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そして、あれよあれよという間にやって来た私のお披露目会。
今回は他国の人間もたくさん招いている。当然、お姉様も招待客に入っていた。まぁ、金まで出させておいて呼ばないなんてあり得ないからね。でも、本当に陛下は危機感というものが皆無なんだなと招待客名簿を見た時には思ったわ。
先王陛下は政治に関しては優秀な方だと聞いたことがあるから、陛下がここまで馬鹿なのは公爵の教育の賜物か、あるいは天性の馬鹿かのどっちかね。
「お会いできて、光栄です。妃殿下」
グリシャナ王国のジョナサン公爵が人の良い笑みを浮かべて近づいて来た。ぺこりと頭を下げると、彼の頭にシャンデリアの光が当たり眩しくて思わず目を背けそうになったのは内緒だ。
「随分と遅いお披露目会ですな」
「ええ。陛下が私の為にといろいろ考えて下さって、それで遅れてしまったんです」
「そうですか、そうですか。私はてっきり番でもない妃殿下をお披露目する必要がないのかと思っておりましたぞ。まさか、大国の姫相手にそのような不作法が許されるわけでもありますまい」
ちくり、ちくりと公爵は陛下に嫌味をぶつけているが、肝心の陛下はきょとんとしている。
「何を言っている。彼女は俺の番だ。彼女以外、俺の嫁はあり得ない」
堂々とのたまった陛下にさすがの公爵も目を丸くして私の方を二度見した。私は扇子で引き攣りそうになる口を隠した。
「・・・・・なるほど、噂は本当だったと言うことですね」
「噂?」
「いいえ、こちらの話です。しかし、良かった。わが国にもまだ花を手に入れる隙があるということが分かって」
公爵の目が獲物を狙う狩人になった。
「このお披露目会には美しい花を狙う者が多く出席しています。蝶好きの陛下には花の本当の美しさは分かりますまい」
「?俺は蝶は別に好きではないぞ」
「・・・・・そうですか。では、花はどうですかな?」
公爵の言葉に周囲の者たちは、自分たちの話を楽しむふりをして耳だけはこちらに向けている気配がする。みんな、興味津々ね。
私は陛下を見る。さて、公爵の言葉に何て返すのかしら。
「おかしな奴だな。俺は花も別に好きではない。男で花が好きな奴というのはあまりいないのではないか?令嬢ではないのだから」
がくりと崩れ落ちそうになったけど、何とか平静を保った私を誰か褒めて欲しい。周囲の人間も呆れているし、さすがに公爵は平然としていたけど、内心呆れまくっているんでしょうね。
公爵が言う花とは私のこと。そして、蝶というのはユミルのことだ。
社交界で花は淑女をさすけど、蝶はいろんな男にモーションをかけるふしだらな女性のことを指すのだ。
実はユミル、こういう他国を招いた社交界に何回か出たことがあるみたいで、その時に他国の有力貴族の何人かと肉体関係になっていたとか。
ユミルは自分の魅力で彼らを誑かせたと思っていたみたいだけど、貴族にとってこういう遊びはよくあることなのでユミルは遊んでいるようで実は彼らに遊ばれていたのだ。
他国の間では有名な話で、国内では一部の人間以外には周知の事実だった。クルトを含め、陛下の周りには鈍い男しかいなかったので知らない人間ばかりだったけど。
実は私とユミルはあの時が初対面ではないのだ。何年か前に社交界で会ったことがある。その時はお姉様も一緒で、あの時は知らなかったけどユミルは陛下にお願いしてこっそり参加していたのだろう。
ユミルはお姉様の婚約者に言い寄っていて、お姉様の婚約者に手ひどくフラれていた。
「それを聞いて嬉しく思います」
公爵は満足そうに一礼して私たちの前から去って行った。
「彼は何が言いたかったのだろうな」
不思議そうに公爵の背を見つめる陛下に私はため息を押し殺した。




