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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第1章 夫には既に運命の赤い糸で結ばれた相手がいました
9/199

追加4

私はまず自分が懇意にしている商人にユミルと陛下の様子に関して噂を流させた。

商人はいろんなところを回っている。

だから私がテレイシアで懇意にしていた商人がこの国にいてもおかしくはないのだ。

ただ私が懇意にしている商人がそういうことを専門にしている国お抱えのエージェントだったというだけ。

王族ならそういう商人を抱えていてもおかしくはない。

そして、実際にユミルと陛下に会ったことのある商人がその噂に乗っかる。

幾らフォンティーヌが口止めをしても無理だ。商人は損得で動く。そしていろんな人と会い、駆け引きをする商人には先見の明があるし、人を見る目もある。

彼らはこのままではこの国がヤバいことを察し、手を引く算段を立てているかもしれない。

そんな時、テレイシアのお抱え商人がユミルと陛下の噂を流していたら?

一般人に分からなくても独自のルートを持っている商人は噂を流している商人の正体ぐらいは察しているだろう。

商人たちは考える。自分たちも噂に乗っかってテレイシアに恩を売るのも悪くはないと。この程度で恩などとおこがましいが、それでも繋がりを持つきっかけになるかもしれないと。

その結果、噂は急速に広まった。


~とある主婦たちの井戸端会議~

「いいわねぇ、王様たちは贅沢ばかりで。私たちは汗水たらして働いたって一生買えないものをあっさりと買って。良いご身分だよ」

「本当だよねぇ。私らのお金だって言うのに」

「もしこれで税金が上がったら」

「私らは王様と番様の贅沢の為に働いているって証明しているようなものだね」

「こっちはいつも家計は火の車だって言うのに。税金さえなかったら貯蓄だってできるし、もう少し余裕のある生活ができるのに。王様たちみたいな贅沢な生活じゃないにしてもさ」


~酒場の飲んだくれども~

「聞いたか」

ビールジョッキを片手に顔を真っ赤にした男が飲み仲間に叫ぶように言う。

「陛下と番様の噂」

「ああ、聞いたぜ」

答えた男はビールの追加を要求しながらつまみを貪る。こっちも顔が真っ赤になっている。

すでに出来上がっている状態だ。

「俺たちの金を何だと思ってやがる」

「どんなに働いたって全部、番様のドレスやら宝石やらに変わっちまうなら働く意味なんかねぇな」

「一層のこと全員で納税を止めちまうか」

がはははと冗談交じりに隣の席で飲んでいた男が言う。

冗談ではあるが本気でそれも悪くはないと思ってしまうのが現状だ。そんなことをすれば当然、脱税の罪で投獄されるが。

それなら自分たちの税金で働きもせずに遊んでいる王侯貴族はなぜ罪に問われないんだと不満が吐出する。

「そういやぁ、テレイシアから王女様が嫁いできたんだろ?その方はどうなんだ?番様と陛下の関係なんて当然、看過できるものじゃないだろう」

ふと思い出したように店主が聞く。

「何でも冷遇されているとか。王妃様なのに、客間で過ごしているとか。番様が王妃宮で過ごしているんだってよ」

「へぇ。そいつは酷い話だねぇ」

「でも、そんなことがテレイシア側にバレたら即戦争なんじゃないのか?あそことは友好的な関係を今まで築いて来たのに、今の御代で壊れるかもな」

「冗談じゃないよ。ただでさえ、帝国がいつうちに戦争をふっかけてくれるかも分からないのに。テレイシアとの結婚だって帝国に備えてだろう。王様は何を考えているんだい」

酒の混じった男たちの冗談交じりの話にだんっと追加のビールを置きながら店主の妻が怒る。

少しずつ、けれど確実に民たちの中で不安が広がっていた。

帝国だけではなくテレイシアとも戦争になるかもしれないと。


◇◇◇


「くそっ」

侍女の変装をしてユミルの言いつけ通りのものを持って部屋に向かっている途中で目に濃い隈を作ったフォンティーヌとすれ違う。

城下で流れている噂の火消しに奔走しているようだ。

「ごめんね、フォンティーヌ」

その原因を作った私はちょっぴり罪悪感を持ちながらユミルの部屋に入る。

「ちょっと、いつまで待たせる気。このノロマ」

当の本人は全く呑気なものだと思う。

「申し訳ありません」

「あなたって地味で、気もきかない。仕事もできないなんて将来はおひとり様決定ね」

そう言ってきゃはははと笑うユミル。

私は「そうかもしれませんね」と笑いながら何て醜い性根だろうと内心呟く。

ユミルも陛下も馬鹿でどうしようもない下種で良かった。だって、これなら躊躇する必要もないし、良心も痛まないもの。

だから私は笑みを深くする。

楽しみね、ユミル。これから待ち受ける未来がとても楽しみだわ。

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