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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
二章 求める者と授かる者
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セレナの初デート大作戦

前回に引き続きセレナ視点です

黒い毛並みの巨馬、ハヤセに跨がり私は大通りを行く。道行く人々の好奇の眼差しを受けながら進むこと五分。一軒の食事処の前でハヤセは停まった。


「こちらが指定された場所となります。ごゆっくり楽しみ下さいませ」


ハヤセはそう言うと屈んで私を降り易くした。ありがとうと礼を言いハヤセの背から飛び降りようとしたがドレスを着ているのを思い出しゆっくりと降りた。ハヤセはそのまま何処かへ歩き去ってしまった。



扉を開け中に入るとソラト殿の友人、ユリアンが声を掛けてくる。ここは彼の店だったのか。そういえば前にアンリに聞いたことが有ったような…


「いらっしゃいませ、セレナ卿。ソラト殿が奥でお待ちです。」


普段の冒険者然とした話し方ではなく丁寧な口調で私を迎えた。ユリアン殿が貴人として扱ってくれたのでそれ相応の口調かつ失礼のない程度で返すことにした。



「う、うむ…案内をお願いする。」


そのまま奥へ進むと二階の門部屋に案内される。ノックをすると純白の正装をしたソラト殿が座っていた。


「よ、よぉ。待ってたぞ?」


私はしばらく立ち尽くしてソラト殿の姿に見惚れていた。


「おい、セレナ。どうかしたのか?あ、この格好か…ユリアンに無理矢理着せられてな…変か?」


「そんなことない!すごく、…すごく似合ってる!」


華美な装飾はないがソラト殿の魅力を引き立てるその衣装は私が幼い頃から夢見た王子様の様な姿だった。


「お、おう、そうか…。そんなとこで立ってないで座ったらどうだ?」


「あ、ああ、失礼する。」


私が椅子の前に立つとやりとりをニヤニヤしながら見ていたユリアン殿が椅子を引いてくれる。それに軽く礼をしながら椅子に座るとソラト殿が注文を始める。



「食前酒とつまめるものを頼む。料理は30分後くらいから出してくれ。」


「かしこまりました。」


友人同士なのにそんな会話をしていることに私は何かが可笑しく思えてきてクスリと笑ってしまった。ソラト殿も命令口調に慣れてないのか何処か辿々しい。


「あー、酒が来る前にこんなこと言う気はなかったが気が変わった。ドレス似合ってるぞ?」


うんうん、と頷きながらソラト殿は私の姿を見ている。恥ずかしくなり顔が赤くなっていくのが分かる。王都に居た頃、似たようなことを言ってきたバカ貴族は何人か居たがここまで感情が昂ることはなかった。


「へ、変じゃないかな?」


「俺がセレナの為に見立てたドレスだぞ?セレナに似合わない筈がないじゃないか!」


「あぅ~…動揺させるような事を言わないでくれ…!恥ずかしいじゃないか…!」



私は顔を覆い隠し照れを隠した。ソラト殿の真っ直ぐな黒い瞳を見ていると心臓が飛び出そうになる。


「セレナ、今夜は楽しんでくれ。そんなに緊張しなくていい。いつも通りで良いからさ…」


「お待たせ致しました。食前酒とオードブルになります。」


ソラト殿の言葉を遮り、ノックをしながら給仕が配膳台を押して入ってくる。


オードブルの皿にはクラッカーに冷製の料理を乗せて食べるカナッペや薫製チーズ、鴨のローストが乗っていた。


どれも貴族の晩餐会でしか口にしたことのない一品ばかりだ。


時間が経つ毎にどんどんと料理が運ばれていく。私は緊張のためか酒ばかり進んでしまう。メインを食べ終わった頃もソラト殿は余裕の表情をしていて何だか悔しい。


「ソラト殿は私の事をどう思ってるんだ?」


不意に口を出た言葉。ソラト殿の余裕を崩したくて口を突いてしまった私の本音。ソラト殿は少し困った顔をしたが口を開く。


「多分セレナが思ってるよりは真剣に考えてるよ。」


「ソ…ソラト殿…?」


「おいおい、あれだけ俺に好きって言ってきて泣くバカがいるかよ。ちょっ、お前泣いてる?」


ソラト殿に指摘され自分の頬を伝う涙に気付く。そして同時に思う。私が求めていた理想はこんな近くにあったんだ、と。幼い頃から夢見ていた王子様が目の前に現れたんだ、と。今だけは騎士の職務を忘れ一人の女としての幸せを噛み締めよう。


「ソラト殿、お慕い申しております。」


「お、おう」


「結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」


「あー、それなんだがもう少し待ってくれないか?時期が来たら改めて俺から言わせて欲しい。」


ソラト殿はバツが悪そうな顔をしてそう答えた。涙が零れドレスを濡らす。折角ソラト殿から頂いたものなのに…。


「セレナ、少し目を瞑ってくれないか?」


「はい…」


私が目を閉じるとソラト殿が立ち上がる気配がした。そのまま私の背後に立ち何かをしはじめた。小さな話し声が聞こえる。


「目を開けて良いぞ?」


「これ…は…?花か?」


視界に広がる色とりどりの花。赤青緑黄白紫沢山だ。ソラト殿が口を開く。


「ここには99本の花がある。」


「99本?」


「そう。そしてこれで…【アイシクル・メイク〈フラワー〉】100本だ。」


「すごい…!」


ソラト殿が魔法を使い一本の氷の薔薇を作り出す。新しい魔法だろうか。私はただただ感心するばかりで幼稚な感想しか出なかった。


「セレナ、ふぅ……俺と付き合ってくれ!」


そして突然の不意打ち…!今なんて…?!


「え…でも、時期が来たらって…?」


「今がその時期だ。まだ出会って一ヶ月くらいだけどこれからもお前と一緒に居たい。俺と付き合ってくれないか?」


ソラト殿は膝を着き一つの木箱を私に捧げるような形で差し出す。


「……」


「嫌か?」


「違うんだ…、嬉しすぎて言葉が出ないんだ。ソラト殿、こんな私でも良いのか?」


「バカ野郎、お前しか居ないに決まってんだろ?他の誰かじゃだめなんだ。俺の傍に居てくれるか?」


「はい……!」


私は泣きじゃくりながらソラト殿の手を包み込んだ。ゴツゴツした男の人の手。だけど温かくてソラト殿の体温を感じられて幸せだ。


「これ、受け取ってくれるか?」


改めてソラト殿が木箱を私に渡す。短剣ほどの大きさで緻密に組まれている。


「これは?」


「セレナをイメージしてベニートのおっさんに作らせた特注品だ。開けてみろ。」


箱を開けるとネックレスが入っていた。真ん中に大きなエメラルドが嵌められており、その周りに九つの小さなダイアモンドが散り嵌められていた。


「周りのダイアモンドはセレナ隊の皆、その中心がセレナだ。どうだ?気に入ってくれたかな?」


「ソラト殿…!ありがとう…。私はソラト殿に与えられてばかりだな…。」


今着ているドレスも花もこのネックレスだってソラト殿から貰ったものばかりだ。私はは与えられてばかりでソラト殿に何も与えられないのかな?


「そんなことない。いつもセレナが居てくれるから俺はダンジョンでも無茶が出来るんだ。これからも頼むぞ?」


ニヤリと笑い私の頭を軽く撫でるソラト殿。温かくて優しい手付きでブルースやカミツレがもっと!とせがむのも分かる気がする。



「ソラト殿…!」


「その殿ってのはやめろ。一応…恋人なんだからさ」


顔を赤らめ頬を掻くソラト殿、いやソラト。あらゆる仕草が可愛く思えてくる。


「うん…ソラト…!」


「セレナ…!」


自然とお互いに近付き始める。その距離あと五センチ…。どちらからともなく唇を寄せ合い…重ね



られなかった。突然扉が開かれると同時にブルース、カミツレ、ティア、チトセが現れる。その後ろから隊員達がぞろぞろと群れを成し続く。突然の事にソラトと私の頭がぶつかってしまう。


「イテッ!」


「つぅッ…!」


「セレナ、これ以上の蛮行は許さんでござる。まだ主殿の口付けを授かるのは早いでござるぞ!」


ブルースがそう大声で怒鳴るとティアとチトセ以外うんうんとうなずいた。


「だが私達は恋人になった…」

「だからでござる。今口付けをしたら貴重感がなくなり毎日の様にされたらこっちが迷惑でござる!拙者…達も主殿からご褒美として口付けを所望する!」


今度は全員が頷く。カミツレがいつの間にかティアとチトセの後ろに回って圧を掛けていた。


「んな、無茶言うな。」


「でも主殿…!」


「キス以外なら俺に出来る限りしてやるからそれで我慢しろ。」


「主殿…!ならば拙者、同禽を所望するでござる!」


「ブルース、ドウキンってなんだ?」


「…ん、一緒に寝ること。」


「おー!オレもソラトと一緒に寝たいぞ!」


「わらわはすうぃ~つが食べたいぞ、人間!」


「…私はソラトの魔力がいい。」


「あぁ、分かった分かった。だが今夜はダメだ。ていうかお前らどうやって中に入った?」


「普通にユリアンが通してくれたでござる!」


「隣の部屋でメシも出してくれたぞ!オレは肉しか食ってないけどな。」


「わらわも甘美な時間を過ごさせてもらったぞ!」


「…魚、美味しかった。」


皆各々の感想を述べていくとみるみるソラトが落ち込んでいった。


「支払いはどうした?」


「もちろん主殿持ちでござる!」


「あの、ソラトさんごめんなさい。私は止めたんですけど皆行くと聞かなくて…半分私が払いますのでどうか…」


アンリが頭を下げて謝る。だがその口に拭き残しがあったのを私はしかと、この目に焼き付けた。


「あー…まぁ、仕方ない。とりあえず隣にこの人数入れるんならそっちに移動するぞ。あと、支払いは俺が全部する。そのかわり明日からしっかり稼ぐぞ?」


「「「おー!」」」


こういう時だけ息がぴったりなのはなぜだろうか?人間、アメとムチが必要だと言うが正にその通りだろう。


その後、隣に移動した私達はモンスターレースを観戦した。私を迎えに来たハヤセも出場しており、私とソラトはハヤセに賭け見事勝利した。



だがそこで終われば良かったものの、終わらないのが我々だった。第二戦にカミツレが大狼に変化して参戦し多くの観客を涙と狂乱の最中へ陥れる。


カミツレの参戦に対抗心を燃やしたチトセが龍化しレース場は滅茶苦茶になりその日は解散となった。


ソラトはレースの間中終始笑顔だった。私もソラトの笑顔に連られて笑顔だったという。


その日はそのまま近くの酒場へ移動し夜通し飲み明かした。ソラトはずっと楽しそうで酔い潰れるまで飲んでいた。途中ソラト殿が氷魔法によるパフォーマンスを見せてくれたりと大層盛り上がった。


尚、翌日ユリアン殿からレース場の整備費を含め、多額の請求がソラトに届いたのを私は後から聞かされた。

今回どうしても書きたかった話が書けて嬉しく思っております。正直ここでくっつける予定はなかったのですが、ノリと勢いって怖いですね(ガクブル


次回からダンジョン探索。セレナ隊の面子、全員名前出すかも?!です。


尚、今話で10万字突破しました。これからも応援よろしくお願いします!

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