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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第3章 運命の赤い糸は切るためにあります

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ユミルの部屋の前を通るとユミルの怒鳴り声が聞こえた。

わざわざ聞き耳を立てなくても何を言っているのかまるわかり。

それに口調が完璧に平民の口調に戻っている。今までも貴族らしい話し方が出来ていたとは言い難かったけど。

「番様は元は平民だと聞いたことがあります。それなのに、どうして身分で差別をするのでしょう。元平民なら貴族に対して恐縮するか、身分など関係なく分け隔てなく接する、とても親しみやすい性格になるものではないでしょうか」

ノルンの疑問に私は苦笑する。

人は力を持てば変わる。ユミルが前、どんな人物だったかは知らないし興味もないけど、この国の最高権力者の番になり、溺愛されれば人格が変わってもおかしくない。

「ある国で監獄実験というものを行ったことがあったわ。監獄に人を閉じ込めて、それぞれに囚人と看守という役割を与えたの」

「その結果はどうなったのですか?」

「日にちが経つにつれて看守が横暴になっていったそうよ。この実験で分かったことはね、与えられた役割を演じることで性格にも影響が出るといういうこと」

「番様も『番』という役割を与えられて今のように横暴になった可能性があるということですか?」

「絶対の善人がいないように絶対の悪人がいないのだから、そうでしょうね。まぁ、彼女の生来の性格である可能性も捨てきれないけどね」

彼女の取り巻きが徐々に減ってきているのは知っている。

公爵派の人間が正当な理由で何人か処罰されたことが影響しているのだろう。

そして今回の誘拐事件もまだ調査は完全に終わってはいないが、フォンティーヌの話だとやはり公爵派の人間の仕業らしい。それを処罰すればさらに公爵側の陣営は瓦解するだろう。

後はどうするかが問題ね。

ちらりと後ろにいるエウロカを見る。無表情でついてくるエウロカ。

そして夜会で会ったキスリング。

「部屋に戻るわ。エウロカ、お茶の準備をお願い。できたら下がって良いわ」

「畏まりました」

私の言葉にノルンとシュヴァリエは不服そうな顔をした。

私がエウロカにお茶の準備を頼んでいることが納得できないようだ。まぁ。彼女たちの立場ならそうでしょうね。

私は迷っているのだ。エウロカをどうするかを。

彼女の生い立ちを考えれば同情の余地はある。だからこそ、迷ってしまう。彼女もある意味被害者のようなものだし。

「どうしたものかな」


◇◇◇


エウロカが淹れてくれたお茶を飲みながら私は今後のことについて考える。

シュヴァリエは部屋の外で待機。侍女たちは下がらせたので部屋には今、私一人だけだ。

「姫」

ハクが転移魔法で現れた。

「調査結果です」

彼から貰った資料を一読した。

「誘拐されたと伺いましたが」

「大丈夫よ。見た通り、どこも怪我はしていないわ」

「ここの警備はざるですね」

軽蔑を込めてハクが冷たく言い放った。

「そうね。元々、竜人というのは力で物を解決したがる生き物だから頭を使うのは不慣れ。警備体制を考えるのは彼らには難しいのでしょうね。万が一、侵入されても誰でも対処はできるだろうし」

ユミルのところはガチガチに近衛に固められているから大丈夫でしょうね。それに後ろ盾になっている公爵は裏ボス。実質、彼がこの国の最高権力者と言っても過言ではない。

ユミルのことは上手くいっている。取り巻きが減ったことを私のせいだと思っている。まぁ、実際そうなんだけど。

彼女からは焦りと苛立ちの感情がドア越しからでも伝わって来た。

上手くすれば私を排除しようと動いて自滅してくれるだろう。

そうなればユミルを後宮から追い出す口実を作れるし、公爵は彼女を切るだろうけど、公爵自身も痛手を負うことになる。

後はユミルの自滅を待つだけね。

私は喉を潤す為にエウロカが淹れてくれた紅茶を飲んだ。彼女が淹れるお茶は独特の味がする。こればかりはいかに優秀なノルンでも出せる味ではないだろう。

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