…ほらっ」


 ルチナは手早く化粧をしてくれる。

 一体どこで学んだというんだろう。

 そんなことを思っているとルチナが声をかけてきた。


「どうかなー?」


「……確かに悪くはないかもね」


「えへへ、でしょー」


「服とかもこうやって花をつけたりすると華やかになっていいんだよ。ニー姉はいつも暗い服ばかり着てるんだからっ」


「そうだねぇ、少しは可愛くしてもいいかもね」


 オシャレするのも意外に楽しいもにだね。ルチナが来るまでそんなこと気にしたことなかったね。

 これからは少しオシャレでもしてみようかね。


「他にもこんな香水をつけたり唇にこの赤いリップを塗ったりしたらもっと可愛くなるんだよ!!」


「…今日町に行って楽しかったかい?」


「うんっ!すっごく楽しかった」


「…そうかい…それはよかった」


「それでね、それでね」


「うん、うん」


「次行くときはお花屋さんにもいきたいわ」


「そうだね、そうしようか」


 最初は少し気乗りしなかったけどよかった。

 今日の晩ご飯は何を一緒に作ろうか、そんなことを考えながら鏡を見るのだった。


 今日はルチナの誕生日だ。もう出会ってから13回目になる。

 ルチナもいい大人。今日は大事な話をしなければならない。


「ルチナ、誕生日おめでとう。今日で18才だわね」


「魔女さんありがとう!」


 喜んでいるルチナの顔を見ると辛くなるが話さなければならない。


「…あなたに大事な話があるわ」


「もうあの森の入り口で出会ってから◯◯年かしら早いものね」


 私は少しずつ話し始めた。ルチナがショックを受けないように昔話をしながら。

 ルチナも一人で生きていける年になったということ、町に行った時の伝手はあるからそこで働くといいということ、魔女と人間は生きている時間がちがうということ。

 話しているうちに笑顔だったルチナの顔が段々と曇っていくのが目に見えた。


「嫌だよルチナ、ニー姉と離れたくない」


「ワガママ言わないでおくれ」


 これは困った。ここまで拒否をされるとは。

 私もルチナと別れるのは辛いがルチナは私以上に別れるのが嫌なようだ。


「嫌だ嫌だ。まー姉のいじわる!バカっ」


 ルチナが突然家を飛び出した。


「ルチナ!!待ってルチナ!!」


 すぐに追いかけたがルチナの姿は木々に隠れてすぐに見えなくなってしまう。


 ルチナが行きそうな場所をしらみ潰しに探した。

 どこを探しても見つからない…あとは薬草があるあの泉か

 泉につくと人影がみえた。


「ここに居たんだね」


「っ……ニー姉。なんでここにいるって……」


本当はただ走り回っただけなのだが…何といえばいいだろうか。


「そりゃわかるよ。何たって悪い魔女だからね」


「ぷっ、その言葉久しぶりにきいたよ」


「ふふっ、やっと笑ってくれたね」


 それからルチナが落ち着くのを待ってから話を聞いた。

 私と離れるなんて考えたくなかったこと、いつか離れなくてはならないのはわかっていたけどいざその時になったら感情が溢れ出してしまったこと、昔を思い出して実は捨てられるんじゃないかということを。


「だっていきなりそんなこと言われたって……ニー姉と別れるなんて考えたことなかったし」


「そうだよね、ただ私だってルチナの事が嫌いでこんなことを言ってるわけじゃないんだよ」


「ただ私は魔女なんだ。人間であるルチナとは生きている時間が違う。これ以上一緒にいるとルチナによくないんだ。分かってくれとは言わない、けど解ってほしい」


「……ずるいよニー姉は。いつもそんな屁理屈をいってルチナのいうことを聞いてくれないもん」


「ごめんよ、ルチナ。」


 ルチナはまだ納得したという顔ではないけど少しだけ表情が柔らかくなっていた。

 それから何か決断したような顔になりこう言った。


「……はいっ!わかりました。ニー姉がそこまで言うならルチナはもう言いません。」


「代わりに今日はルチナの言うことを全部聞いてもらいます。」


「いや……流石にそれは……」


「いいですね!!!!」


 結局にところ押し負けてしまった。


「……はい」


「よしっ、それじゃあ帰ってからまず一緒にお風呂にはいります」


「そんなことかい。全くまだまだ子どもだね」


 久しぶりに一緒に入った。そういえば大きくなってからは一緒にお風呂に入る機会も減っていたっけ。

 この日は何をしてもルチナは私にべったりだった。


「魔女さん~一緒に寝る~」


「はいはいこれじゃあ最初の頃に戻ったみたいだね」


 一人用のベッドに二人で寄り添いながら眠る。

 しばらくしてからルチナが寝たのか確認をする。


「ルチナ……寝たかい?」


「……」


 ルチナが寝たのを確認すると私はルチナに魔法をかける。

 ルチナが別れてから私を思い出さないようにする魔法だ。

 ルチナが悲しまないように……


「ごめんね…ルチナ………ありがとう」

 私の名前はね……」




 ルチナと別れて1年がたった。


「暇だ」


 ルチナと別れてからというもの突然することがなくなった。

 以前はすることがあったような気もしたが何故だろうか。

 部屋もこんなに広かったっけ。

 昔と比べ綺麗になった部屋に一人思い耽る。

 

 それから1年たった


「……暇だ」


 ルチナがいなくなってからというものの生活にメリハリが無くなった気がする。

 今は魔法の材料がなくなれば採りにいく、何か必要なものがあれば町にいくといった感じだ。

 今日は新しい服でも買いに行こうかね。


「よくルチナに掃除の仕方がダメだって言われたな」


「こんなにも一人は孤独だったんだな」


 少し寂しくなってきたかな。


 別れてから十年後くらい経ったかな。


「……ルチナと別れてからもう十年くらい経つのか」


「……暇だな」


「久々に町にでも行ってみようかね」


 することも無いし町に何か買い物でもいこうかね。

 身支度をし町に出かけることにした。


「あれは……服屋か。」


 ブラリとしているとある服屋が目に入った。

 新しくできたのだろうか。初めて見る店だ。


「折角町に来たんだから服でも買って行こうかね」


 可愛い服がないかなと思い店に入る。


「いらっしゃいませー」


「ふぅん、結構色々あるじゃないか」


「これを試着してもようかね。店の人に聞いてみようかね」


「あのー、これ……」


 その時心臓が飛び出るような感覚に襲われた。


「はい?呼びました?」


 ルチナだ。見間違えるはずもない。

 別れたときからかなり大人びているが見間違えようもない。


「いいやいいや、何でもないです」


 私は反射的に答えていた。

 これ以上ルチナと関わると折角別れた意味がなくなってしまう。


「そうですか?何かあったらお声かけくださいね」


「ははは、ありがとうございます」


 そう答えるとそそくさと店からでるのだった。


「今のお客さん何か初めてあった気がしないんだけど何でだろう」


「あれっあのお客さん何か落としていったわ」


「この髪留めって……」


 危ないところだった。今まで会うことがなかったから大丈夫かと思っていたのだが。

 そういえば服に関わることで働きたいだなんて言ってったっけ。


「でもまさかあそこの服屋で働いていたなんて…」


「でも元気そうでよかった……一目見れただけで……十分だ」


 一目見れただけでも十分だ。元気でやってそうでよかった。

 一言声だけでも…いやこれからこの近くには寄らないほうがいいのかもしれないな。

 あれっ、いつもしていたはずの髪留めが見つからない。参ったな、どこかで落としてしまったのか…


「待ってください~~」


「⁉︎」


「はぁはぁ…あのっ…これっ」


 あの店に髪留めを落としていたとは。私としたことが…焦っていたから何かに引っ掛けて落としてしまったのかのだろうか。


「あ……ありがとう」


 お礼を言い足早に立ち去ろうとする。


「あの…おかしな事を聞いてるとは思うのですが、その髪留めわたしが持っている髪留めと似てるんですが…」


 そう言われた瞬間心臓の鼓動が跳ね上がる。


「偶然じゃないかな」


「こんなの売ってるところ見たことないです。それにこのイニシャル、わたしのイニシャルと同じです」


「……偶然じゃないかな」


「そんな事ないです。実をいうと何か初めてあった気がしないんです。どこかであったことないですか?」


「私はルチナとは初対面さ」


「どうして名前をしってるんですか?」


 あまりにしつこいからつい口が滑ってしまった。

 まずい、どうにかして誤魔化さなければ。


「そ、それはだね。君が他の人に名前を呼ばれるのを聞いたからさ」


「わたし他の人とは話をしてませんでしたけど?」


 ……このままでは埒があかないか。どうしたものか。


「ではせめて、お名前だけでも教えてくれませんか?」


「お名前を聞いたらすぐに帰りますから!!」


 ……この押しの強さ、変わってないな。

 そう言えば名前を面と向かって教えた事はなかったかな。

 これが本当の別れにもなるだろう。最後に私の名前くらい教えても大丈夫だろう。


「……ニーナ……ニーナ・クラフトだ」


「ニーナクラフト……」


 名前を聞いた途端ルチナの瞳から涙がこぼれ始めた。


「えっ」


 私も驚いたがルチナも驚いているようだった。

 

「ど、どうしたんだい?」


「わからない、わからないの。でも名前を聞いたら、何で…何で涙が出てくるの」


 ルチナには別れる時に忘却魔法をかけたはず。覚えているはずがない。

 それなのに……そのはずなのに……


「ルチナ……」


 そのとき私の判断が間違っていたのではないかという思いにかられた。

 そう思い始めると気持ちが抑えられなくなってしまった。

 気づけば私も一緒に涙を流してた。


「ごめん、ごめんね」


 本当はこんなことするべきではなかったんだ。

 そのことに気づくと同時にルチナにかけていた魔法を解いたのだった。


「魔女さん?魔女さん!!」


「ルチナ!ルチナ!」


 そういうとお互いに抱き合って大声で泣いた。人がいることも気にせずに。

 お互い泣ききって少し落ち着いてから話をした。


 よく見ると最後に会った時と比べてかなり大人びていた


「大きくなったんだねルチナ」


「魔女さんは全然かわらないね」


 魔女は長い時を生きるので成長が遅い。そのせいかルチナからみると出会った時から変わってないように見えるのだろう。


「人間たちの成長が早すぎるんだよ」


「ふふっ」


「ふふふ」


「あのね魔女さん、わたしね家族ができたんだよ」


「わたしが今こうしていられるのは魔女さんのお陰なんだよ」


「もうすぐしたらお仕事がおわるの。終わったら一緒に帰りましょう。家族に紹介したいわ」


Fin


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ラインを見て来ました。 読了して暖かい気持ちになりました。 これは作者の人柄によるものかな。 [気になる点] これは短篇というより中篇かなと感じました。 地の文で、句読点を入れたほうが読…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ