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子供を手なずける最も有効的な手段。それは餌付け!
ゼブラは無理だろう。でもそれ以外の子供はいけると私は思っている。
子供たちはみんなおさがりや誰かのもらい物を着ているのかサイズが合ってはいなかった。それに補修痕も多くみられる。
まぁ、ギリギリの費用でやり繰りをしているのだから仕方がないのだろう。彼らも自分たちでできることをして孤児院の為に稼いでいる。
孤児院の子供が働ける場は少ない。身元が不明だからと、育ちが卑しいからと雇ってもらえず孤児院を出た後の子供たちは高確率で犯罪に手を染める。そうなると孤児院出身者はやはり信用できないと雇う所が少なくなり、という悪循環に陥るのだ。
そこはノワールの方でも問題として議題に上がっているらしいけど直ぐに解決できることではないし、他に優先すべき事案が幾つもある為まだまだ時間がかかる。
「カルラ、王宮内にも孤児院出身者って何人かいるのよね」
「はい。下っ端が殆どですが、陛下はとても合理的な方です。優秀かつ真面目であれば出世もできます。もちろん、その際は上司や管理職三人以上の推薦が必要となります。他の者に比べて条件は厳しくなりますが決して希望が持てないわけでもありません。現に役職を貰っている者が王宮内にはいます」
「そう」
そこまで徹底させているのは軋轢を生まない為。配属されても周囲の扱いに問題があれば長くは続かない。
周囲を納得させるだけのものが必要となる。
「行商人を呼んで頂戴」
「畏まりました」
「ノルン、カルラと一緒に商品を選んで欲しいわ」
「喜んで」
行商人はすぐに来てくれた。
「あら、テレイシアで扱っている布と糸があるのね」
赤いベレー帽をかぶった黒ひげの男がにこやかに答える。
「さすがはテレイシア王女殿下。いかにも。テレイシアは特殊なお国柄。取り扱っている布や糸の種類が帝国とはまた異なりますからうちの目玉商品になっているんです」
テレイシアの布は帝国の布よりも滑らかな肌触りをしている。その分扱いが難しく、テレイシア産の布を持ち込んでドレスを仕上げてもらおうとすれば帝国ならかなり高額になってしまうのだ。
「ドレスは無理でもハンカチやパッチワークならいけるかも。テレイシア産の布はこれだけ?他にはないの?」
待ってましたと言わんばかりに行商人は箱の中からテレイシア産の布を全て出す。ここまで揃っている行商人は珍しい。
彼はいろんな国で買い付けを行っており、彼の店で揃っていない物はないと言われるぐらいの品数があるらしい。と、後でノワールから聞いた。
「カルラ、ノルン、どれが良いと思う?いくつか買おうと思うの。選んで頂戴」
「「畏まりました」」