2-3 私たちは物じゃない
辛うじて捕獲の手から守られていたのですが1830年、海底火山の噴火に伴う地震により、岩礁は海中に沈みます。
この災害により、絶滅したと思われました。けれど発見されます。
1835年、アイスランド南西部。レイキャネス半島の海岸から約20㎞離れたエルディに、オオウミガラスの生き残りが居ると知られてしまった。
数十羽が奇跡的に生き残り、暮らしていると。
最後の繁殖地が天災により失われた時点で、既にオオウミガラスは絶滅寸前。本来なら全力で保護して、『個体数を増やしましょう』となるハズ。
にも拘らず、高値で売買されました。つまり保護より、捕獲が最優先ってコト。
・・・・・・ハァ。
慌てたのは、博物館関係者。資産家や収集家にとっても、喉から手が出るほど欲しいアイテムに。
価格はグングン上昇。
私たちは次から次に、バンバン狩られます。標本作成のため。一攫千金を狙う、人類によって。
私たちは物じゃない。生きています、懸命に生きているんです。なのに、どうして。
「寂しくなったね。」
曇天を見つめながら、カールがポツリと呟いた。
「そうね。」
夫を見つめ、カーンが寂しそうに微笑む。
「代わるわ。イェンスをお願い。」
「分かった。」
抱卵していたカールがソッと腰を上げ、トタトタ。カーンがトタトタと近づき、ソッと腰を下ろす。
「アッ、動いた。」
「こんにちは、カーン。ドッチかしらね。」
「こんにちは、ヘンス。私、二羽目は娘が良いわ。」
エーネとカール、ヘンスとカーンは幼馴染。それぞれの番を紹介した時、驚いたわ。幼馴染の番が、番の幼馴染だったのだから。
子が生まれたのも同じ年。
エーネとヘンスの娘マリーエと、私たちの倅イェンスも仲良し。
大人しいイェンスは、チョッピリ活発なマリーエにゾッコン。いつも一緒に居るんだもの、ウフフ。
「あら、あの子ったら。」
大きな魚を捕ったものの、ビチビチ大暴れ。目を白黒させているのだろう。エーネがマリーエを応援している。
「アッ、逃げられた。」
皆で仲良く、日向ぼっこ。海上をプカプカするイェンスとマリーエを微笑みながら、母親たちは島から。父親たちは側で、魚を食べながら見守っている。
「親子って姿ダケでなく、食べ方も似るのね。」
「フフッ、本当。そっくり。」
マリーエに『妹が欲しい』と言われた時、焦ったわ。お兄サンになるイェンスを見て、羨ましくなったのね。これ許りは、どうしようも。
仲の良さでは、ウチも負けて無いんだけど。
「あの子たち、きっと番になるわ。」
「そうね、楽しみ。」
それぞれの夫と子を見守りながら、クスクス笑っていたの。楽しかったな。
数は減ったケド、ワイワイ楽しく暮らしていた。穏やかに年を重ねて生きると、そう思っていたの。
思い出したダケで涙が、震えが止まらない。なぜ人は笑いながら、命を奪えるのですか。