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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第6章 邪魔で邪魔で仕方がない
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「なかなか好評のようだな」

私は今、ノワールと中庭を散歩している。

「ええ。ノワールが支援してくださったり、信頼できる商人と繋ぎを取ってくださったおかげよ」

「お前が連日、お茶会を開き貴族に根回しをしたからだ。有力な貴族令嬢と繋がりを持てたそうだな。さすが、エレミヤだ」

そう言ってノワールは微笑む。

私はあまり褒められたことがないのでこうやって素直に褒められるとどういう反応をしていいか分からなくて困る。

「リーゼロッテのことだけどな」

急に変わった話題に緩みかけた私の顔が引き締まる。

「城内でのリーゼロッテの評判は耳に入っているな?」

「はい」

社交界でも一人壁の花になっていることが多くなった。

自分からお友達のところに行っても相手にされず、それどころか嫌味を言われている。

表だって嫌味を言われるのは舐められている証拠。

リーゼロッテ相手にそれをしても王族は問題にしない。と、思われている。

彼女は王族としての価値も失くしたのだ。本人がそれに気づいて挽回するために動けばまだ救いはあった。

でもリーゼロッテは気づいていない。

嫌味を言われる度に泣きながら社交界を途中退出することも多くなり、貴族から笑われている。

淑女が人前で泣くなんてはしたない行為とされている。

「まだ未定の段階だが、決定事項と考えてもらって構わない。本人には伝えていないがネメア島という島国の第五王子オルソン・ジュリアに嫁いでもらうつもりだ」

「ネメア島というと狩人で生計を立てると聞いています。あそこは一夫多妻制ですね」

「よく勉強しているな」と言ってノワールが私の頭を撫でる。

「そ、それぐらい当然よ。私はあなたの婚約者なのだから」

思わず可愛げのないことを言ってしまったけどなぜかノワールは嬉しそうだった。

「そうだな。俺の婚約者なら当然だ」

「っ」

『あなたの婚約者』という言葉がノワールは嬉しかったようだ。

たったそれだけの言葉で喜ぶなんて、変わった人だ。

「あそこの装飾品はサンゴなど海の物を使った物が多い。宝石で作られた装飾品とはまた違った美しさがある。今度取寄せてみよう。お前の銀色の髪にはきっと赤いサンゴの髪飾りが映えるだろう」

ノワールは私の髪を優しく撫でる。それだけで心臓の鼓動が早まる。

温度を伴わないはずの髪がなぜか熱く感じる。

「楽しみにしてます」

「ああ」

その後、執務がまだある為ノワールは戻って行った。もう少し一緒にいたかったけど私もまだ仕事が残っているので部屋に戻ることにした。

「あら、エレミヤ妃殿下」

回廊でフィグネリアに会った。

「お久しぶりです。先ほど、中庭で陛下と一緒でしたわね。仲がよろしいようで羨ましいですわ」

そう言ってフィグネリアはにっこりと笑う。女の私でも見惚れてしまう程妖艶な笑みだ。

「そう言えば、最近孤児院の子たちの為にいろいろやっているそうですわね」

「はい。私も何か陛下の役に立てないかと思いまして」

「そうですか。それは素晴らしいことですわね。でも気を付けられた方がいいですわよ」

フィグネリアは目を細め、意味深な笑みを私に向ける。

護衛として一緒にいるディーノ、キスリングがフィグネリアを警戒するのが背後から伝わる。

ノルンも僅かに一歩前に出る。

フィグネリアは私の使用人が警戒していることに気づいているようだけど気にしていないようだ。

「どこで誰が、どのような謀略を巡らせているか分かりませんもの。妃殿下をよく思わない人は存外、身近にいるものですわ」

「そうですわね。気を引き締め事業に臨みますわ。わざわざ忠告してくださりありがとう」

フィグネリアは私をまじまじと見た後、去って行った。

「あの女、何がしたいんでしょうね」

ノルンの言葉に私は頷く。悪意を感じたことはない。でも彼女の言葉はどちらでも取れるのだ。

自分が何かをするという宣戦布告。あるいはただの忠告。

何かを知っているのは確かだ。

フィグネリアの周囲は警戒が強く、マクベスでも探ることはできない。まぁ彼は元暗殺者。本業は暗殺で諜報ではないから仕方がないけど。

「例の噂も気になる。陛下に直接聞いてみた?」

ディーノの言う噂とはフィグネリアがノワールに懸想しているということ。

ノワールがフィグネリアをどう思っているか気になるけど一度も聞いたことはない。聞くのが怖い。

どうしてだろう。

カルヴァンがユミルを愛していても何とも思わなかったのに。

「いいえ。必要ないわ」

ディーノは何か言いたそうだったけど私は話を無理やり打ち切った。

聞けばすぐに解決することは分かっている。でもそれができない。

自分がノワールに対して臆病になっている自覚はあった。どうにかしなければと思いつつも忙しいことを理由に先延ばしにした。

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