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「お前はザガリア。これは貴様の仕業か。どういうことだ。これは反逆だぞ」
マナートは眉間に皴を寄せ、凄むが捕まっている状態でそれをしても全然格好がつかない。
というか、王族の彼とザガリアは知り合いなのはどういうことだろう。
「貴族として恥ずかしくないのかっ!」
「はっ。“貴族として”ねぇ。光栄だね。妾腹で、欠陥品の俺を貴族として扱っていただけるなんて。もっとも、こういう場でもない限り一生あり得なかっただろうけど」
皮肉交じりにザガリアは吐き捨てた。
この行為が差別意識のある神聖国そのものに対する復讐あるいは革命を目的としたものだとしたら軍配はザガリアにある。
彼はきっと長い間準備をし、この国に深い根を張っているだろうから。犯罪組織ガルディアンのボスとして。
ザガリアの言い分を聞いて黙って成り行きを見ていたアルセンが口を開いた。
「お前がこういう行動に出るのはサーシャのことが原因か?しかし彼女は」
「欠陥品だから、お前たちは彼女を見殺しにした。まだ六歳だった彼女は池に突き落とされて殺された」
どういうことだ。
顔は平静を保っていたけど内心は大混乱中だ。
サーシャが死んでいた?でも、私は彼女に城内で会っている。名前が同じだけだろうか?
「サーシャを殺した奴らは今も普通に生活している。貴族として。何の咎もなく。あり得ないだろう。王族を殺しておいて何の罪にもならないなんて。あいつが欠陥品じゃなければ、あいつの母親が高位貴族の出だったら、お前たちはどうしていた?」
決まっている。
徹底的に調べ上げて関わった人は処刑だろう。でも、そうはならなかった。彼女の死はなかったことにされたのだ。それがザガリアには許せなかった。国家に反逆を決意させるほどに。
「ザガリアさん、サーシャさんの死は悲しいことです。でもだからってこのようなことをして許されると思っているんですか?」
フィリミナは神に祈るように胸の前で手を組みザガリアに訴える。まるで彼の良心に訴えかけるように。これは悪手だ。
それに根本が間違っている。彼は許されることを望んではいない。だいたい“サーシャさん”って。あなたは彼女を馬鹿にしているのだろうか。自分が平民でサーシャが王族だということをまるで分かっていない。
「サーシャさんだってきっと望んでいません」
どうしてそう言い切れるのだろう。
死んだ人の気持ちは死んだ人にしか分からない。そんなのは詭弁だ。ましてやフィリミナはサーシャに会ったことすらないのに。
「お前は何様だ?“サーシャさん”?馬鹿にするなよ。あいつは王族だ。平民のお前が気安く呼んでんじゃねぇよ」
だって欠陥品じゃないという不満がありありと顔に出ていた。さすがに空気を読んで口にはしなかった。
‥…読める空気、あったのね。
「あんたのことは知ってるよ。未来を予言し、そのことを鼻にもかけない慈悲深き聖女様」
ザガリアは言いながら鼻で笑った。




