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「エレミヤ様」
廊下を歩いていると黒い髪と目をした女性に呼び止められた。
「フィグネリア・コーク侯爵令嬢です」
耳元でカルラが教えてくれる。
「ごきげんよう、コーク侯爵令嬢」
フィグネリアはたくさんの取り巻きを連れていた。
「ごきげんよう、エレミヤ様。これからみなさんでお茶をするところなの。エレミヤ様もいかがですか?」
にっこりと笑いかけてくる彼女は帝国で会った貴族令嬢の中で最も友好的な態度だった。
でもその容姿のせいかとても妖艶にも見える。
「ありがとうございます。けれど、ごめんなさい。これから歴史の授業なの」
「そう。残念だわ。ねぇ、みなさん」
「はい、とても」
「せっかく、仲良くなれると思いましたのに」
「申し訳ありません」
彼女の周りにいる令嬢たちも本当に残念そうに、口々に言う。
「次期皇妃様となると学ぶことも多く、大変ですわね。ましてや他所の国から嫁がれるとなると文化も違いますし」
「そうですね。けれど、知らないことを知れるのはとても嬉しいことですわ」
私の言葉にフィグネリアは笑みを深める。
「次期皇妃様は勤勉なのですね。さすがですわ。ねぇ、みなさん」
「はい、とても」
「素晴らしいことですわ」
「申し訳ありませんがこれで失礼します。機会がございましたら、また誘ってくださいね」
「ええ。今度ご都合のよろしい時に是非」
ここでフィグネリアとは別れた。
背後から楽し気な声が聞こえてくる。
「とても社交的な方ですね」
ノルンの言葉に私は同意する。
周囲の令嬢たちは本当に彼女を慕っているようだった。
権力に群がっているわけでも、権力で従わせているわけでもない。人望があるのだろう。
これが本当の侯爵令嬢の力というものかしらね。




