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「うふふふ。エレミヤ様も大変ですね」
なぜこの人が私の部屋でお茶をしているのだろう。
「王宮内に広まっている噂も原因は皇女殿下だとか」
そう言って優雅にお茶を飲むのはフィグネリア。帝国の有力貴族。
「殿下も気が立っていたのでしょう。まさかご自分が訪れるはずだった貴族の娘が、だなんて」
「そうですね。アヘンは所持しているだけでも罪に問われますわ。それなのに使用をしていたなんて。ジョーンズ子爵令嬢はこの先、どうなるのかしら」
「さぁ。そこは私の本分ではないので、何とも」
「そうですわよね。ごめんなさい」
「コーク侯爵令嬢が心配していたことだけは陛下にお伝えしておきますわ」
「ありがとうございます。それと、フィグネリアと呼んでいただけると嬉しいですわ。私、あなたと親しくなりたいですわ」
「嬉しいですわ。ここに来たばかりでまだお友達がいないので。私のこともエレミヤとお呼びください」「まぁ!私がお友達一号なんですね。嬉しいですわ」
パンと手を叩いて無邪気に喜ぶフィグネリアはまるで子供のよう。そのギャップは反則だ。私が男ならいちころね。
それにしてもアヘン中毒者がジョーンズ子爵令嬢だなんてよく知っていたわね。
私とリーゼロッテのスケジュールを知ることはほぼ不可能。厳重に管理されている。暗殺の危険があるからだ。
ジョーンズ子爵令嬢については私にもリーゼロッテにも言うなとノワール直々に言われている。まさかリーゼロッテがバラしたなんてことないわよね。
後で裏をとろう。
キスリングもシュヴァリエも顔が良いのでちょっと頑張ってもらったら大したことない内容なら侍女たちが世間話のように話してくれる。まぁ、ここに雇われているのはある程度質のいい使用人なので話してくれる内容は差しさわりのないものばかりだけど、無いよりはいいだろう。一つの目安になる。
「フィグネリア様は皇女殿下と仲がよろしいんですか?」
「いいえ。何度か会ってご挨拶しただけですわ。実は私、陛下の婚約者候補だったことがありますの」
急に投下された爆弾に思わず口の中に含んだ紅茶を噴き出しそうになった。
もちろん、王女のプライドが許さないので根性で飲み込んだけど。おかげで少しむせた。
「そのせいで、皇女殿下に嫌われてしまったようで」
「なぜ?」
私の問いにフィグネリアは言いづらそうに苦笑する。
「エレミヤ様も気づいてらっしゃるでしょう。皇女殿下が陛下に一方ならぬ思いを抱いていることに」
「・・・・・」
それは薄々勘づいてはいた。リーゼロッテに自覚があるかは分からないけど。
さて。
私はにっこりと微笑むフィグネリアを見る。
ここでこの話を持ち出すメリットは何だろう。私とノワールの仲を引き裂く為。なぜ?私とノワールが離縁すれば自分が皇妃の座につく可能性があるから。
リーゼロッテのノワールに対する想いを口にしたのは?私とリーゼロッテのつぶし合いを期待している?なぜ?フィグネリアにとってリーゼロッテは邪魔な存在?それともただ嫌いなだけ?
分からない。憶測は幾らでもでできる。けれど、確たる証拠がないのであくまでも私の妄想にすぎない。
「女の嫉妬程怖いものはないですわね」
「全くです」
フィグネリアが友好的な笑みを浮かべて言うので私も友好的な笑みで応じた。




