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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第6章 邪魔で邪魔で仕方がない

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「やっと静かになったわね」

「はい」

アウロの件が片付き、私は久しぶりにゆっくり過ごしていた。

リーゼロッテは母親を助けようと奔走しているようだけど聞く耳を持つ者はいない。ノワールの所へ押しかけて行ったらしいけど門前払いをされたようだ。

「エレミヤ、皇帝陛下が来てる」

ひょっこり顔を出したディーノの後ろにノワールが少し疲れた顔をして立っていた。私はカルラにお茶を淹れるように指示した。

「変わった茶だな」

「甘露茶よ」

「テレイシアの茶か。甘いな」

「適度な甘さは疲れにいいので摂取することをお勧めします」

「自国の特産品を売り込むとは抜け目がないな」

そう言いながらもノワールはカルラにお茶のお代わりを頼んでいた。気に入ってくれたようだ。

「アウロの件ではいろいろ動いてくれて助かった。何か褒美を与えたいのだけど欲しい物はあるか?」

「急に言われても思いつかないのだけど」

「宝石でもドレスでも何でもいいぞ」

暫く考えてみたがやはり何も思い浮かばない。

欲しいと思ったら大抵のものは手に入る。そういう生活を送っていると人は無欲になるのだろうか?

でも行き過ぎると傲慢になりそうね。気をつけよう。

「考えておきます」

「そうしてくれ。そなたには暫く休んでもらいたかったのだが。数日以内にジュリア殿が着くそうだ。他の者も続々とエルヘイムに着くだろう」

オルソン・ジュリアとリーゼロッテを会わせることが目的で開く夜会だけど、他の他国の要人を招いた晩餐会をすることになっている。

即位したばかりのノワールを他国に宣伝し、諸外国の繋がりを強くする目的で行われる。

皇子の時に会ったことのある人もいるだろうが皇帝になると付き合い方も変わって来るので付き合い方を再度確認する必要もあるのだ。

「何事もなければいいですわね。ここ最近はごたつくことばかりでしたし」

私のしみじみとした言い方にノワールは苦笑する。

「俺としてもそう願いたいが、国の要人はくせ者ばかり。それにお前はまだ婚約者だからかつけ入る隙があると考えているのだろう。年頃の令嬢を連れてくる連中も多い」

「みなさん、略奪愛がお好きなのね」

「もれなく最高権力の地位がついてくるからな」

ノワールは肩を竦めて呆れた顔で言う。

正妃という立場は令嬢の中で最高の権力者となる。それに贅沢な暮らしもできる。良いことづくめのように見えるけどそこには当然、地位に見合った義務が発生する。

それを承知の上で略奪を企む令嬢はいったいどれほどいるのだろうか。

「それでだ。俺たちは諸外国に示す必要があると思わないか」

嫌な予感がする。

ノワールは結婚詐欺師のようなとてもいい笑顔を浮かべている。笑顔は素敵なのにときめかないのはきっと腹黒さが滲んでいるからだろう。

「何をでしょう?」

「つけ入る隙がないほど俺たちは愛し合っていると」

そう言って立ち上がったノワールは私の隣に座る。逃げるために距離を取った私の腰を引き寄せ、持ち上げる。

「ちょっ」

流れるような動作で文句も言えなかった。

私はノワールの膝の上にいる。

顔が近くて、沸騰しそうだ。そう思っているとノワールが頬や口、額などにキスをし始めた。

ノルンは顔を赤くし、私の方を見ないようにしている。カルラは平然と構えている。

「あの、ちょっ、人がいるのに」

「問題ない。俺たちは婚約者同士なのだから気にするな」

「ちょっとは気にしてくださいっ!」

私の叫びは部屋に木霊したが、助けてくれるものはいなかった。

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