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運命の番?ならばその赤い糸とやら切り捨てて差し上げましょう  作者: 音無砂月
第5章 天然トラブルメーカー
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「エレミヤ様、ようこそお越しくださいました」

私は今日、孤児院に来ていた。ここはノワールから私が任された孤児院だ。

まだ婚約中だし、勉強中の身なので任される執務はそんなに多くはない。

この孤児院は私が初めて任された仕事なのだ。今日はその視察。

「院長先生、お出迎えありがとうございます。早速子供たちの様子を見たいのですけど、いいでしょうか」

「もちろんです。きっと子供たちも喜びます。こちらです」

案内された部屋にはあらかじめここにいるように言われていたのか孤児院の子供たち全員がいた。彼らは私を警戒するように見つめてくる。

小さい子は大きい子の後ろに。大きい子は小さい子を守るように前に出ている。子供たちの関係は良好のようだ。家族仲が良いのはいいことだ。

私は子供たちの警戒心を解くために床に膝を付けた。

院長先生は驚き、目を丸くする。侍女のカルラとノルンが止めようとしてきたけど制止した。

自分よりも大きい者に対して警戒するのは当然だ。しかも相手は会ったこともない人。それも他国の王女。彼らにとっては未知の生物だろう。

「私はエレミヤ。みんなとお友達になりたくて来たの。私も仲間に入れてもらえないかな?」

院長先生が固唾をのんで見守る。彼らの返答如何では不敬罪に問われて処罰の対象になると思っているのだろうか。子供たちの答えに警戒しているのが分かる。

子供たちは近くにいる者同士で顔を見合わせ「どうする?」と聞き合っている。

そこでここのリーダーみたいな存在の子だろうか。

黒髪黒目の男の子がみんなよりも一歩前に出てきた。彼は睨むように私を見る。

子供たちはその男の子に注目している。

「俺の名前はゼブラ」

「そう、ゼブラ。よろしくね」

私が手を差し出すと彼はその手を睨みつけた後私の手を叩き落とした。背後で院長先生の悲鳴が聞こえた。後で先生には胃薬を渡しておこう。

「私のこと気に入らない?」

「ああ、気に入らねぇな。お貴族様の言葉なんか信じられるか。この孤児院は前の王様のせいで子供たちがたくさん死んだ。みんなひもじくて、でも手を差し伸べてくれる奴は一人もいなかった。俺たちは親からも国からも捨てられたんだ。ここにいるのはそんな奴らばかりだ」

孤児院の建物はとても綺麗だ。建てられたばかりみたいに。

多分、ノワールが命令して建て直したんだろう。裏を返せば建て直さないといけないほど酷い有様だったということだろう。

先王の治世はかなり荒れていた。貴族の横暴も目に余る者ばかり。それを止める人間はいなかった。

ノワールは王になってまだ浅い。平民のそれも元々、警戒心の強い孤児院の子供の信頼度を得るのは難しいだろう。

「そう。私は君のことを結構気に入ったよ。物怖じしないところも素直なところも。また来るわ。これからよろしくね、ゼブラ。みんなも、またね」

私はゼブラよりも数歩後ろにいる子供たちに視線を向ける。怯えるように私のことを見てきたけど、私の笑顔に僅かだけど引き攣りながらでも笑顔を返してくれる子たちもいた。

まぁ、気長に頑張ろう。

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