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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第5章 天然トラブルメーカー

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結局、「うん」と言うまで食い下がって来たリーゼロッテに根負けした結果、私は彼女の友人の友人というユリアンヌ・ジョーンズ子爵令嬢の元へ行くことになった。

ところが、訪問当日にリーゼロッテが体調を崩してしまい私一人で行く羽目になった。

事前に訪問の約束を取り付けているのでドタキャンでは相手に失礼に当たる。

私はディーノとシュヴァリエを連れて行くことにした。

「エレミヤ様に心配していただけるなんてとても光栄です」

出迎えてくれたユリアンヌの父親、ジョーンズ子爵は揉み手で私の訪問を喜んでくれた。

リーゼロッテの話では彼女は情緒不安定でここ最近は部屋に閉じこもっているそうだ。

この父親からはそんな娘を心配しているという感じは受けない。

ただ単に娘に興味がないのか。貴族の家庭では珍しいことではない。

女は家の利益の為に嫁ぐ道具。男は家の私財を潤沢にする為の道具。家族愛というのがとても希薄なのだ。

「私はリーゼロッテ様の代理で来ただけですから。とても心配しておられました」

「皇女様に心配していただけるなんて有難いことです」

ジョーンズ子爵から出るのは権力者に対する諂いばかり。ユリアンヌの部屋に行く道すがら彼女の状態について聞いているが、とても退屈な時間だ。

「皇女様やエレミヤ様にまで心配をかけるなんて本当にどうしようもない娘です。娘は大したことないんです。この年の娘は多感で、どうせすぐに良くなるとは思うんですけどね」

会話の中で分かったことは子爵が娘に対して何の情報も持ってはいなかったということ。

奥方は昨年、病気で亡くなっていると聞いている。

そんな娘に対して配慮できる邸とは思えない。これでは、娘の今の状態も納得できるというものだ。

多少の精神的治療は必要だろうが、こちらにできることは何もない。時間が解決するのを待つしかないような気もするが、会ってみないうちからの判断は止めておこう。

「こちらが娘の部屋になります」

ジョーンズ子爵は軽くノックをして部屋に入る。私もその後に続く。

「っ」

部屋に充満する異様な匂いに私は思わず足を止めてしまう。

「この匂いはなんですか?」

匂いの発生源は床頭台にある私の国にある急須のような形をしたものだ。そこから出る煙が匂いを発生しているようだ。

ジョーンズ子爵は鼻をつまみ不快そうに鼻をつまんでいる。

「全く理解に苦しみます。あのようなものが今社交界で流行っているとか」

本当に流行っているのかしら?

アウロやリーゼロッテの部屋からもこんな異様な匂いは感じたことがない。

「ジョーンズ子爵、すぐに窓を開けて部屋の中を換気してください。エレミヤ様はすぐに部屋の外へ。ディーノ、結界でエレミヤ様の周囲を囲め」

シュヴァリエの指示と同時に私はディーノに腕を引っ張られ、部屋から引き離された。

「な、何ですか、急に」

シュヴァリエの指示にジョーンズ子爵は戸惑い動けずにいる。

「彼は私の専属護衛、シュヴァリエです。信頼できる男です。すぐに指示に従ってください」

「し、しかし、これがないと娘は暴れるんです」

「依存しているんですね。続ければもっとひどい目にあいますよ。これは違法薬物です」

「い、違法!そ、そんなもの」

「早く指示に従ってください。でないとあなたは未来の皇妃であるエレミヤ様に害をなす薬物を吸引させたことになります。この事実に陛下がどう動くかは言わなくても分かりますね」

「は、はいぃぃっ」

ジョーンズ子爵はすぐに窓を開けて、床頭台の上にあるものを処分した。

ジョーンズ子爵が最初に言った通り、ユリアンヌは暴れたがシュヴァリエがそれを抑え、気絶させた。

枯れ枝のような髪に落ちくぼんだ目。手足はガリガリでまるでスラムの子供のようだ。

これでよく大したことがないと言ったな。と、私は思わずジョーンズ子爵を見る。ディーノも同じことを思っていたのか戸惑っているジョーンズ子爵を呆れた目で見ている。

完全に部屋が換気されたのを確認するとディーノが結界を解いた。

「シュヴァリエ、それは何?」

「アヘンです」

「ア、アヘンだってぇっ!」

ジョーンズ子爵は容量オーバーを起こして倒れてしまった。

「貴族の令嬢が一体どうやってそんなものを手に入れたのかしら」

「入手ルートは本人に聞くのが一番早いでしょうが、直ぐには無理でしょうね。回復を待ってからでないと」

「流行ってるって、そこののびている男が言っていた」

ディーノはジョーンズ子爵を足でつつきながら言う。

「それについては陛下に聞きましょう。私は王宮に戻って応援を呼んでくるからシュヴァリエはそれまで待機。二人を見張っておいて」

「分かりました」

「ディーノは私の護衛で王宮に戻るわよ」

「ああ」

私は部屋の中で死体のように眠っているユリアンヌを見る。

何だか目に見えない何かが背中をよじ登ってきているような嫌な感じがする。

「エレミヤ様」

「何でもない。行きましょう」

ディーノに促されて私はジョーンズ子爵邸を後にした。

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