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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第2章 媚びを売るべき相手が誰かを分からせて差し上げましょう

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22

「陛下、少々よろしいでしょうか」

私の名前はグロリア。陛下の元乳母で現在は番様のお世話を任されている。陛下からも信頼のあつい女官である。

だから私は陛下にエレミヤの横暴さを報告しに行った。きっと陛下なら何とかしてくれると思ったし、新参者の王妃よりも私の話を信じてくれるだろう。

「グロリアか、どうした?」

急な訪問にも関わらず陛下は嫌な顔一つせず執務を止めて私を招き入れてくれる。それだけ私は陛下の信頼を得ているということだ。

「陛下、エレミヤ妃殿下の横暴さに私は耐えられません」

エレミヤの名前を出しただけで陛下の眉間に深い皴が刻まれた。陛下はエレミヤを相当嫌われている。当然だ。番でもないのに正妻顔。自分の気に入らない侍女を解雇するなどやりたい放題。

「番様に対する敬意も払えなければ、私の態度が気に入らないからと解雇すると脅すのですよ。彼女は確かにテレイシアの王女ではありますが、これはあんまりです」

私の言葉に陛下は深いため息をつく。

「はぁ、本当にどうしたものか。フォンティーヌが王妃として扱えと言うから王妃お披露目も兼ねたお茶会の主催を任せてみたが、王妃の自覚がない者を王妃として扱うのは難しいというか無理だ」

陛下の様子からもエレミヤの扱いに困っているのが分かる。わが国は随分と厄介な王妃を貰ってしまったようだ。

テレイシアは自国で手に余る我儘王妃をカルディアスに押し付けたのではないかと疑ってしまう。

「陛下」

護衛として後ろに控えていたクルトが難しい顔をして陛下に呼び掛けた。

「どうした、クルト」

「いえ、杞憂で終わったらいいのですが、その」

言い淀むクルトに陛下は不審そうにクルトを見つめる。

「妃殿下の性格上、番様に何かするとは考えられないでしょうか。その、自分が正妻だと思っているのなら妃殿下にとって番様の存在は邪魔でしかありません」

がたんっ

陛下は顔を真っ青にして立ち上がった。

獣人にとって番は命よりも大事な存在。失えば狂ってしまう獣人だっている。

「っ。クルト、念のためユミルの護衛を増やせ。それとグロリア、お前に苦労をかけるが監視を頼む。お前をクビにすると脅した件は気にするな。お前は長く王家に忠誠を尽くしてくれた。それに、今は亡き母上もお前のことを信頼していた。そんなお前を解雇などさせない」

「はい。ありがとうございます、陛下。それと妃殿下の監視の任、お任せください」

そうなるとエレミヤに取り入る必要がある。

あの横暴な女にはできるだけ関わり合いになりたくないが、仕方がない。陛下の命令の為だ。それに番様の為でもある。

化けの皮をはがしてこの国から追い出してやる。

私は来た時とは違い、ほくそ笑みながら執務室を後にした。

さて、取り入るにはまず妃殿下から頼まれた仕事をしなくてはいけない。困ればいいと思って手を付けていなかった。

「ジェット、ジェットはいないの」

「は、はい、女官長。ここに居ます」

赤毛に鼻の頭にそばかすのある地味な女が駆け足で私の元へ来る。

「妃殿下が一か月後にお茶会を主催するからそのリストを作成して頂戴」

「えっ、私がですか」

「何か、問題がありますか?」

「い、いいいえ、いいいえ」

ジェットはもげるのではないか思う勢いで首を左右に振った。

「有難く頂戴します。いつまでにすればいいですか?」

「今日中よ」

「・・・・・・分かりました」

これで仕事が一つ片付いた。

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