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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第3章 運命の赤い糸は切るためにあります

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「っ」

頭痛と吐き気で目を覚ました。

がたがたと大きく揺れる車体に合わせて体も跳ね上がる。

手と足を動かそうとしたけど麻でできた縄でこすれるだけであまり動いてはくれない。

会場を出て、すぐ使用人が控えている控えの間に行こうとした。けれど、着く前に刺激臭のようなもので湿らせた布で口と鼻を塞がれて、そのまま気を失ったようだ。

あれからどれくらいの時間が経ったか分からない。

この馬車はどこへ行くのだろう。

体を何とか起こして、顔や肩を使って、窓にかけられているカーテンを少しだけずらした。まだ王都内のようだけど、貴族街からはかなり離れている。

街灯がなく、道端に浮浪者や生きているのか死んでいるのか分からない人間が倒れていることからどうやら貧民街のようだ。

こんな場所に連れて来てどうするつもりかしら。と、思っていると馬車が止まった。

私は隠し持っていた小型のナイフで足と手を縛っている縄をちょうど切り終えたところだったのでナイスタイミングだ。

まさか王妃が暗器を持っているとは思わなかったのだろう。荷物検査のようなことをされなくて良かった。

がちゃりと馬車のドアが開くと同時に私は全身の体重をかけてドアに突進した。

「おわっ」

野太い男の声とクッションのように衝撃を吸収してくれる柔らかな感触がした。

目を開けると小太りの男が私の下敷きになっていた。

「何だ」

「何の音だ」

「っ」

今にも崩れそうな小屋からドタドタと重たい音がした。私はすぐに体を起こして走り出した。

殆ど王宮から出ない上にここはまだ慣れていない他国の領域。ましてや貧民街だ。貧民街というのは王都の通りを良くするために増築を繰り返され、使わなくなった道がどんどん隅においやられてできた場所だ。その為、かなり入り組んでいて、住み慣れた人でも一歩道を間違えば迷ってしまうのだ。

それでも足を止めるわけにはいかなかった。取り合えず、後ろから追ってきている男たちを撒くために適当な横道を選んで進んだ。

「逃がすか」

だが、男たちはこの場所を選ぶぐらい慣れているようで先回りをされた。

後ろから数人、前に三人いた。

それでも構わず走り続ける私に前に居た男たちがわずかにたじろぐ。

「か、かまうな。やっちまえ」

「お、おう」

後ろから追いかけてきた男の号令で男たちは腰から下げている剣を抜き、構える。

私は足に着けている暗器を取り出し、投げる。二人の頭に命中、額から血を噴き出して倒れた。

「てめぇっ」

血を見て興奮したのか、仲間をやられて逆上したのか男が私に向かって剣を振り下ろした。

態勢を低くして躱す。

多少、武道の心得があるのか男は剣筋を横にずらして再び私を攻撃してきた。

力で敵わない以上、剣を受け止めてはいけない。それでは力負けしてしまう。懐刀を取り出して、男の剣を受け流す。態勢は低くしたまま男の懐に入り込み、切りつける。

「ぐはっ」

これで障害はなくなった。私は再び走り出した。すると。

「こっちだ」

フードを目深にかぶった男が横から私を捕まえて、走り出した。

「なっ」

とっても怪しい男だ。彼が味方とは限らない。でも、迫って来る敵のことを考えると今ここでその問答をしている時間はなかった。

仕方がなく私は男に従うことにした。私の心を読み取ったのか、横から僅かに男の口角が吊り上がったのが見えた。

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