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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第2章 媚びを売るべき相手が誰かを分からせて差し上げましょう

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追加2

部屋を出て行く際、ヘルマの勝ち誇った笑みが見えた。

役者にも貴族にも向いていないわね。こんな簡単に表情に出すなんて。

そもそもこうもあっさりと連行される私を不思議に思わないものかしらね。

エウロカは驚き、固まっているが心なしか顔が青い。自分の夫がこの件に関与しているかもと思っているのだろう。

カルラは無表情で何を考えているか分からない。

彼女は敵でも味方でもない感じがする。だからって油断はできないけど。


「・・・・・ここ、本当の牢屋じゃない」

貴婦人には貴婦人用の牢屋が用意されている。それは普通の部屋みたいなところだ。でも、私が連れてこられたのは完全なる牢屋。

一般人や下級貴族が入れられるような所だ。王妃である私が入れられるところではない。

「番様を害そうとしたお前にはぴったりじゃないか」

そう言って騎士たちは嘲笑った。

良い度胸じゃないか。誰に歯向かっているのか教えてあげよう。

私はかび臭く、じめじめした不潔な牢屋の中に入る。

こっそり後をつけていたハクから僅かに殺気を感じる。


◇◇◇

「陛下、何を考えているんですか!」

私の名前はミシェル。

フォンティーヌの同僚だ。

今、王宮内は騒然としていた。

フォンティーヌが番様の怒りを買い、謹慎処分となった。それだけではなく、何の証拠も本当にあるのすらも怪しい番様殺害計画を企てた罪で妃殿下が投獄されてしまった。

このことがテレイシアにバレたら間違いなく開戦だ。

そして、帝国がそれを逃すとは思えない。

間違いなく一枚噛んでくる。何ならテレイシアと一時協定を結んで一緒に攻めてくるかもしれない。そうなればこの国は終わりだ。

今から家族を連れて逃げ出す算段を立てた方がいいかもしれない。実際、準備を始めている貴族がいる。

でも貴族として国民を見捨てるわけにもいかない。

「俺は当然のことをしたまでだ」

「番様暗殺計画なんてありません。妃殿下の許可もなく部屋を漁るような真似までして、紳士のすることではありません。それに何も出てこなかったではありませんか」

「上手く隠しているに過ぎない」

あるはずがないのだ。だってそんな計画自体、ないのだから。

「どんなに探しても出なかった場合はどうするんですか?王宮内くまなく探しても出なかった場合は?」

「その時は仕方がないから牢屋から出してやるさ」

出してやる、ね。

謝罪する気もないのか。謝ったところで許されることではないけど。

「それより、何だこの仕事の量は。ユミルに会いに行く時間がちっともとれないじゃないか」

そんなことじゃないだろ!あんたが投獄してるのはテレイシアの王女だぞ。

それに仕事がひっくり返っているのはあんたの自業自得だ。

「陛下がフォンティーヌを謹慎処分にするからですよ。今まではフォンティーヌがしていましたので」

フォンティーヌのことを聞いて、完全に陛下から心が離れた貴族は多い。私もその一人だ。

あそこまで陛下の為に頑張って来たフォンティーヌですら番様の為に処分して見せた。

あんた知らないだろう。

城下に流れている噂。番様と陛下の悪評をフォンティーヌが頑張って消していたのは貴族の間では有名な話だ。

「私も仕事があるので失礼します」

と言って出て行ったが私はその足でフォンティーヌの邸へ行く。

「・・・・・殿下が投獄」

私の話を聞いたフォンティーヌの顔は青を通り越して白になっていた。頭の良いやつだ。この国の未来が真っ先に浮かんだのだろう。

「妃殿下は何の抵抗もせずに投獄されたのか」

「そう聞いている。下手に抵抗されて怪我されるよりはマシだろ」

「絶対に何か企んでる」

「は?」

まぁ、ちらっとしか見てないから分かんないけど。ぱっと見は深窓の令嬢みたいな綺麗な人で何かを企むような腹黒い人には見えなかったけど。

そんなことを考えていた私はそれから数日後、フォンティーヌの言葉の意味を理解することになった。

誰かが意図的にしているとしか思えないぐらいに妃殿下が投獄された情報が出回るのが早い。

貴族にも城下にも広まっている。

周囲からは不安の声が聞こえる。これ、ちょっとまずいんじゃねぇ。ってレベルだ。

フォンティーヌの様子を考えると妃殿下が流してるんだろうな。

あの人はこの国をひっかき回して、どうする気なんだろう。

それから数日後のことだった。

結局、番様暗殺計画の証拠は出ず。更に周囲の貴族の圧力に負けた陛下は渋々、妃殿下を牢屋から出すことにした。

牢屋から出た妃殿下はとてもいい笑みを浮かべて嫌味を陛下に言っていた。それと妃殿下の投獄に一役買った騎士たちの家はそれからいくつもの不正が発覚して没落した。

彼女は一番怒らせてはいけない相手だと思った。

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