表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

2-4 悲劇の島、エルディ


人類は勘違いをしています。


確かに好奇心旺盛ですが私たち、学習能力を有しています。逃げますよ、生き残るために。






「人だ、人が来た!」


仲間の一羽が叫んだ。


「タイヘンだ。」


トタトタ、ピョン。


「急げ。」


トタトタ、ピョン。



私たちは泳ぎの名手、海に飛び込めば逃げられる。けれど、抱卵中は動けない。身を低くして隠れるのが精一杯。



「ヘンス、あなたも早く。」


「でも。」


「お願い、逃げて。」


カーラが卵を抱いたまま、祈るようにヘンスに言った。カーラの他にも、抱卵中の仲間が。




「カーラ!」


カールがトタトタ、急いで駆けてくる。その直ぐ後ろには、エーネの姿が。


「来るんだ、ヘンス。逃げよう。」


「お母さん、早くぅ!」


マリーエが海から呼んでいる。どうしよう、逃げなきゃ。でも・・・・・・。


「エーネ、ヘンス。イェンスを頼む。」


懇願するカール。カーラが祈るように、私たちを見つめる。



マリーエもイェンスも、まだ幼い。両親を失えば、この広い海で。守らなきゃ。私たちは見合い、頷く。



「また会おう。」


「イェンスの事は、任せて。」



そう言って、泣きながら飛び込んだ。



私はマリーエを、エーネはイェンスを守りながら逃げて、逃げて逃げまくった。心の底から願ったわ。残してきた二羽、カールとカーンの無事を。






夜。人が居なくなったのを確かめてから、島に戻ったの。


カールもカーンも、抱卵していた他の仲間たちも見つけられなかった。残っていたのは割れた卵や、踏みつけられた殻だけ。



何も言わず、ソッと海へ。このまま干乾びるより、海で眠る方が良いと思ったの。だから・・・・・・。






「飛び込め、また来た。」


エーネが叫ぶ。



私たちはトタトタ急いで、海に飛び込んだ。その直ぐ後、大きな音が響いたわ。何度も、何度も。



ズドン。ズドン。ズドン。ズドン。ズドン。ズドン。




あの日、人類は気づいた。私たちが近寄って来ないと。


棍棒こんぼうが使えないなら、銃を使えば良いと思ったのね。海に逃げられては、分が悪いもの。



滅んだと思っていた鳥が数十羽も残っている。


『コイツら、幾らでも増えるカモな。値崩れする前に狩って狩って、高値で売りつけよう』とでも、考えた?




弾丸の速度が早ければ早いほど、水からの抵抗力が大きくなる。


幸か不幸か、人類が選んだのはライフル銃。水深30センチ程度で止まるから、1メートルも潜れば安心。



モチロンそんな事、知らない。だから撃ちまくった。



海に向かって撃って撃って、多くの仲間が被弾。光の方へ導かれるように、ゆっくり浮かんで波に揺られる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ