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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第6章 邪魔で邪魔で仕方がない

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103.フィグネリア視点

「相変わらずの癇癪持ちね。相手にするだけでも疲れるわ。それにしても」

あのお花畑・・・・じゃなかった。リーゼロッテ様の婚約話なんて聞いたことないけど。

城内で噂になっているって言っていたわね。

皇女の婚約話が噂として出回っているのなら必ず私の耳に入るわ。それがないということはエレミヤ様が嘘をついたのね。

内容の真偽はともかく、城内で噂になっているとしたらもうどうすることもできないということ。

王族の何たるかも知らないないもの強請りのアウロ様のことだから焦って何か仕出かすかも。

エレミヤ様に対する嫉妬もかなりのものだし。

国を滅ぼされ、嫌々この国に嫁いできた哀れな姫、アウロ。

嫁いだ国がなくなってノワール陛下の元に来たエレミヤ。

きっと自分と同じ立場の人間だと思ったのでしょうね。でも実際は違った。

部屋に籠って自分を憐れむことしかできなかったアウロ様と違い、エレミヤ様は自分が令嬢の中で逆らってはいけない頂点に君臨するべき存在なのだと示して見せた。

新しい事業にも積極的に取り組んでいるし、麻薬の件でも活躍している。

この国は少しずつエレミヤ様を受け入れようとしているのだ。

自分のコンプレックスを刺激されてさぞや苦痛なのでしょうね。

馬鹿らしい。

「陛下、フィグネリアです」

「入れ」

執務室に入ると陛下は相変わらず書類に埋もれていた。

「どんな様子だった?」

書類に目を通しながら単刀直入に陛下が聞いてくる。

「だいぶ荒れていましたわね。それにエレミヤ様が特大の爆弾を落としているようですし」

エレミヤ様の名前を出した途端、陛下は書類から顔を上げた。さっきまで私に見向きもしなかったのに。

「爆弾?」

面白そうに陛下は私に先を促す。

「リーゼロッテ様の婚約相手が決まったとか。既に城内で噂になっているとか。しかもその相手がネメア島の第五王子だとか。本当ですの?」

「ああ」

「まぁ、お気の毒ですこと」

ざまぁみろですわね。

アウロ様もそうですけど、あの能天気娘も相当、腹が立っていたので同情はしませんわ。

政略結婚の道具にさえなれない出来損ないの王族。その烙印を自らの行動で示すことによって陛下に押させたのは他ならぬリーゼロッテ様ですもの。

「エレミヤは相変わらず仕事が早い。早速、アウロにばらしたのか。まだ内密の案件だから広めるなよ」

「畏まりました」

ばらすと分かって情報を与えたのでしょうね。アウロ様ならそのことを話す知り合いもいないし。

エレミヤ様の行動はお見通し。そしておそらくエレミヤ様も陛下の意図を汲んでのこと。

腹黒いカップルだこと。

「あの様子ならすぐに行動に移しそうですわね。焦っている分、ボロも出しそうですわよ」

「ああ。その為の君だろ。頼んだ仕事は?」

「すでに終わっていますわ。アウロ様が使える裏稼業の方はもういませんわね。我が家が根回しをしてしまったから。あらあら大変。ご自分で動くしかないなんて。でも辺境の国のお姫様なら自分で行動することぐらい慣れておいででしょう。良かったですわね。直ぐにでも現行犯逮捕できますわよ」

「まだ喜ぶのは早い。とはいえ、漸く癌の一つを除去できるな」

緊張の糸を解くわけにはいかないがそれでも陛下の顔にはほんの少し安堵の色が見える。

「引き続き、監視を頼む」

「御意」

陛下の部屋を出て廊下を歩く。

ふと見た窓に映る自分の顔に苦笑する。

「私も人のことは言えませんわね」

いつからこんなに汚い人間になってしまったのかしら。

「フィグネリア?」

私の専属護衛であるダリューンが心配そうに私を見つめる。彼に何でもないと答えて再び足を進める。

子供の頃は気づかなかったけど大人になるということは汚れていくということでもあるのね。

純粋無垢なまま完結できる世界などないのだから。

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