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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第3章 運命の赤い糸は切るためにあります

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誘拐犯は公爵の派閥の人間だった。

明確な証拠も出てきた。

公爵からフォンティーヌに対して圧力があったそうだけど、王妃命令だということで押し通したそうだ。

すると彼は私とフォンティーヌが恋仲ではないのかと下世話な発言をしたそうだ。

即座にフォンティーヌが否定したことと、執務が立て込み、ほとんど執務室から彼が出ないことを証言できる同僚や部下が複数いたため、事なきを得た。

逆にフォンティーヌが公爵を不敬罪として訴えたそうだ。また今回の誘拐犯の件も公爵の派閥の人間がしたことで監督不行届の責任を負わせ、暫くの自宅謹慎までは持っていけたそうだ。

実行犯ではないし、摂政としての発言力が公爵にあるなかここまで持っていけたのは彼の手腕によるものだ。

あの王には勿体ないできた部下だと思う。テレイシアに欲しいところだ。

ちなみに誘拐犯は爵位返上の上、一族処刑となった。

「徐々に公爵の発言力が弱まってきているわね」

派閥から抜ける貴族が増えつつあるのはノルンやシュヴァリエが集めてくる情報で確認出来ている。

「追い込まれた鼠は次に何をするかしらね。ねぇ、キスリング。あなたはどう思う?」

月がてっぺんに来る時間帯。窓辺でワインを飲みながら私は目の前にいる人物に声をかけた。

「窮鼠猫を噛むと言います。鼠は菌を持っています。些細な傷でもそれが猫を死に至らしめることもあります。油断は禁物かと」

キスリングの従者から内密に話があると言われた時は驚いたし、警戒もした。だが同時に僥倖だとも思った。

公爵側の味方が一人欲しいと思っていたところだ。

キスリングは母親の保護をする代わりに公爵の情報を流す約束をしてくれた。

キスリングの実の母親は監視がついていた。母親を人質にとられ、言いなりになっていたようだ。

ハクに調べてもらい裏は取れているので問題はない。

キスリングの母親にはハクの部下をつけている。

「もちろん、分かっているわ。鼠は大量の菌を撒き散らし、大勢の人を殺すことができるということを。この国は正に鼠が持ち込んだ菌に感染させられた人ばかりね」

「ならいいです。陛下は完全に父の言いなりですし、番様も馬鹿ではありますが、だからこその厄介さもあります。充分に気をつけてくださいね」

「ええ、分かっているわ」

「義母の件も」

「どうせだから今回の件とまとめて片をつけるつもりよ。元々公爵側のスパイが欲しくて野放しにしていただけだから。あなたはいいの?」

「接点はありませんから。それに私の母親は一人だけです」

「そう」

可哀想だけど仕方がない。彼女と私の選択の結果だ。ただできるだけの配慮はしよう。

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