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~異世界超冒険ライフ~

 一話 悲劇の日





2020年 8月21日 金曜日

 その日はひどく暑く、各地で最高気温を最も更新した日だった。

そんな日に私は8時頃には彼氏と旅行のために待ち合わせるため家を出た。

外を歩くサラリーマンやOLはさっきまで着ていたであろう上着を持っていた。汗が少し滲んだシャツで営業の話をしているらしい。他にも色々な人を見かけたがどの人を見ても「暑そう」というコメントが飛び出しそうだった。



歩いて十分ほどの位置にハチ公像がある。

私の都合でここに待ち合わせ場所にしたのだか、

待ち合わせの時刻になっても、待ち合わせの相手は中々現れなかった。

 待ち時間の間にさまざまな人を見たが短パンや半袖の服装した人ばかりだった。

当然、この真夏日に長袖や長ズボンをはく奴は居ないと信じたいが、

私の彼氏はそんな馬鹿なことをしでかしかねないのだ。初めて会った時もそうだった。

何故か真冬に半袖の変な言葉の入ったTシャツを着ていた。

(馬鹿なんだろうな…)と去ろうとすると

「すいません、株式会社シライって何処ですか?」と聞かれ、偶然にもその会社の社員だった私は案内する事になった。

彼は名の売れないモデルだったらしく、会社のイメージポスターの打ち合わせに来たらしいが、この格好では非常に不味い為、近くのブティックの高いスーツ一式を買ってきて着せた。

流石モデル!! 着せてみると、かなり落ち着いて見える。スーツはプレゼントとして差し上げた。

その後2週間過ぎた後位に、お礼の電話が掛かってきたが、そこまで大したことはしていないのでよく判らなかった。

何処から仕入れたのか知らないが彼は私にちょくちょく電話を掛けるようになった。

そこからの彼の猛アピールが始まった。彼が私の何処に惚れたかは知らないが、「好きです」と言われて断ることでもなかったので、そのまま流されていたら、いつの間にか私の方から付き合うことを提案していた。つまりは私も彼に惚れたのだ。


 懐かしい思い出に浸っていると、25分と37秒程遅れて彼氏は来た。

「遅い!!何で女の私の方が準備が早く終わっているのよ!!」

半ギレで言ってやった。一瞬ビクッとしたが何故か嬉しそうでもあった。

さすがに長袖、長ズボンは着ていなかったが少し子供っぽい服装だった。相変わらず服装のセンスが絶望的なことを確認すると、

彼は遅れて来たのにも関わらず、ニヤニヤしたままだ。

(その面ぶっ飛ばしてやろうか!!)と心の中で言いつつ、飛行機に乗るため電車に乗った。

電車中は金曜日の平日にも関わらず大勢の人で賑わっていた。

それも当然だ。なぜなら、キッチリ2週間前は、オリンピックの閉会式だったのだから。

日本勢は大量メダルを取得し、歴代メダル取得数が堂々の一位だったのだから。

いまだにその熱は冷め切っていないのだ。



渋谷から羽田に移動するともうすでに

時計は12時過ぎを指していた。

この混雑の中時間通りに進んでいるのはパーキングを予約制にしたからだろうか。

空港に着いても人の多さは変わらなかった。

さっさと飛行機の搭乗手続きを終えると搭乗まで待機していた。

待ち時間の間は旅行先の話をした。

「今回の旅行先はラクダが見たい。」

という雑な理由で鳥取砂丘だ。

旅行先の話をしている間も彼のニヤニヤは止まらなかった。


羽田から飛びたった飛行機は、ギラギラの太陽が照りつける雲の上辺りまできていた。

何一つ文句の無いフライトで過ごすこと一時間半。

それは突然だった。

機体が激しく揺れた。高度も下がっている。

そして機長から絶望のアナウンスが流れた

「この機体は墜落します。原因不明のトラブルです。私ができるのは家族に電話を掛けて遺言を残すことだけです。最後の瞬間はどう過ごすのかは個人にお任せ致します。」

淡々と何が起きているのかと、私はこうしますが、あなたたち乗客に最後何するのか?と機長は問いかけたのだ。

機長の冷静さには称賛を送りたいものだと思った、この短い時間に墜落する事と、機長自身は何をするかの例を挙げ、パニックで何もこの世に遺せなくならないようにしたのだ。

意外にもそんな客観的思考ができる私は、焦る彼の傍らでぼんやりと考えていた。

「沙織ちゃん、手出して。」

死ぬということを受け入れたらしい彼は私にそう言った。

言われるがまま手を出すと、薬指にそれははめられた

小さなピンク色のダイヤモンドで装飾した婚約指輪だった

私は彼の意図することを察した

「来世は一緒になろう。」

映画のワンシーンのような一言は、この場ではしっくりきた。

命の終わりを予感すると同時に私は意識を失った。....





(短くも楽しい人生だったと思う。

だが、やり残したことが多すぎた。

海賊の最後を見たかった。

世界ともっと触れたかった。

彼とずっと一緒に居たかった。)

様々な感情が交差し、消えては生まれ、増えては減り、明るくなっては闇に。

混沌がそこにはあった

魂の底から溢れる混沌があったのだ

この混沌が世界の終焉を呼ぶとは、誰も気がつかなかっただろう。.....



音が聞こえた 世界が揺れている

光が見えた



「誰だコイツ?」

長身スレンダーイケメンがこちらを見て笑っている。

私は違和感を感じた。

誰かに抱えられているのだ。

後ろを見るとかなりの美少女と言っても過言ではない女の人が心地のよい微笑を浮かべていた。

周りの風景から考えるにここは病院だ。

(しかし、私は死んだはずでは?)

あの飛行機は爆発分解したはずだ、生き残れるわけがない。

しかし、私は赤ん坊の姿でここにいる。

つまりは、これは転生なのか?

そういくと、合点がつく。

(つまりはこのイケメンが父親で、こっちの美少女が母親か?)

しかし、謎がある。病室を照らしているのは蛍光灯ではない。

魔方陣だ。つまりここは異世界ということになる。

状況を呑み込むと私はこう言いたかった。

「魔法、異世界、転生、最高!!」



こうして私は新たな生を受けたのだった。

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