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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第9章 聖書を利用するのは神だけではなく悪魔も同じ

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「同室っ!」

案内された部屋は一部屋。寝室の真ん中には大きなダブルベッドが一つ。

「あり得ないっ!何を考えているの。馬鹿じゃないの。ちょっと行ってくる」

別室を用意してもらう為に踵を返す私の腕をノワールが掴んで止める。

「まぁ、待て。折角気遣ってくれたんだから有難く受け取ろう」

ノワールは満面の笑みを浮かべる。

「いやいやいや。私たちは婚約者であって、夫婦ではありませんよ」

「いつかは夫婦になるんだから問題ないだろう」

「ノワール陛下」

にっこりと笑ったシュヴァリエが私とノワールの間に入る。

「未婚の男女が同衾なんてあり得ません。幾ら婚約者でも普通は部屋を分けるものです。マルクア神聖国は思った以上に非常識な国の様ですね」

うわぁ。

シュヴァリエが笑顔で毒を吐いている。

「本来ならマルクア神聖国に抗議して部屋を分けてもらうところですが。本来なら。けれどここはいろいろときな臭い」

話が嫌な方向に向いてきた気がする。シュヴァリエは私の味方じゃないの。

「同じ部屋の方が護衛もしやすいですし、エレミヤ様もその方が安全でしょう。なので今回は仕方がありません。けれど、絶対に手は出さないでくださいね」

「‥‥‥」

「よろしいですね、陛下」

「‥‥‥お前の護衛は融通が利かない。分かった」

少し拗ねた顔をしたノワールだけどシュヴァリエの圧に押されるように頷いた。

私は全然良くない。

シュヴァリエの言うことは尤もなので反論できないし、嫌だなんて我儘は言えない。

でも、ノワールと同じベッドで寝るなんて。絶対に寝れない。

「ノワール陛下、エレミヤ殿下。アルセン殿下がご挨拶にお見えです」

「通せ」

「畏まりました」

私たちは寝室の隣の部屋に移動する。

カルラが一礼して出て行った後、長いモスグリーンの髪を腰のあたりで揺らした優男が入って来た。病弱だと聞いた通り、色白の肌は決して健康的とは言えないものだった。

その後ろを褐色の肌に茶色の髪、深い緑の目をした男がついてくる。その男を見ていると目があった。

へらりと笑ってきた。

人の警戒心を簡単に解いてしまうような笑みだなと思った。

「初めまして。ノワール陛下、エレミヤ殿下。マルクア神聖国第一王子のアルセンです」

「エルヘイム帝国皇帝、ノワールだ」

モスグリーンの髪の男、アルセンとノワールが握手を交わす。

ノワールは人の好い笑みを浮かべていたけど、手が離れる瞬間何かを探るようにアルセンを見る。それはアルセンも同じだった。

お互いに相手がどういうタイプか見極めようとしているようだった。

帝国に来たのが馬鹿二人だったからちょっと油断していたけどこの男は馬鹿じゃない。上手く立ち回らないと飲み込まれる。

惜しいな。これで健康だったら間違いなく立派な王になれただろう。ただそうなった場合、命の保証はできなかっただろう。

この国は現在、教会側の人間が大きな顔をしている。王ですら口を出せないほどの権威を持ち始めているのだ。

教会にとって聡明な王は要らないだろう。必要なのは傀儡となれる王だ。彼の弟のような。

「初めまして、アルセン殿下。テレイシア国第三王女、エレミヤ・クルスナーです」

アルセン殿下は私の手を取り、甲に口づけするような仕草をする。実際にしているわけではない。初対面なのだからこれが普通の挨拶だ。

「ノワール陛下、エレミヤ殿下。ご紹介させてください。彼は私の側近、アシューです」

「初めまして、アシューです。枢機卿の地位を頂いております」

教会の人間が側近なんだ。それだけでこの国での教会の立ち位置や教会が野心的に王位のような立場を狙っていることが分かる。

本来なら教会は政治に対して不干渉のはずだ。

「ノワール陛下、エレミヤ殿下。今回はわが国の者が大変失礼いたしました。申し訳ありません」

あの草頭とフィリミナのことを言っているのだろう。あの二人の後ろには教会がついている。だから処分できないのだ。

‥‥‥処分できるようにしてやろうかしら。

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