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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第1章 夫には既に運命の赤い糸で結ばれた相手がいました
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ドアをノックする音が聞こえたので私は資料を全て隠してから入室の許可をした。入って来たのはカルラだった。

彼女はブラッドリー・ジュンティーレ公爵の訪問をしたいという旨の手紙を持ってきていた。

早々に私に接触してくるのね。少し、緊張するけど私も早めに彼に会いたいと思っていたからちょうどいい。

私は訪問を許可する旨の手紙をカルラに持って行かせた。


◇◇◇


「目通り叶いまして、恐悦至極にございます。王妃殿下。お初にお目にかかります。ガルディアス国で陛下より摂政を任命されております。ブラッドリー・ジュンティーレにございます。どうぞ、よしなに」

そう言ってにやりと笑った男の歯からキラリと光る金歯が見えた。

頭は毛が薄く、煌々としている。小太りの何ともいやらしい男だ。

「初めまして、公爵。あなたの噂は我が国にも届いていてよ。会えて光栄だわ」

(王を傀儡にして、国を好き勝手に動かしている悪名を私は知っているわ)

にっこりと笑う私にブラッドリーも笑顔を向ける。人の良さそうな笑みだ。

「・・・・ところで、殿下は私の娘に会われたとか」

「ええ。お茶会の招待を受けたの。急なことだったので驚いてしまったけど。彼女は確か、元は平民の娘だったわね。陛下の番であることが判明して急に貴族の仲間入りをしたとか。あなたも大変ね。陛下の番を養女に持つなんて」

(マナーのなっていない子だったわ。平民の娘でも今は貴族。その責任は養父であるあなたにあるのよ)

「陛下の寵愛深い娘を身内に持てるなど、光栄の極みです。娘はなれないながらもなんとか陛下の恥にならぬように努力した結果、無事王妃宮に住まうことが叶いました。私も娘を誇りに思いますよ」

(王妃として迎え入れられたにも関わらず、客間しか与えられなかった女の戯言に誰が耳を貸すか)

「しかし、殿下の言う通り。娘にはまだ至らぬことが多いようです。殿下と共に過ごすことでいろいろ学べたら良いと思っています」

(お前も今からユミルに、その養父である私に媚びへつらう方が身のためぞ)

本当にどうしようもない国ね。自分の立場を理解できないバカばかり。

ブラッドリーの目は明らかに私を下に見ている者の目だ。嫁いで直ぐに冷遇され、おまけに旦那には既に心に決めた方がいる。

彼は私がそんな境遇を嘆いているだけの娘だと思ったのだろう。だから今から身の振り方を考えろと私に言ってきた。

私を通してテレイシアも同じようにするつもりだろうか。だとしたら愚かとしか言いようがない。もし私を人質にテレイシアに何かを要求しても姉は応じないだろう。

為政者として敵に捕まったノロマを切り捨てる。国の為に死ぬのは王族として当然の義務。姉はそれを知っている人だ。

「ご冗談を。公爵、私は王妃であって家庭教師ではないわ。それにユミルと違って私には王妃としての公務があるの。そこまで暇じゃないわ。彼女はお友達が随分多いわね。その人たちから学ばせたらいいじゃない。尤も彼女たちから学ぶことがあればの話だけど」

にっこりと笑って私が拒絶すればブラッドリーは何とも間抜けな顔をしていた。

私ははっきりとブラッドリーにあなたの娘と仲良くするつもりはないと言ったのだ。

「っ。そうですか。あなたはもっと聡明な方だと思っていたのに、とても残念だ」

来た時とは違い、額に青筋を立ててブラッドリーは荒々しく部屋を出て行った。

私はそれを笑顔で見送る。これでやっと静かになった。

ブラッドリー。どれ程の者かと思ったけど大したことないわね。あんなに単純で短絡的な男の傀儡にさせられるなんて陛下って本当に間抜けね。

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