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感想について思うこと

作者: 篝火

 以前、大阪文学学校に1年間通学していた。著名な作家さんが多数在籍していた事でも知られる学校で、なかなかユニークな学校として知られている。

 先生、チューターというのだけれど、チューターにも生徒にも一筋縄ではいかない個性的な人々が集い、一クラス、10人前後で、毎回生徒数名の作品を全員で合評をする。

 感想では、当然伝わっているものと思っていた事がまったく伝わってなかったり、違う印象を与えていたり。指摘されないと気づかない事も多々あった。また、同じ作品に対する他者の感想を聞くと、同じ作品でもこんなに感じ方が違ってくるんだと新鮮な発見が多かった。年齢幅は広く、老若男女を問わず、言いたい事を言う。若い人も遠慮はしない。おじさん、おばさんの古い言い回しにもツッコミがはいる。

 そうして、切磋琢磨しながら、楽しく充実した1年を過ごした。それから2年目に進んだ人はクラスの半分くらい。私自身は、人の作品を読むのが少し面倒になったので、そこで修了した。書くのはもちろんだが、感想を言うにも大変な神経を使う。毎回、自分の読解力が試されている気がする。人の感想を聞いて、初めて、そこはそういう意味だったのか! と気づくような事はざらにあった。

 

 自分の作品を俎上に載せる回は大変な緊張を強いられる。いっそ踏みつけてトドメを刺して、二度と創作などしたいと思わないほど叩きのめしてくれたらと思う日もあった。

 多分誰もが一番嫌なのは、感想らしい感想がでない事ではないかと思う。可もなく不可もなく。そんな作品の日は、とにかく合評が盛り上がらない。例えば思いっきり誰かがけなす。

「意味が全然わからない」

「気持ち悪い」

 という感想が出れば、また誰かが、

「この表現は独特で好きだ」と言う。

 そんな合評は盛り上がる。

 可もなく不可もなく……。面白いと言えば面白い。でも、あまりどこと言って取り上げるところもなければ、印象にも残らない。それってわざわざ読む価値ありますか? となる。そんな合評になったら、作者はきっとクソミソにけなされるより、落ち込んでいるに違いない。すいません。せっかくの合評にこんなつまらない作品でと、心の中で平謝りしているかも知れない。

 それでも、どんな作品にも必ず何かがあると思うから、合評までに何度も何度も作品を読む。そうして、見えてくるものもある。自意識過剰なくせに恥ずかしがり屋、でも、突然捨て身なるような無防備さ。けなされると怯えてもう一歩を踏み込めない脆いプライド。

 どんな作品も愛情を込めて生み出されていると思えば、愛おしい。

 そんな作品に沢山出会って、自由にもっと書きたいと思った。人の作品の中に自分の弱さが見える事もある。多分、ある程度から伸びない人は同じような弱点を抱えてる。それを超えることができるかどうかは自分次第。1年でそれがわかった事が大きな収穫だった。


 実際、学校に通うまでは、人に見せることもほとんどなく、感想が役に立つのかも懐疑的だった。でも、今は違う。

 大好きな作家さんがいて、感想をお送りしたら、丁寧なお礼をいただいて驚いたことがある。感想を頂く事がモチベーションに繋がり大変嬉しいと書いてあったが、本当だろうかと半信半疑で、新刊が出た時にまた感想をお送りしたら、また喜んでくださり、どんどん感想を頂きたいからと、プライベートなアドレスを教えて下さった。

 今は、ツイッターの感想に、色々な作家さんから、お礼の言葉をいただく事は珍しくない時代。好き勝手に書いただけのつぶやきに、敏感に反応し、常に読者を気にかけ、努力を怠らず、作品にも誠実な姿に頭が下がる思いがする。

 書くこと、読むこと、感じた事を表現することは面白い。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 感想を書くのって楽しいですよね! もちろん「面白かった!」の一言感想でも貰えば嬉しいものですが、もっと良いところはないかと探すうちに、作品のいろいろな魅力が見えてきます。 登場人物が個性的…
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