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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第3章 運命の赤い糸は切るためにあります

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「キスリング、久しぶりね」

陛下はユミルをエスコートして、私は一人で夜会に出席した。

王妃でありながら誰からもエスコートされずに登場した私を嘲笑う貴族もいれば、哀れみの視線を向ける者もいた。

フォンティーヌやシュヴァリエがエスコート役をすると言ってくれたのだけど私が断ったのだ。

二人は独身だし、あらぬ噂が広がっては困る。

それに臣下にエスコートされる情けない王妃にはなりたくなかった。自分の現状を受け入れ、堂々と登場してやると心に決めていたからだ。

正直、屈辱で内心は怒り狂ってはいたけど、そんな私を感心してくれる人も中にはいたみたいなのでまったくの無駄ではなかったようだ。

陛下の挨拶が終わり、パーティーが始まると私はお目当てのキスリングを探し始めた。だが、探し出すのにそう時間はかからなかった。

陛下と一緒にパーティーを楽しんでいたはずのユミルが走りながらキスリングの元へ行ったからだ。

貴族の令嬢が走るなんてはしたない。しかも、人目の多いパーティーでそんなことをするなんて。

貴族からは非難の目が向けられたが、保護者である陛下は困った子供を見るような目でユミルを見ている。注意をするつもりもなければ今の行為を問題視すらしていないようだ。

「番様、走ってはいけませんよ」

やんわりとキスリングが注意をするとユミルは拗ねた子供のように頬を膨らませる。

「ユミルって呼んでください。あなたは私のお義兄様なんだから」

そんな彼女の言葉にキスリングは困ったように眉を八の字にする。

彼の様子をつぶさに観察していた私はすぐに気づいた。最初はユミルに優しく微笑んでいたけど、彼の目は笑っていなかったこと。そして、今もまるでユミルの言葉を素直に受け入れられないと困った顔を作っていることに。

全ては演技。そしてそれを見抜ける技量がユミルにはない。

生来の鈍感さと、腹芸とは無縁の世界で今まで生きてきた元平民の子には到底無理な話だ。

「そう言うわけにはいきません」

「同じ平民の親を持つ者同士ではありませんか」

ユミルの言葉に一瞬、キスリングの顔が強張った。すぐに彼は余裕の笑みを作ってみせたけど。

ユミルの声は決して大きいものではなかった。でも、甘く、甲高い彼女の声は会場内によく響く。

そのせいでユミルと、特に愛人の子供であるキスリングは好奇の目に晒されてしまった。

本来ならこんな場所で言うことではないのだ。

それにユミルとキスリングは違う。ユミルは不貞の子供ではない。たまたま平民の両親を持ち、たまたま陛下の番だったので貴族の養女になって貴族の仲間入りをはたしたのだ。

でも、キスリングは不貞の子供。しかも本妻に子供はおらず、しかたがなく跡継ぎに選ばれてしまった。棚から牡丹餅状態の彼を妬み、蔑む貴族は多い。

「ユミル、お兄様を困らせるものではありませんよ。それに、あなたはもう少し、分別を身につけるべきね。TPOを理解していないのならもう一度公爵邸で一からやり直すべきだわ」

本来なら陛下がしなければいけない注意だが、それはあり得ないので私がユミルに注意をすることにした。

「またそうやって私を虐めるんですか」

目に涙を溜め、体を震わせるユミル。すかさず、陛下がユミルを抱きしめ私を睨んできた。その状況にため息がもれてしまったのは仕方のないことだ。

「ユミルの何が不満だと言うのだ!いい加減、王妃という立場や権力を笠に着て好き勝手するのは止めたらどうだ」

王宮に侍女や女官長が私の怒りを買って辞めさせられたという噂があり、私のことを我儘で傲慢な王妃だと思っている貴族がいることは知っている。

特に彼らを罰する気もないし、放置もしている。でも、陛下だけはそれをしてはいけないのだ。

裏も取らずに噂を鵜呑みにするなど為政者としては失格。

「私は自分の領分を超えたことを行ったことはありません。それと、私に何も言われたくないのであれば陛下がそこの女にもっと注意をしてください。仮にも貴族の令嬢が平民のように会場内を走り回ったり、養父の息子を貶める発言をするなど咎だけではすまされませんよ」

「私はキスリングを貶めるようなことを言ってないわ!勝手にねつ造しないで!」

「そうだ。ユミルは何も悪くはない」

「・・・・・そうですか。では、そう思ってくださる臣下が多いことをお祈りください」

「不愉快だ。下がれ、暫くの謹慎を申し渡す」

ざわりと会場内の空気が揺らいだ。こんな場で王妃に処分を言い渡すなどあり得ないことだ。しかも理不尽に。そのことに気づいていないのはユミルと陛下だけだ。

因みにクルトは会場の外で護衛をしているのでこの場にはいない。

「・・・・・失礼します」

私は一礼して陛下たちに背を向けた。ユミルの満足そうな醜悪な顔と私を推し量るようなキスリングの視線を感じながら私は会場を後にした。

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