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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第7章 再び『番』問題勃発

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「エレミヤ様、またフィリップ王子からです」

困った顔をしてノルンが赤い薔薇の花束を持ってきた。

ここ最近、フィリップ王子からの贈り物攻撃が凄い。花束は毎日のように届く。

「マメな方ね。どういうつもりなのかしら」

純粋な疑問を口にしたのになぜか空気がおかしかった。視線を周囲に向けると無表情のカルラ以外は微妙な顔をしている。

「何?」

「本気で言っているんでしょうか?」とノルン。

「冗談じゃないか」とディーノ。

「いや。こと、この手のことには鈍くていらっしゃるからな」とシュヴァリエ。

「普段の行いから忘れがちですが、あの方は深窓の姫君なので仕方がないのでは」とカルラ。

ぼそぼそとみんなで話し合っているけど全部、私の耳に届いているからね。

「何を話し合っているのかしら?フィリップ王子の贈り物の意味をみんな知っているの?心当たりがあるなら教えなさい」

私がそう問いただすと誰が言うのかという押し付け合いを視線だけでやり合うという器用な真似を私の従者たちはしていた。

そして決まったのがシュヴァリエだ。

「フィリップ王子はエレミヤ様に懸想していると思われます。贈り物はフィリップ王子からエレミヤ様へのアプローチかと」

「は?」

あり得ない回答に私はみんなに視線を向けるけど、どうやらシュヴァリエの見解は全員一致のようだ。どうしてそうなるのか全く以て不明だ。

「あり得ないわ」

「どうしてそう断じるの?」

ディーノはこてんと首を傾けて私に聞いてくる。私は質問の意図が分からなかった。だって答えは明白だ。

「私には婚約者がいるわ」

「関係ない。恋愛も狩りと同じ。奪った者の勝ちだ」

ディーノ、あどけない顔をして凄いことをさらりと言うわね。

「エレミヤ様、赤い薔薇の花ことばは情熱的な愛です」

カルラはノルンが持っている花束や私の部屋に飾られている花束を見て言う。

「貴族の令嬢は赤い薔薇を好む傾向にあるわ。だから贈り物としては最適。他意はないでしょう」

私が言葉を発せれば発するほど部屋の空気が微妙になってくる。解せない。

「彼は王子として、外交で帝国に訪れているのよ。なのに、そんな略奪愛のようなことをするはずがないわ。王子としてあり得ない。非常識じゃない」



「馬鹿猫から貢物が絶えないそうだな」

いつものお茶の時間にノワールが私を訪ねて来たので一緒にお茶をしている。

「馬鹿猫とはフィリップ王子のこと?」

「他に誰がいる」

ふん。と、そっぽを向くノワールはまるで拗ねた子供のようだ。

「帝国と彼の国で新しく始める事業を成功させるためのご機嫌取りよ。ノワールが気にすることではないわ」

「本当にそう思っているのか?」

「えっ?」

ノワールは不機嫌な顔のまま私に近づいて来た。

「お前は俺の婚約者だ。例えご機嫌取りでも気に食わん」

「!?」

ノワールは私の後頭部に手を添えたと思ったら強引に引き寄せて噛みつくようなキスをした。

部屋には給仕の為にカルラがいた。幸い、ディーノとシュヴァリエは部屋の外で待機していたが、それでも二人きりではないのにキスをするなんて。

抗議したいのにノワールはその隙さえ与えてくれない。やっと離れてくれたころには息も絶え絶えだし、体に力が入らなくてノワールに支えてもらっている状態だ。

とても抗議できる状態ではなかった。

「お前を誰にもやるつもりはない」

「ノワール?」

いったいどうしたと言うのだろう。こんなに余裕のないノワールは初めだ。

その後ノワールはフィリップ王子が私に贈ったとされる薔薇を全て処分するようにカルラに命じた。

花に罪はないのにもったいない。

「殺風景になった部屋に俺からの贈り物だ」

自分で殺風景にしといて、いけしゃあしゃあと言ったノワールは色とりどりの花を従者に持って来させて私の部屋に飾らせた。

ノワールが贈ってくれた花で私の部屋が飾られるのを見てノワールはとても満足そうだった。

もしかして、嫉妬してくれたの。

そう思うとなぜか鼓動の速度が速まり、顔がとても熱くなった。

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