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「エレミヤさん、これは何かな?」
「見ての通り防壁です」
いくら婚約者でも同衾などあり得ない。
結婚すれば、確かにそういう関係も持つだろう。ノワールは皇帝だから跡継ぎは絶対に必要になるし。別にノワールとするのが嫌だというわけではない。
ただ、まだ早いというだけだ。
でも安全の為に一緒にいる方が良いということだったので私はベッドの真ん中に細長い枕を置いた。
だが、ひょいっとノワールは枕を床に放り投げた。
「何をするの」
「必要ない」
そう言ってノワールは私を抱きしめたまま押し倒す。
「ノ、ノワール。ふざけないで」
じたばたと体を動かすけどノワールの体を動かすことができない。
元々、男女で力に差があるのもあるけど彼自体が鍛えているので通常の男性よりも力が強いせいだ。
吐息が耳や首にかかる。
どくどくと私の心臓がうるさく音を出す。
「くすっ。耳まで真っ赤だな」
少しだけ上体を起こしたノワールが私の頬に触れる。
「何もしないからこのままでいいだろ」
マルクア神聖国、初日の夜はノワールに抱きしめられながら迎えたので緊張で全く眠れなかった。




