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雑踏は死出の旅

作者: 影津

 歩く歩く歩く。雑音、騒音、クラクション。


 闊歩されたスクランブル交差点の白線に細切れにされる人々。


 おいらはそれを眼下に見下ろす。渡りガラスは北風に身震いする。この中の誰かがいつどこで交通事故で死ぬのか分からない。男、女、じいちゃん、ばあちゃん、サラリーマン、OL、小学生の男の子、高校生の女の子。


 おいらは、今しがた踏み潰されてひしゃげている、妻を見下ろす。


 餌が見つかったので呼びにきたら、あれだった。今までだって、足を車にひかれたカラスを見たことがある。おいらも子供に遊び半分で追いかけられたり蹴られそうになったこともある。カラスは邪魔者、ゴミを漁って何が悪い。まだ、食えるだろうに。


 そんなこんなで、妻の見る影もない姿に心を痛めることもないはずだった。


 いつでも死とは隣り合わせ。おいらは死に囲まれている。


 その日を生きるために生ゴミ漁り。明日に備えて、飯運び。


 それのどこが間違いだと言うのか。おいらは、妻の亡骸の上空を飛び回る。死出の旅へ出た妻へ羽を一枚落とす。人間さまは、死骸に目をくれない。どうぞいってらっしゃいませ。通勤通学、交通事故。どうぞどうぞ、お気をつけて。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 殺伐とした雰囲気ですが、視点を変えたらこんなものかもしれないですね。主役のニヒルな口調がいい味を出しているなと思いました。
[一言] そりゃそうですよね…人間からしてはカラスは迷惑だけどカラスからしたら必死ですからね…。 動物それぞれの都合で必死に生きている。都合が通るのは強者か逃げ切った動物だけ。 なのに人間だけ都合よく…
[一言] 短い文章のなかにみじめさや空しさや悲しさや呪いたさみたいな感情がたっぷりと込められていて面白かったです
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