回復、いざ上層へ!
ソラト視点です。今年は明日まで投稿します!
知らない天井だ。辺りを見回すとモネとプルメリアがスースー寝息を立てている。二人とも全裸でモネは発展途上の崖を、プルメリアは完成されたメロンを二つ携えていた。
ゴクリ…!
俺も全裸なんだけどね。マイサン、おはよう!今日も朝から元気だな。このやんちゃ坊主めっ!はっはっは。
冗談はやめといて
現状を整理しよう。俺はモネとプルメリアを連れて魔族の…そう、シュザークだ。シュザークと戦って、魔力がなくなるくらい魔法を使って何ヵ所か傷を作って血が足りなくて倒れたんだったな。そんで気を失って…
「…んんぅッ…」
「あ、ソラト!おはようなの!」
寝起きが良いのかプルメリアは満面の笑みを浮かべて俺に挨拶をしてくる。モネはまだしばらく起きそうにないかな。
「あぁ、おはよう。それでこれはどういった状態なんだ?」
俺が全裸であることを言及するとプルメリアはぽかーんとした顔をした後、口を開いた。
「ソラトの治療の為なの!でも懐かしいの。プルも小さい頃パパとママと裸で寝てたから。」
「そ、そうか。良かったな!」
「良かったなの。でもソラトのこれはパパのより大きかったの。凄いの!」
俺のマイサンをまじまじと見つめる見た目は最高の美女。うっ、駄目だマイサン!変な妄想は止めよう。
「うんっ、その話は止めようか。とりあえず何か着るものはあるか?ずっと裸ってのも変だしな。」
「昔パパが着てたのが何着かあるの。えっと…あ、あったの!」
プルメリアががさごそとクローゼットを漁ると何か王様が着てそうな毛皮のコートとシャツ、ズボンが出てきた。パンツは無いようだ。
仕方なく部屋の中に干してあった自分の下着を着けるとプルメリアに手渡された服を身に付ける。隅に有った姿見を見ると何か服を着ているというより着られてるという印章を受けた。
「ソラト、似合ってるの!若い頃のパパを見てるみたいなの!」
「そ、そうか。ありがと!」
プルメリアもいつの間にか服を着ていた。日本の感覚でいうとゴスロリ服みたいな黒いやつだ。一部違和感を覚えるが見るには眼福なので追及はしない。ごっつぁんです!
「んぅっ…?あ、お兄…ちゃん?」
「おう、おはようモネ!」
目を擦りながら起き上がるモネの側に立ち頭を撫でてやる。ちっさいサクランボが二つちらちら見えるが今さら気にすることもないのでモネに微笑んだ。
「お、お兄ちゃんおはよう!身体はもう大丈夫なの?立ってて平気?」
「おう、もう全快だよ。助けてくれたんだよな?ありがとう。プルメリアもな!」
「運んだのはジビエなの!だからソラトも後でジビエにお礼を言うの!」
ジビエ?なんだ、その美味そうな響きは?確か猟で捕った猪や鹿、熊なんかの肉をそう言うんだっけ?
「そのジビエさんとやらは知らないが後できちんとお礼を言うよ。とりあえずモネ、服を着てから広間においで。プルメリア、お腹空いちゃったよ。」
「了解なの!ご飯の用意をしとくの!」
「分かりました!私も準備を整えてそちらに向かいますね!」
ビシッと敬礼したモネを見てプルメリアもそれを真似ていた。飯を食べたら早速、上を目指さないとな。
プルメリアが用意してくれた朝食を食べながら戦闘のことについて話し、モネ達には俺があの後どうなったかを聞いた。
「ソラト、あちこちから血を流してて大変だったの!美味しい血が沢山地面に流れてて…勿体無かったの!」
そっちかーい。まぁ、ヴァンパイアの彼女からすれば血は酒やデザートみたいな嗜好品という感覚なんだろう。この前聞いた話だがあまり吸いすぎると酩酊状態に陥り暴走するらしいので吸いすぎは禁物らしい。
「そ、そうか。それで俺は何日間寝てたんだ?」
「二日くらいだよお兄ちゃん!」
どうやら二日も俺は眠ったまま目を覚まさなかったらしい。
「プルの血を飲ませて体温で温めたから完治しているはずなの。ヴァンパイアの子供が風邪や熱で寝込んだら皆そうしていたの。懐かしいの。」
プルメリアが遠く懐かしい日のことを思い出しながら呟いた。幼い頃にそういう経験が有ったのだろう。
「さて、食事も済ませたしそろそろ上層へ向かおうか。ジビエさんとやらにも挨拶しなくちゃいけないし。」
「ジビエはトライデントホーンの上位種なの!だからさんはいらないよ、ソラト!」
「なるほど、人ではないのか。でも俺とモネを乗せて密林を移動したんだろ?相当大きいんじゃないか?」
なんとなく人だと感じていたがどうやら魔物らしい。更に人を二人乗せて長距離を移動出来るのだからかなり大型じゃないのか?と思った。
「直接会った方が早いの。ジビエ、こっちに来るの!」
プルメリアの呼び掛けに答えたのか扉を潜って中に入ってくるジビエ。なるほど、大きさとしては全長二メートルの体高一・八メートルほどだろうか。普通のトライデントホーンより一・五倍ほどの大きさがある。白かった毛皮は輝きを持っており銀色に光っている。体重は見た感じ俺の倍は確実にあるな。
「君がジビエか。ここまで運んでくれてありがとな。」
側面の毛皮を撫でながら礼を言うと気にするな。とでも言う風に首を振るった。意思の疎通は出来るようだ。
「ジビエにソラトとモネが乗れば移動は早いの。プルは飛んで行くから準備が出来たら声を掛けるの。」
「本当に良いのか?思い出の家なんだろ?」
「パパとママも地上で暮らした方が安心してくれるの。それにお墓を立ててあげたら喜ぶの。この魔石はソラトにあげる。」
プルメリアが出したのは赤と金で縁取られた二つの魔石だった。真祖吸血鬼王と王妃の魔石。これ一つで金貨五千枚の価値がある。だが売るような真似は絶対にしてはいけない。これ自体がプルメリアの両親なのだから。
「わかった。地上に戻ったらクロッセアに屋敷を買ってその庭にプルメリアの両親のお墓を立てよう。それまでこの魔石は俺が預かっておく。」
「ありがとうなの。他に持って行きたいものがあればなんでも持っていっていいの!ソラトのためだもん!」
「それじゃあ、遠慮なく。魔道具やソファー、テーブル、ベッドは持って行こう。なるべく物は残さずにな。いつ帰ってこれるのか分からないからな。本当はブルースが居りゃ家毎持って帰れるんだが…」
「うん!でもどうやって?あ、マジックバッグがあるんだよね!」
モネが思い出したようにそう言った。俺は頷くとプルメリアが持ってきたものを順番にリュックへ積めていく。モネもプルメリアを手伝い始めた。それから30分ほど掛けて家中の家具や衣類など使えるものは片っ端から用意してプルメリアの家を後にした。
ブルース、セレナ!皆、待っててくれよ。必ず会いに行くからな!




