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「久しぶりね、フォンテーヌ」
一週間後、フォンテーヌが到着した。現在は私の部屋のテラスでお茶を飲んでいる。
「お久しぶりです、エレミヤ様」
カルディアス王国、カルヴァンが行方不明になり姉フレイヤとノワールの弟が王となってからバイトラークに改名。
フォンテーヌは宰相として私の姉とノワールの弟を支えてくれている。
今回のパーティにはフォンテーヌがバイトラークの代表として参加してくれた。
「フレイヤ姉上はどうですか?お変わりなく」
「はい。毎日、精力的に動いています。スーリヤ女王とあなたを知っているからこそ、初めてフレイヤ様に会った時は衝撃的でした」
そう言ってフォンテーヌはお茶を飲む。
とても穏やかな時間だ。
彼とこんな穏やかな時間を過ごす日が来るなんて夢にも思わなかったわね。
カルディアス王国‥‥…今はバイトラークになっているけど、あそこに嫁いだ時は完全に国を乗っ取るつもりだったし、夫となるカルヴァンには多くの問題があった。
それに最終的にフォンテーヌが選んだこととは言え、私は彼に恨まれても仕方がないことをしたのだ。
恨んでいるのかなんて愚かな質問はしないけど。
それは彼の選択に対する侮辱だ。
「みんなそう言うわ。フレイヤ姉上はおっとりした方だから。だけど、怒ると一番怖いのよ。スーリヤ姉上もフレイヤ姉上が本気で怒ると怖いと仰っていたわ」
私の言葉にフォンテーヌはくすりと笑う。
「普段、穏やかな人は滅多なことでは怒らないので余計にそうでしょうね。それだけはどこの国も共通なような気がします。それに、時折思うんです。ああ、さすがはあなたの姉君だなと」
「?」
そんなふうに言われたのは初めてだったので何を言われているか分からない。
きょとんとした私を見てフォンテーヌは説明不足だったと思いつけ足してくれた。
「とても優秀な方です。王としての資質がある。私は最初、あなたが王として私の国の国政を担ってもいいとさえ思っていました」
フォンテーヌは『思うだけで陛下に対する裏切りですね』と笑った。
そこにはどこか寂しさが滲んでいた。
私にとってはダメな王。ダメな夫だった。フォンテーヌにとっても彼はダメな主だっただろう。だけど、幼馴染でもあるのだ。情がない訳ではない。最後まで私の手を取るかカルヴァンを王として支え続けるかを迷う程には情があったのだろう。
彼の気持ちを考えるととても複雑だ。
「フレイヤ様の優秀さは時折、あなたを思い出させます。おっとりした方で、見た目は気弱そうに見えますが芯をしっかりと持っている方で、やはりあなたの姉君なのだと」
「フレイヤ姉上は私よりも優秀ですよ。きっとバイトラークを今よりももっといい国にしてくれます」
そんなふうに言ってもらえたのは初めてなので純粋に嬉しかった。
私はいつも姉のおまけだったし、姉と比較されて落胆されることも珍しくはなかったから。




