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元クラスメイトとその娘たち

「しかし本当に久しぶりだね? 三嶋さん」

「はい、お元気そうでなによりです」


 レストランの外で18年ぶりの再会を果たした俺と三嶋さんは同窓会場へと戻った。先程助けた少女も一緒だ。

 女子高生らしいこの少女、なんと三嶋さんの妹ではなく実の娘らしい! 同級生にここまで大きな子供がいるというのは独身男にはなかなかの衝撃だ。

 しかも三嶋さんの子供は彼女だけではなく、他にも4人もの娘がいるというのだから驚きだ。会場の彼女達が座っていたテーブルに行くと、確かにそこには更に4人の少女達が座っている。いずれも小学生くらいだ。皆、突然やってきた母親と同年代のオッサンに困惑した表情である。


「この人はお母さんの学生時代の同級生で、加納さんというの。みんな挨拶して」


 三嶋さんに促され、まず長女らしい先程の少女が口を開いた。


「……真理です」


 一言である。まあ、ようやく名前が分かったので良しとしよう。

 「マリ」と名乗った少女はやはり女子高生らしかった。他の娘達がそれなりにパーティーらしく着飾っている中、一人学校の制服姿な彼女には。どことなくクールな美少女という印象を受ける。きっと学校では相当モテているに違いない。


「……美香」


 こちらも一言。姉に続いて「ミカ」と名乗った少女は小学校高学年位で、恐らく次女なのだろう。何やら表情や声から不機嫌さがにじみ出ているが、難しい年ごろなのかもしれない。髪を背中まで伸ばし、姉の制服に似たブレザータイプの服を着たその姿は、いかにも「背伸びしたがる子供」という感じだ。


「初めまして、三女の芽衣です。小学4年生です」


 「メイ」というこの子の印象は「しっかりした子」というものだ。髪はポニーテールに纏めていて、ぱっちり開いた目にかからないようしっかり切り揃えられている。セーラー服似のワンピースに包まれた体は年齢相応に小さいが、「宿題も家の手伝いもしっかりやってそう」というイメージである。


「……凛です」

「……蓮です」


 続いて名乗ったのは小学校に入りたてくらいの、恐らく双子の子達だ。二人は全く同じ顔立ちだが髪型が違っており、「リン」と名乗った方はショートヘアで、「レン」と名乗った方はそれより長く背中に少し掛かる位ある。二人とも人見知りしているのだろうか、名前だけ言うと俯いてしまった。


「みんな初めまして。おじさんは加納といって、お母さんの昔のクラスメイトだよ」


 お母さんの友達と名乗ろうか迷ったが、三嶋さんに倣って「クラスメイト」としておいた。長年会っていなかったし、そもそも高校当時も何度か話したというだけだ。


 自己紹介が終わると、俺は隣に座る三嶋さんに向き直った。


「しかしあれから18年も経つんだね。三嶋さんは元気だった?」

「…………えっと、はい……元気でした」


 おや?返事に間があった。何かあったのだろうか?


「……その、加納君がいなくなってから、私も学校を辞めて結婚したんです」

「へぇ、それは……」


 事情を訊いても良い話だろうか?今時高校を辞めて結婚といえば 「出来婚」 もとい 「さずかり婚」 が思いつくが、あまりそういうタイプには見えなかったからだ。ただの偏見かもしれないが。


「父と縁のある方とその、急に結婚することになって……」

「ああ、そうなんだ」


 お見合いとかそんな話だろうか。


「じゃあ今は三嶋さんじゃないんだ?」

「……いえ、先日離縁しまして、三嶋に戻りました」

「……そうなんだ。えっと、変なこと聞いちゃったかな?」

「……いえ、大丈夫です」


……ヤバい、いきなり地雷を踏んだ気がする。


「……えっと、加納君はどうしてましたか?」


 彼女は誤魔化すように聞いてから「しまった」という顔をした。俺がいじめで中退したことを思い出したのだろう。うかつなのはお互い様なようだった。少し可笑しくて笑ってしまう。


「……加納君?」

「いや、ごめん。俺は学校辞めてからしばらくフリーターしてたけど、今は自衛官やっているよ」


そう、高校を辞めた俺は世話になっていた親戚の家を出て(追い出されて)、五年間ほどアルバイトで生活していたのだが、ある時、配達で寄った自衛隊の募集事務所で、


『キミ、いいカラダしているね? 自衛隊に入らないか?』


という自衛隊広報官による怪しさ満点の誘いを受け、二等兵として自衛隊に入隊したのだ。


「自衛官ですか、それは……訓練とか大変そうですね」

「まあ、体力もそうだけど勉強も大変だったよ。高校中退だろうと関係なく勉強させられたから」


 三嶋さんとそんな会話をする間も、小さい子供達は少し居心地が悪そうだ。知らない大人達のパーティーなのだから無理もない。


 何か子供が楽しめる話題はないかと考えていると、そこに後ろから不快な声が掛かった。



「あれぇええ?そこにいるのはカノウくんじゃないかあ?」

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