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「エレミヤ様、お願いがあるの」
いつものようにリーゼロッテが私の部屋にやって来た。
ノワールと婚約した私と頑張って親しくなろうとしている。だからって毎日来られても困るけど。
「お願いですか?」
「実はね、私の友達の友達の様子がおかしいの」
それって他人じゃん。
「私の友達はとても心配しているの。それで、ちょっと様子を見に行こうと思うんだけど、一緒に来て欲しいの」
「リーゼロッテ様が様子を見に行かれるのですか?」
「そうよ。だって、心配じゃない」
「リーゼロッテ様の友達が行かれた方がいいんじゃないでしょうか。リーゼロッテ様はその方と親しいわけではないのですよね」
「ええ。でも、私の友達も最近、体調を崩しがちなの」
頬に手を当ててリーゼロッテは心配そうにため息をつく。
だからって、どうして私が一緒に行かなければいけないのだろうか。リーゼロッテの友達の友達って。彼女ですら他人なのに。私だと余計に関係ない気がする。
「それで私が代わりに様子を見に行こうかと思って。私の友達がとても心配してたので」
「私が一緒に行く意味がありますか?」
「私も最初は一人で行こうと思ったのよ。でも」
そう言ってリーゼロッテは後ろに控えている護衛を見る。黒い髪に黒い目をした顔の整った青年だ。
彼の名前はジェイ・アクセライト。
「ジェイがダメだって」
頬を膨らませてリーゼロッテは抗議をする。
ジェイが許可を出さなかったのは相手が友達の友達という関係だからだろう。
リーゼロッテは王女だ。気軽に王城から出ることは許されない。
それに王族が私的に一貴族の家を訪ねれば、王族のお気に入りというお墨付きが得られるようになる。そうなると事業を起こすときにも有利になる。
誰がどういう状態で利用するか分からないのだ。それにノワールは王位を継いだばかりで情勢が安定しているわけではない。そういう時はだいたい王族の命が狙われるのだ。
自分たちが苦しいのは、自分たちが苦労しているのは王族のせい。ということで命を狙われやすい。
あまり出歩かない方が良いだろう。
「だからエレミヤ様も一緒に行きましょう」
「は?」
意味不明だ。どこでそういう話になるのだろう。
だいたい知らないひとが来ても迷惑なだけのような気がする。




