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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第3章 運命の赤い糸は切るためにあります

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37.キスリング視点

俺はキスリング。母はジュンティーレ公爵家で侍女として働いていた。息子の俺から見ても綺麗な人で、その為ジュンティーレ公爵に目をつけられた。そしてできたのが俺だった。

正妻のエウロカエル様は大人しい方で妾となった母やその息子である俺を追い出したりすることはなかった。

特に冷たく当られることもなく、だからと言って優しくされたわけでもない。

多分、彼女にとって俺と母は空気のような存在なんだと思う。

人形のように従い、息を潜めて生きているエウロカエル様は見ていてとても哀れだったけど、公爵家に仕えている使用人からの悪質な嫌がらせから母と自分を守ることで手一杯だった俺は彼女のことまで気遣う余裕がなかった。

エウロカエル様とジュンティーレ公爵の間に子供はなく、必然的に俺が跡継ぎとなった。

なりたくはなかった。でも母のことを考えると断ることもできなかった。

ジュンティーレ公爵は母を人質にとり、様々なことを俺にさせた。時には人に言えないこともした。


◇◇◇


「初めまして。私はユミル。これから、よろしくね。お兄様」

ある日、ふわふわの雰囲気を纏った甘ったるい声の少女が公爵家に来た。

ユミルは平民の子供だけど、陛下の番。その為、公爵家の養女になった。

彼女の両親は今も平民として暮らしているらしい。ユミルが実の両親と繋がりをまだ持っているのかは分からない。

ただ平民から一気に公爵家の令嬢で陛下の番というシンデレラストーリーのような体験をした彼女はとても気が大きくなっており、問題事も多く起こしていた。

「お兄様は可哀想ですわ。私と違って立派に貴族の血を引いているのに差別されるなんて」

まだ陛下の番として迎えるにはマナーや常識に問題があったので公爵家で教育をしていた時、ユミルはよく私にそう言って擦り寄ってきた。

胸を押し付けて上目遣いで男を誘惑しようとする姿はパン屋の娘というよりは娼婦の娘を連想させる。

「誰かに何か言われたら私に言ってくださいね。妾の子とは言え、お兄様が私のお兄様であることに変わりはありませんわ。お兄様を悪く言う使用人は私が追い出して差し上げます」

そう言って胸を張るユミルには呆れるばかりだ。

いつから彼女はここの女主人になったのだろう。

それに今の言葉は私を気遣っているようで、妾の子である私を蔑んでいるのが分かる。

「使用人の采配はエウロカエル様の役目。番様のお仕事は一日でも早く陛下の元へ行けるように勉強することです。私のことはどうぞお構いなく」

さっさとこの家から出ていって欲しい。願わくば以降は関わらずにすみたい。切実に。

「お兄様はお優しいんですね。私のことを気にかけてくださって。私も早く陛下の元へ行きたいですわ」

でも彼女が正妃になれるかは微妙だ。

今、貴族の中では意見が二分している。

ユミルを正妃に迎えるという意見とテレイシアの王女を正妃にして、ユミルを愛人にするという意見だ。

この国は武力だけはどこの国よりも強いが、それだけでは戦争には勝てない。

万が一帝国が攻めてきた時に備えてテレイシアの後ろ盾が欲しいのだろう。

正妃になれると信じている十代の少女には少し酷な話だが普通に考えて幾ら公爵家の養女となっても元平民がそう簡単に正妃になれるはずがないと分かるものだ。

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