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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第2章 媚びを売るべき相手が誰かを分からせて差し上げましょう

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ヘルマは泣いて縋ったようだけど、私は王宮から追い出した。

ヘルマを憐れんだユミルが彼女を自分の侍女にしようとしたらしいけどそれは許可しなかった。

そのせいか私は気に入らない侍女を理不尽な理由で辞めさせた最低最悪の王妃という噂が城内に広まった。

噂を流しているのはユミルだ。

その証拠は既に掴んでいる。お粗末な頭では証拠を残さないという考えには至らないらしい。

まぁ、今更城内で孤立しようがどうでもいいけど。

それに私も噂を流している。ユミルがヘルマを使って私を貶めようとしたこと。そしてユミルにはヘルマを助ける力がないことも。ヘルマが追い出されたのはユミルのせいだと。

私が流した噂とユミルが流した噂、どちらに軍配が上がるのか。今から楽しみだ。

一つ片付いたとこで私はシュヴァリエの妹、ノルンを手に入れるために動き出していた。まず、ホワイトエルディ伯爵の黒い噂をいろいろ流した。

まぁ、全て事実なんだけど。

奴隷のことや麻薬のこと。

伯爵は火消しに奔走中。その様子を大変ねぇと他人事のように眺める。

次にお姉様の部下を一人借りた。その部下は魔族だ。

伯爵が今まで使い潰して殺した奴隷をハクに調べてもらい、その特徴を把握。

彼が殺してきた人間をお姉様の配下の魔族を使って幻影を見せて精神的に追い詰めた。

「あら、伯爵。ごきげんよう」

王宮の廊下を歩いていていると目の下に隈を作った顔色の悪い男がやって来た。私は図書室に行くふりをして彼がここを通るのを待っていたのだ。

「これは、王妃様」

一応は私が誰か分かっているみたいで彼は私に軽く頭を下げる。彼は公爵側の人間。私のことを快く思ってはいないはずだけど、さすがは貴族。顔には出さない。

「ご機嫌麗しゅう」

「あなたは、そうでもないみたいね。顔色が悪いわよ」

私の言葉に伯爵は力なく笑う。

「ここ最近、あまり眠れませんでね」

「そう。悪夢でも見るのかしら?例えば、夜な夜な亡霊が出るような」

私の言葉に伯爵が僅かに反応する。けれど、すぐに笑顔を携えて応戦する。

「王妃様はご冗談がお上手ですね」

「あら。否定なさらないのね」

「何のことやら」

全てお姉様からお借りした配下の魔族による精神干渉の魔法で見せている悪夢。悪夢にうなされて目覚めた後に止めとばかりに亡霊の幻影を見せている。

「夢というのは人の深層心理を映し出すことがあるそうですよ。悪いことはできませんね、伯爵」

彼は笑みを消して何か探るような目を私に向けてくる。

後ろめたいことをしている人間は少しの不安要素でも存在するなら排除したいと望むもの。

「そう言えば、今いろいろな噂が飛び交っていますね。何でも伯爵が奴隷を保有しているとか、麻薬を所持しているとか」

噂は何度消されても再燃する。全て私が仕向けたこと。それも伯爵を追い込む為に投じた一石。

疲れも相まって冷静な判断をする理性が働かなくなって来ているだろう。

「根も葉もない噂ですよ、王妃様。私を妬んだ誰かが私を陥れようとしているのです。貴族ではよくあることですよ。最も、王女として大切に育てられたあなたには分からないでしょうが」

最後の言葉には私に対する嘲笑が見えた。何も知らないくせにどうしてみんな人を決めつけるのだろう。王女というだけで甘やかされて育ったなんて。

もし、そうなら私がこの国に嫁ぐことはなかっただろう。私を愛してくれる常識的で優しい人の元へ嫁いでいたはずだ。

「火のないところに煙は立たないものですよ、伯爵。全てが明るみになっても公爵様が助けて下さるといいですね」

私はそう言って彼と別れた。

背後から私を睨む伯爵の視線を感じてほくそ笑む。当然、背を向けている伯爵はそのことに気づきはしない。

「殿下、なぜあのようなことを?」

人の気配が完全になくなるのを確認して、それも用心の為に声を潜めてシュヴァリエが聞いてくる。心なしか彼の目にいら立ちの感情が宿っているように見える。

あまり感情を表に出すタイプではないので分かりにくいけど。

「あのように挑発して、もし彼が仕掛けて来たら」

「その為の挑発よ」

「殿下」

私を咎めるシュヴァリエの口に人差し指を当てて封じる。彼は不服そうに私を睨んでくるけど、気にしない。

「近いうちに私を殺そうと刺客が放たれるでしょうね。王妃暗殺未遂はさすがに公爵も庇いきれない。そこに追随するように奴隷の密売や所有の証拠が出てくる。もう伯爵は切るしかないわね。でなければ自分に火の粉が飛んでくるもの。私なら、そうするわ」

「ご自分の命を囮に使うなど」

「あなたがいなければ仕掛けなかったわ。私は負け戦はしない主義よ」

驚く彼に私は余裕の笑みを見せる。

「ちゃんと私を守ってね。専属護衛さん」

「はい。必ずや」

私を守り抜く騎士としてシュヴァリエは力強く頷く。

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