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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第8章 黒白弁せず~リーゼロッテ、最後の騒動~

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155.リーゼロッテ視点

「いたっ」

ドレスが枝にひっかかり破れてしまった。ドレスが破ける時に枝が腕に当たったみたいで、赤い線ができる。

「もう最悪」

地面はぬかるみ、高いヒールで歩くのは困難だ。

靴擦れができてかなり痛いうえに疲れてしまった。それに辺りは木が生い茂り、景色が代わり映えしないせいで今どこを歩いているかすら分からない。

ガサガサッ

「何?」

草むらから音がする。風も吹いていないのに草が揺れている。明らかに何かいる。もしかしてここに獣でもいるんだろうか。

でもあの粗末な家からまだそんなに距離は離れていないはず。そんな場所に人を襲う獣が出現するなんて考えられない。

「きゃっ」

ぴょんと私目掛けて飛んできたのはウサギだった。ウサギは私の胸を前足で押して逃げてしまった。私は胸を押された衝撃で尻もちをつく。

「なんだ、ウサギか。脅かさないでよ‥‥‥きゃあっ!!」

ほっとしたのも束の間、大きな熊が背後から現れた。がしりと大きな手が私の頬を叩いた。

「あぅ、あああ」

痛みよりも恐怖が勝り、逃げないとと思うのに体が上手く動いてくれない。

「止めて、放して。いやよ、止めなさい」

尻もちをついたまま何とか熊から距離を取ろうと地面を蹴っていた足を熊が掴み、私は持ち上げられてしまった。

このまま食べられてしまうのだろうか。


◇◇◇


「っうあ」

息が詰まるほどの痛みが全身に走り、嫌な汗が背中を伝う。

私、どうなったの?

死んだの?

「運が良いのか悪いのか。まさか生きているとはな」

「我々にとっては運が悪いですよ。こんなお荷物いっそのこと死んでくれたら良かったのに」

「あらあら、そんなこと言ってはいけませんよ」

「大丈夫だろ。こんな役立たず、どうせ一か月ももたずに死ぬさ」

うるさいわね。

静かにしてよ。私は今、それどころじゃないのよ。

だれかこの痛みを何とかしてよ。これだけの人がいてどうして何もできないの?低能なんだから。帝国とは大違いよ。

「おい、準備できたぞ」

「それじゃあ止血をするか」

「ああ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

先ほどの痛みとは比べ物にならないほどの痛みと熱。

熱い鉄のようなものを腕に押し付けられているようだ。痛くて暴れまわる私の体を数人がかりで抑えつけられる。

腕の次は腹部や胸にも同じことをされた。

どうしてこんなに酷いことができるの。私はオルソン、あんたの嫁なんでしょ。なのにどうして。


◇◇◇


次に目を覚ました時は夜の様だった。

周囲には誰もいない。

「っうあ」

辺りをもっとよく見ようと体を動かすと激痛が走った。

熊に襲われたのだからかなりの大怪我を負っているのだろう。この痛みは仕方がない。それにしてもさすがは島国。治療が荒すぎるわ。あんなに痛みを与えるなんて。

体に傷が残らないといいけど。傷物になったらお嫁にいけなくなっちゃうもの。

何とかお兄様にこの現状を知らせて、助けに来てもらわないと。

私は自分の体が今、どういう状態になっているのか知りたくて痛みを堪えて何とか姿見のところまで行った。

「ふぇ。何、これ?」

鏡に映ったのは左目が抉れ、右頬には四本の大きな爪の傷跡があり、そして右腕がない自分の姿。

私は恐る恐る服を脱いでみた。

すると左胸が陥没していた。ごっそりと切り取られているのだ。腹部にも頬と同じ傷跡がある。

「何よこれ、どうして、こんな、いやぁっ」

私はショックのあまり、その場に倒れてしまった。

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