177.マイク・リメンタール視点
僕の名前はマイク。教皇の息子だ。僕には愛する人がいる。その人の名前はフィリミナ。マルクア神聖国の聖女だ。
とても心優しい人で、彼女は公爵家の血を引く。さっさと公爵家は彼女を認めて正式に引き取ればいいのに頷かない。
父に頼んで公爵家に圧力をかけてもらおうと思ったけど父はあまりいい顔をしなかった。教会側としてもフィリミナが正式に公爵家になるのはいいことのはずだ。
教会が政治に関わりやすくなるし。僕との結婚だって可能だ。ただ一つ気に入らないのは相思相愛の僕とではなくマナート殿下と結婚させようとしているところだ。
僕の方が彼女を理解しているのに。
「フィリミナ、どうかした?元気がないね」
つまらなそうに窓の外を見ているフィリミナと図書館で会った。
「マイク。私ね、エレミヤ様と仲良くなりたいの。ねぇ、どうしたら仲良くなれるかな?」
エレミヤ殿下か。
気に入らないな。どうして僕以外の人間と仲良くなろうとするのかな。
僕だけで十分じゃないか。
「どうしてエレミヤ殿下と仲良くなりたいの?向こうは見る限り君と仲良くなりたくないみたいだよ。そんな人、放っておけばいいじゃない」
どうして、そんな傷ついたみたいな顔をするの?
「エレミヤ様って素敵な人じゃない。生まれながらの王女様って感じがして、憧れるの。綺麗だし。確かにちょっと性格に問題はあるみたいだけど、でも欠点は誰にでもあるものでしょう。そこを責めるつもりはないわ。性格に難点がある分人間味があっていいじゃない。私はどうしてもエレミヤ様とお友達になりたいの。ねぇ、マイク。どうしたらいいと思う?」
君は残酷だね。
君を愛している僕にそんなことを言うなんて。本当に気に入らないな。
エレミヤ・クルスナー。
マナート殿下の次に気に入らない。
たかが王子に生まれただけのぼんくらのくせにさ。フィリミナの彼氏面して。
ああ、本当に気に入らない。
この世は気に入らないことばかりだ。
僕とフィリミナだけの世界になればいいのに。
二人だけの世界。きっと素敵だろうな。
そうだ。作ってしまおう。二人だけの世界を。そして二人で死ぬまで愛し合おう。
そのためには邪魔な者は排除しないと。
そしてフィリミナに分からせないといけないな。
誰が一番、君を愛しているのか。そして、君が一番愛する人は誰なのか。
願いを叶えるためにはまず必要な物がある。
「マイク、私の話聞いている?」
「もちろん。僕がフィリミナの話を聞き流すわけがないだろ。人と仲良くする方法なんて簡単だよ。その人が求めているものを与えてやればいい」
「求めているもの?でも、それが何かなんて分からないわ。だって、私と違って王女のエレミヤ様はたくさんの物を持っているし、欲しいものは何でも手に入るでしょう」
「そうだね」
無邪気な無知な君も可愛いね。
あの王女様、君が思っているよりも持っている物は少ないと思うよ。
第三王女なんてスペアにすらなれない。
捨て駒のように他国に嫁がされる可能性が高い。現に彼女は一度、男に捨てられているじゃないか。
「まだエレミヤ様と一緒に過ごして日が浅いだろ。すぐに仲良くなるなんて難しいよ。一緒に過ごす時間を増やしてもっとお互いのことを知ればきっと仲良くなれると思うよ」
もちろん、そんなことはさせないけどね。
君には僕さえいればいいんだから。
「そっかぁ。そうよね。私が焦り過ぎたんだわ。ありがとう、マイク」
「どういたしまして」




