表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
四章 攻める者と護る者
85/114

生と死の狭間

すこしシリアスです。

ユリアンとの話し合いから三日が立った。


大量の物資を持って昨日到着したクロッセア四天王は二人だけ。


ヴァネッサとカーティスだ。

金貨が詰まった袋を沢山持って来て。


クロッセアに迫る危機を未然に防いでくれたことに感謝すると言葉を添えて。


あぁ…成る程、俺は利用されたのか。

だが悪い気はしない。自分の意志を貫いたのだから。


付き人としてギルドからはガイのおっさんとヴァネッサのとこはメデューサの血が混じった少女、アンナが来ていた。


視線を合わせても平気になった事を驚きながらも俺との再会に喜んでいた。


他の四天王はクロッセアの維持に務めている。

商業ギルドと衛兵の長らしい。そのうち会う機会があるだろう。


カーティスとヴァネッサの二人を交えた会議は既に終わり上層部の人間、王族を含めた32人は処刑、一万二千の兵士は奴隷となることが決まった。


そのうち五百を俺は貰い受けることになったんだが、正直どう扱えばいいのか困っている。


要らないと言ったんだけどヴァネッサやギルマスのカーティスが俺に押し付けやがった。


とりあえず里の復興にでも使うか。


協議を終えると俺に預ける以外の奴隷を引き連れさっさと帰った。


戦後処理中の里の中では身元検分が行われていた。


ユリアン、アンリエッタ、セレナを伴い俺は捕虜貴族の天幕へと向かう。


一人一人並ばされて、名前、爵位などをアンリエッタが淡々と書類に纏めていく。


一番偉いやつが最初に並ぶ訳で…


「おぉ…ユリアンヌ…ユリアンヌなのか?立派に…綺麗に育ったな…余は…夢でも見ているのか…?」


「父上…愚かな事を…こんなに窶れて…いや、私は身分を捨てた身…ただの他人だ。この者を連れていけ!」


ユリアンは王を見て悲しそうにしながらエルフに連れて行かせた。


その言葉が印象に残った。エルフに抑えられながらも王は言葉を紡ぐ。


「何故ここに…ローアインも居るのか?会わせてくれ我が友に!」


「それは死んでいくあんたには関係ないことだ。次…!」


俺は冷たく吐き捨てた。


すまん、ユリアン。


だがこうでもしないとお前が壊れてしまうから。


一生を償ってお前の面倒を見よう。


戦後処理は必要なことだ。

多くの命を生かす為に俺は取捨選択をしなければいけない。


俺も魔王になった身だ、この世界を良いものに変える。


それがこれから死んでいく者達への手向けだ。


俺は固く誓った。


この世の悪意は俺が全て受け止めよう。


それが生きる希望となるのならば、俺は魔王らしく職務を果たすだけだ。



捕らえた王族は17名。

国王、王妃、長男夫婦と子供二人、長女夫婦と子供三人、三男、四男、五男、四女、五女、六女と大臣級の者たちだ。


居ないのはバーストレウスと次女のアルテシアか。

それと王国最高評議会だかなんだか知らないが廚二病患者みたいな名前の物騒な考えを持つ連中も居ないらしい。


王族の子供達には罪はないからほとぼりが冷めた頃に戻すかクロッセアで育てるか…


そこまで俺は非人道的にはなれない。

ユリアン預かりとして子供はユリアンに任せた。


「アンリエッタ、お前の家族は…?」


セレナがアンリエッタに声を掛ける。

少し暗い顔をしながらも微笑むアンリエッタ。


「いえ、居ませんでした。ですがもう…神の御元に旅立たれた様です。」


今回の出兵に異を唱えたアンリエッタは一族皆、王家反逆罪で一族全員、即刻死刑となったらしい。


俺は言葉が出なかった。


「そうか…その忠義心、しかと私が見届けた。たかが騎士爵なれど、シュラーク男爵閣下と御家族は尊敬に値する!」


セレナがアンリエッタの肩に手を置くとそう言葉を掛けた。


セレナは強いな…


「あぁ…私も愚かな王族の一員として、その忠義に礼を言おう。そして民に伝えよう。シュラーク家は民の為に戦い殉じたと。」


ユリアンも真剣な眼差しを向けアンリエッタに答える。


それが最大限のはなむけだろう。




二日後、処刑が執行された。

俺直々に全員の首を飛ばすというものだ。


仮面を被り、並べられた貴族共の前に立つ。

場所は森を抜けた平原、そこの少し小高い丘だ。


500の奴隷やエルフ、王都から噂を聞き付けた民が固唾を飲んで見守る中、俺は声に魔力を乗せ大衆に告げる。


『我は守護者、エルフと迷宮都市クロッセアを守る者なり。今ここに、愚かな争いの種を産んだ王族、そして貴族共の処刑を執り行う。異論のある者は前に出よ。我が直々にその首を跳わね飛ばす!』


静まり返る聴衆の中、一人の男が前に出る。


勇者の野郎だ…!


「俺の名前は勇者ユキヤ!守護者なんて偉そうにふんぞり返るあんたに文句がある!どうして王さま達を殺す?そんなの間違っているだろ?まず顔をーー」


意気揚々と声を張り上げ俺が間違っていると主張するユキヤ。


甘いな、甘すぎる。


見たところ十六、七の子供だ。


そんな理想でこの国が変わるわけないだろう?


まぁ、変えるのはお前だがな…


今にも俺に殴り掛かろうと近づくユキヤの前にブルースが立ち塞がる。


「ユキヤ殿、ここは退くでござる。これ以上進めば命の保証はしないでござる」


冷たく吐き捨てたブルースにそれでもユキヤは食い下がる。



「なぜ貴方がここに…!勝敗は決している。命を奪うことはないんだ!まさかあいつが貴方の主だとでもいうのか?」


ブルースは答えない。


観察し、ユキヤが動こうとすれば直ぐに取り抑えるだろう。


俺はつかつかと歩き出し王の前に立つ。


「残す言葉はあるか?」


俺は問い掛けた。


「皆のもの余は過ちを犯した!それもこれも暴走する家臣を止められなかった余の罪。生きよ!貴族も平民も同じ命!……守護者殿…最後にユリアンヌの姿を見せてくれて感謝する。これで安心して神の御元に行ける」


「…後の事は任せろ。」


俺がそう答えると王は微笑んだ。

父親の慈愛ってやつか。


ユリアンのことは俺が面倒見てやる。だから安心して眠れ。


俺は大鎌を振り下ろした。


武器の類いは初めて使うが、この鎌は魔王になった俺の魔力で造られている。


スキル【魂魄武器生成】ってやつだ


手に馴染む感覚を覚え、大鎌を振り、血を払った。



「王様……貴様ぁー!!!」


ユキヤが飛び掛かろうとするが無駄だ。


分身したブルースに取り抑えられ地面に這いつくばっている。


首元には光魔法の光剣が当てられこれ以上の抵抗をするならば振り落とされるだろう。


「ユキヤ!」

「ユキヤー」

「ユキヤ…」


三人の娘がユキヤに飛び付く。


せいぜいそのバカを抑えてろ。


俺は王妃、嫡子、その妻と位の高い者から次々と首を跳ねた。


ユキヤはその度に怒り叫ぶ。


が、段々嗚咽が混じり最後には泣き叫んでいた。



処刑終了後、俺はチトセに乗り暗い夜空を飛んでいた。


あの後、ブルースの配下のスライムが平原を掃除し、民が帰路に着く中ユキヤは膝を抱え何やらブツブツと呟いていた。


その回りには三人の娘と英雄マルス、龍殺しソフィ、暗殺者クリマ、魔導士ソルダの姿があった。


彼等彼女等の事はブルースを使い調べ上げている。


なんて事はない。

今はまだ俺の脅威にはなり得ない取るに足らん連中だ。


今はまだ…な。



俺は夜空の元適当な場所にチトセを降りてもらい先に帰らせた。


「あとでまた呼び出す。それまで少し離れてろ」


そう伝えチトセが去った後、俺は一本の木に手を着く。


堪えていた吐き気が一気に込み上げる。


それをぶちまけた。


この世界に来て俺は変わった。


人を殺した。それも何十何百じゃ効かない数だ。


だが、これから帝国との戦いもある。

更にこの手に掛ける人数は増えていくだろう。


ここで負けては駄目だ。


強くならなければ。


だから皆の前では弱った俺の姿を決して見せない。


走馬灯の様に国王やこの手に掛けた人々の最後の顔が浮かんでくる。


笑うもの、泣き叫ぶもの、様々だ。


袖で口回りに着いた吐瀉物を拭う。


「はぁはぁ…うおおぉぉぉぉお!!」


自分の弱さも捨てる。


冷徹な【魔王】になる。


後は覚悟の問題だ、この世界を変える覚悟が。

ちょっと描写が過激だったでしょうか…

ですが書いておきたいと思い、急遽差し替えで書きました。


ソラトは決意しました。腐った世界を変えるため全てを壊す…と。


ユキヤは決意しました。争いを減らし悲しむ全てを守る…と。


ここから二人の運命は交差していきます。



次回からコミカル調に戻ります。


お読み戴きありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ