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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第6章 邪魔で邪魔で仕方がない
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私は買った布を手のひらサイズの正方形に切る。同じことを違う種類の柄や色の布で行う。

ノルンとカルラは不思議そうな顔で見ている。

私は切った布の配列を考えるために何回か布同士を並べてみる。

「これが良いわね」

決まると今度は違う色の布を縫い合わせる。すると、ハンカチサイズのパッチワークの出来上がりだ。

「これは何ですか?」

ノルンが興味深そうに聞いてくる。

エルヘイムにはパッチワークというものがないのだ。テレイシアでは部屋の装飾品として飾られているので私みたいにパッチワークのハンカチを作る人はまずいないけど。

「パッチワークっていうの。テレイシアでは一般的なものよ」

「初めて見ました。違う種類の布を組み合わせるとこんな素敵な物ができるんですね」

エルヘイムでもそうだけど、他の国でも一般的に流通しているのは一種類の布に刺繍を施したものだ。

いくつかの布を組み合わせて作るのはドレスぐらいだろう。ドレスでも赤とピンクや青と水色など同じ種類の物を組み合わせて作るのが一般的。

でも、パッチワークは全く違う色や柄を組み合わせるのだ。主張の強すぎる色同士をくっつけるなど本来はしない。パッチワークでは敢えてそれを行う。

「けれどセンスが問われそうですね」

カルラの言葉にノルンは確かにと頷いてからも一度私が作ったパッチワークを見る。

「これを社交界で流行らせようと思うの。可能なら売るためのお店が欲しいわ。職人を雇って作ってもらうことになるけど販売するのは孤児院出身者」

私の言葉にカルラとノルンは難しい顔をした。

孤児院出身者が販売員として表で働く店はあまりない。

計算ができない彼らはお釣りをちょろまかされても分からないし、それにお店のものに手を出すかもしれない。信用が出来ないのだ。

それは雇う店側もそうだし、お客さん側からもそうなのだ。それが原因で客足が途絶えることにもなる。

「計算できないのなら教えればいい。彼らは生きるために必要だと分かれば必死に覚えるでしょうね。ぬるま湯に浸かっている貴族の子供なんてあっという間に抜いてしまう勢いで。それに王族が手掛けている事業よ。それだけで信用できる」

「社交界がカギとなりますね」

カルラの言葉に私は頷く。

「ええ。上手く流行らせてみるわ。貴族が通う店ならそれだけで信用は十分。貴族は表立って孤児を批判できないわ。本音はどうあれね。ノブレス・オブリージュを謳っているのが貴族ならね」

「お店の目星と職人に関する情報を集めてまいります。そちらのパッチワークは貸していただけますか?サンプルとして持ち歩きます」

「元よりその為に作ったのよ」

カルラは私からパッチワークを受け取り直ぐに部屋から出て行った。

「私は陛下に都合を確認してまいります」

「お願いね」

何かを始めるのなら必ずノワールの許可がいる。でも多忙な彼とゆっくりと話す時間はあまりないのでノルンが確認しに行ってくれた。

私は二人を待つ間にさっきとは別のタイプのパッチワークを作る。

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