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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第2章 媚びを売るべき相手が誰かを分からせて差し上げましょう

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「きゃっ」

招待客の対応におわれていると小さな悲鳴が聞こえた。

小さかったけど、しっかりと私の耳には入った。もちろん、他の人たちの耳にも。何事かと周囲は悲鳴の発生源に視線を向ける。

そこにはドレスを紅茶で汚したユミルがいた。その近くには顔を真っ青にした令嬢がいる。彼女の手には空のカップが握られていた。

「ああん、せっかくのドレスが」

「も、申し訳ありません。番様」

令嬢は平伏する勢いで頭を下げた。ユミルの元にはすぐに陛下が駆け寄った。何をする気だと私は内心とても慌てながらも王妃として見苦しくならない動きで近づく。

「ユミル、大丈夫か」

「はい、カルヴァン。でも、せっかくのドレスが。どうしましょう」

悲し気に眉を寄せるユミルに陛下は優しく微笑む。

「問題ない。また買ってやる」

買ってやるって。それ、国民の税金でしょうに。人が稼いだ金だからこそ散財も気楽にできるのでしょうね。きっと彼らはお金がないのなら民から搾り取ればいいと思っている典型的なお坊ちゃまね。

「お前、名を名乗れ。私の番に危害を加えた罪は重いぞ」

「ボルボン伯爵の娘、ジュディと申します、陛下」

震えながらジュディと名乗った令嬢は陛下に答える。可哀そうに。これでは弱い者いじめだ。

ボルボン伯爵と言えば国境を守っている辺境伯ね。

王族なら事を構えたくない相手ではあるけど、陛下はどうするつもりかしら。

私は少しだけ観察することにした。ジュディには申し訳ないけど。

「此の度は申し訳ありません。決して、番様に危害を加えるつもりはなく」

「では、お前はユミルが嘘をついたと言うのか」

「い、いいいえ。決してそのようなことは」

ユミルは彼女に何かをされたなんて具体的に何も言ってはいないけど。された前提なのね。

「陛下、意図せず接触してしまった為にボルボン伯爵令嬢の持っている紅茶がユミルのドレスにかかってしまっただけだと思いますわ。そこまで大事になさることではありませんでしょう」

見かねた私は陛下とジュディの間に入ることにした。

傍観していた貴族の中にはことさら安心したような顔をする人もいた。誰も辺境伯の機嫌を損ねたくはないでしょうしね。

そこんとこ、陛下は何も分かっていないようだけど。

「なぜ庇う。ああ、分かったぞ。そこの女はお前の差し金か」

「・・・・・」

すごい馬鹿を見る目で陛下を見てしまった。だって、本当に馬鹿な発言を名推理を披露した名探偵のような顔で言うから。

「陛下、ユミルは彼女に何かをされたとはまだ申しておりませんが。それなのに、なぜ何かをされた前提で話を進められるのでしょうか」

「そ、それは」

そこで初めて陛下は故意ではなく、事故である可能性に気づいたようだ。

よく考えてから発言をして欲しいものだ。

「それともユミルは普段から何かをされてもおかしくはないほど人に嫌われているということでしょうか?」

「違うわ!バカ言わないでよ」

すかさずユミルが反応する。私は扇で口元を隠し、冷めた目でユミルを見る。

「私はあなたに発言の許可を与えた覚えはないわ」

「は?」

元平民のユミルは分かる。だが、陛下。何であんたまで何を言っているんだ的な顔をしているんだ。本当によくこの国は潰れずに残っているな。

「下位の者の発言は上位の者の許可がいるのは常識です。そして王妃でありテレイシアの後ろ盾がある私はユミル、あなたよりも遥か上の地位にいるのよ」

「でも」

「そこに陛下の寵愛は関係ないわ」

ユミルに反論の余地は与えない。

このお茶会の目的に私とユミルの立場を明確にさせるものがあるのだから。

「本題に戻りますが、ボルボン伯爵令嬢。今回の件はわざとではないのですよね」

「は、はい」

「そう。ではお互いの不注意ということでよろしいですね」

ユミルは不服そうだったが、無理やり頷かせた。反論しようとした陛下を私は無言の威圧で黙らせた。

女の威圧で委縮するなんて情けない男。

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