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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第7章 再び『番』問題勃発

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121.フィリップ視点

「なかなか手強いですね」

茶髪に緑の目をした俺の側近ルゼがぼやく。

俺の視線の先は庭を散歩しているエレミヤ王女に向いている。

俺はブリティア王国の第五王子。

今回、エルヘイム帝国を訪れた理由は帝国とブリティア王国で医療の研究機関を作る為だ。

ブリティア王国は医療の発達した国。

エルヘイム帝国は大国でブリティア王国よりも資源が豊富。それにブリティア王国に負けず劣らずの優秀な医療関係者が揃っているからだ。

「ノワール陛下はエレミヤ王女殿下を溺愛していると専らの噂です。下手に手を出せば今回の事案が水泡に帰しますよ」

ルゼの苦言を俺は鼻で笑った。

「最終的にはエレミヤが俺を選べば何も問題はない。医療が発達すれば助かる人は増える。こんな事案を私情で頓挫させるほど愚かではないだろう。それに帝国がダメならテレイシアに話を持ち掛ければいい。自分の妹が嫁ぐ国だ。喜んで支援してくれるだろう」

「しかし、帝国と手を組むのはわが国の人間とは違う視点を取り入れてくれることを期待してです。テレイシアは帝国ほど医療は発展していません」

いちいち口うるさい男だ。

「人材だけ帝国に寄こしてもらい、金の支援はテレイシアがすればいい。それぐらいなら帝国もしてくれるだろう」

面白くない話になってきたので俺は庭を散策するエレミヤを見ることに集中した。

エレミヤは絶対に俺を選ぶ。

俺ではないとエレミヤを幸せにすることはできない。なぜなら俺こそがエレミヤの番だから。

番でない男にエレミヤを幸せにすることはできない。

そう思っていると部屋を一人の女が訪ねてきた。ドミニカ・レベッカ。エレミヤに突っかかる嫌な女だ。何度、縊り殺してやろうと思ったことか。

「フィリップ王子、私と手を組みませんか」

俺は直ぐにルゼに人払いを命じた。

部屋には今、俺とドミニカだけ。

「私はノワール陛下が欲しい。あなたはエレミヤ殿下が欲しい」

にやりとドミニカが笑う。まさに悪女の笑みだな。

「私たち、利害は一致していると思いません」

「そうだな」

ただし、お前が目的の為にエレミヤを害することも厭わないと思っていることを除いて。俺がそんなにことにも気づかない馬鹿だと思っているのか。

さすがは自国を追い出されてものうのうと生きている恥知らずな愚者だ。だが乗るのも一興か。

「いいだろう」

俺の言葉にドミニカは満足そうに笑って自分の計画を話した。それは何とも幼稚で杜撰な計画だった。

彼女の頭には脳みそが詰まっていないようだ。

自分の魅力ばかりに頼った計画。あの男が惑わされるわけがない。上級貴族だってドミニカに弄ばれたふりをして弄ぶことぐらい簡単にやってのけるだろう。

彼女の家は公爵家だと言っていたが眉唾物だな。まぁ、いい。俺の目的の為にせいぜい愉快に、派手に踊ってもらおうじゃないか。

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