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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
二章 求める者と授かる者
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ティアとセレナ



ティアを連れヴァネッサの手配してくれた馬車にティアの私物を積み込んで宿へと戻る。道中、普段あまり話さないカミツレが珍しくティアに語り掛けていた。


「ティア、オレが先輩。だからティアの面倒見る。何でも教える。安心していい」


「ん…。」


「緊張してるか?大丈夫だ、オレがいる。だから安心する。」


「ん…。」


話が噛み合ってるのか疑問だがカミツレが楽しそうなので俺とブルースは和やかに見守った。馬車が宿の前に停車して降りるまでそんな微笑ましい光景を楽しんだ。


話は変わるが馬車に乗り込んだのは良いが数百メートルの距離で馬車に乗る意味はあるのだろうか?歩けばいいんじゃ…いや、折角のヴァネッサの計らいだ。有り難く受け取っておこう。



宿の店員さんに一人増える事を伝えると前金で数日分払い鍵を受け取り自分の部屋へ入る。


部屋に入るとカミツレがベッドにダイビングしてティアに


「部屋に入ったらまずこうする。ティアもやってみろ」


とか言っているがそれを無視したティアは俺の袖を引っ張り目で何かを訴えている。


「どうした?」


「お腹…空いた。」


子供か!まぁ仕方ない。何か食堂で用意してもらうか。


「わかった、今下に行って何か作ってもらうから待ってろ。」


「違う。魔力欲しい。氷か水の魔法」


ん?魔法を吸収するのかな?


「んと、一応氷魔法は使えるが攻撃魔法しか使えんぞ?しかも手に纏ってガントレットみたいにしか出来ない。だから形作って出すのは出来ないんだ。」


まぁ、出来ないこともないが原理が全く分からない。前にセレナ隊の人に火の魔法を見せて貰ったが全く理解出来なかった。


「…大丈夫。私が教える。」


ティアに腕を掴まれ魔力を流し込まれる。ん?何か出来そうだぞ?


「…魔法は心、魔法は鏡。使い手のイメージが大事。アイスボールって唱えてみて。ゆっくり魔力を注いで…」


「鏡……よし、《アイスボール》」


『氷魔法_放出系―アイスボールを会得しました。以降自由に発動します』


おっ、久々に電子音が!


言われた通りに唱えると魔力がごっそり減る感覚に陥る。すると目の前に俺とあまり大きさが変わらない大きな氷の塊が球状で出現した。



やべ、気ぃ失いそう…


「主殿、大丈夫でござるか?主殿ーっ!」


あ、ブルースがこっちに気付いて駆け寄ってくる。忠心厚い獣魔を持ててボカァ(僕は)幸せ者や…。




「ブルース大丈夫。…魔力込めすぎただけだから。だからゆっくり魔力を注いでって言ったのに。…仕方ないな」


「分かったでござる。拙者は向こうで座禅でもしてるでござる。何か有ったら呼びつけてくだされ」


ティアとブルースがごにょごにょ何か言ってるのが聞こえる。次の瞬間氷塊が一瞬でなくなった。かと思いきやティアが大人の姿に変わった?どゆこと?


「…今から魔力を戻す。少し我慢して」


ティアの成長した美しい顔が目の前に近付く。その時ノックが聞こえる。


「ソラト殿戻られてるか?少し探索の事で相談があるんだ。開けるぞ?」


扉が開いた音がして誰かがはいってくる。(あれはセレナの声か?)が、ティアの細い手に頬を掴まれ動けない。そのまま目の前に迫るティアの整った顔。


ティアの柔らかい唇が俺の唇に触れる。そこで俺は意識を失った。





訳ではなく、ティアからの魔力供給で何とか踏ん張り気絶した振りをする。セレナの絶叫が聞こえる。



「きぇぇぇえああぁぁあ!私の、私のソラト殿の唇を奪うとは、貴様!ただでは置かんぞ!名を名乗れ!」


いえ、貴方のものじゃないです。


「…勘違いしてる。魔法を教えてただけ。魔力が枯渇したから供給をしてた。あと私はティア。雪妖精族で色々あってソラトに買われた。ソラトのものはこっち。」


いや、まぁ…否定は出来ないか。誤解を招く言い方だけはやめてほしい。せめて仲間って言ってくれたほうが良かったかな。



「だが、い、いきなりせっ、せっ、接吻などおかしいではないかっ!」


「私のは医療行為だと言っている。…不平等だと思うなら貴方もすれば良い。…ソラトは気絶している。今がチャンス」


ちょっ、おいー!なんでそうなるんや!セレナは何かティアの口車に乗せられた様で乗り気の様だ。



「ふ、ふむ…。まぁ、ソラト殿の異に反するとは思うが仕方ないな。私が躓いた先にソラト殿の唇が偶々有っただけ…うん、イケる!イケるぞ!」


説得されてるし!流石チョロインや!


ちょっ、誰か止めて!ブルース先生、カミツレ先輩ー!


段々近付くセレナの気配。これはまずい…まずいぞ…?いや、役得なんだが…ちょっと違うんじゃないか?そう、やっぱり俺的には段階を踏んで…ってヤバイ!気配が近いぞ!いつのまにか気配察知が使えるようになったんだ俺!


常時発動パッシブスキル_気配察知を会得しました》


今でしたー!なんでこんなときに覚えるの?いや、便利だけどさ!そんなことよりもう時間がない!どうする?


目、開けちゃう?開けよう!よし、ちょっ!セレナの顔が目の前に!唇尖らせて目瞑ってる。ピンチだけどチャンスだな。


ここは!秘技、寝返りだ!


うん、柔らかい感触が頬に当たります。有り難うございます。


「むぅ…避けられたではないか…!ティアとやら、顔を抑え付けてくれないか?」


「…銀貨二枚」


ティア渾身の請求が来た、渋れ!渋るんだセレナ!


「よし、払おう!」


圧 倒 的 即 決…!

ちゃりんちゃりんと音がして支払われたようだ。


なんか柔らかいものに顔を挟まれてる様な感覚がする。この匂いはティアか?優しい香りがする。


もう、めんどくせぇ…起きちゃえ!



「うっ…あれ、ここは?宿だよな…確かティアに氷をねだられて…それから記憶がない…あれ、セレナどうしたんだ?」



我ながらわざとらしい演技だがセレナなら騙されてくれるだろう。チョロインだし。うん、顔が真っ赤だ!イケる、イケるぞ!ちなみに俺の頭を挟んでいたのはティアの太ももでした。南無三!


「…ソラトが気絶した振りをしてから三分四十五秒しか経ってない。その間この人をからかってた。」


あ…バレテーラ…。だが、俺は負けないぞ!ここで反抗したらみっともないからここは話題を変えよう。


「よぉセレナ。そんなとこで突っ立ってないでこっち座れよ?ん?少し様子がおかしいぞ?体調でも悪いのか?」


「そ、そんな訳ないだろ?ソラト殿が倒れたと聞いて心配して今!そう、今駆けつけたのだ。だが、無事で良かった。うん、それじゃあ私は部屋で待機しているからな。」


そういって部屋から出ていくセレナ。よっし、とりあえずセレナは何とかなった。次はティアだな。


ちなみにブルース先生は部屋の隅で座禅を組んで居られた。そりゃ気付かないわな。逆にその集中力がすごい…!


カミツレ先輩はお昼寝ですか?夜、寝れなくなっちゃうよ?


「ティア、そこに座ってくれ」


「…ん、分かった」



大人しく指示した場所に座るティア。素直でよろしい。



「とりあえずセレナをからかったのは後で謝っておけ。それと何故気絶が嘘だと分かってたのに助けてくれなかった?それに接吻したのは何故だ?」


キスって言っても伝わるか分からなかったので一応接吻って表現した。まぁ、意味は伝わるだろう。


「…分かった。それは違う。私のは医療行為。魔力枯渇で気絶しそうになったソラトを助ける為。そもそもキスは愛する者同士がするもの。私たちは今はまだそんな関係じゃない。それに私が助けなくてもあのセレナって人はソラトにキスは出来なかったと思う。初めて会った人だけどそんな卑怯な事をする人じゃないから。」


ん?医療行為?まぁ、魔力が戻ってきたのは分かってるんだが…あのチョロインでクッコロさんがそんな清廉潔白に見えますかね?俺、この数日間で何回か襲われかけたんだけど……。まぁ、見た目だけはそうか。


「もしかして治癒魔法が使えるのか?」


「…さっきからそう言っている。説明すると私達、雪妖精族スノウフェアリーは過酷な環境で育つ。生きる為に集落を防衛するため戦闘を行う。私は幼い頃、攻撃魔法が使えなくて周囲から迫害されて育ってきた。雪妖精は攻撃魔法が使えて初めて成人と認められる。私は膨大な魔力はあったけど使い方が分からなかったから。……ある日集落が魔物に襲われて父と母が亡くなったから生きるため魔法を磨いた。それで覚えた魔法。」


ん?話が見えない…?両親を亡くして生きるために魔法を鍛えたってことか。ヴァネッサにも少し事情は聞いたけど、店に来た当初は全く話さなかった様だ。誰とも接さず心を閉ざしていた段々心を開く様になってきて会話をする様になったと聞いている。


「そっか、責める様な事言って悪かった。出来れば俺にも治癒魔法を教えてくれないか?」


「…教えるのは可能。だけど素質による。これが私の一族に伝わる秘伝書。これで魔法を学んだ。」


「それでも良いさ。少しでも可能性があるならやれるだけやってみるよ、改めてこれからよろしくな?」


「…出来る事は限られている。けど、全力を尽くす。」


全く表情が動いてる様には見えなかったが少し微笑んだ様に見えた。本当に数ミリだけしか動かないので分かりづらい。だけど少しだけティアのことを理解することが出来た気がした。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


「知っている人も居ると思うが雪妖精のティアだ。これから俺達の仲間としてやっていく。皆仲良くする様に!特にセレナ!」


「…雪妖精のティア。これからよろしく」



夕食時、セレナ隊の面々にティアを紹介する。隊の面々は暖かく受け入れてくれた。ただし、セレナを除いて…そっぽを向き、一度もティアを見ようともしない。何とかしなければ…


そんな風に思っているとティアが飲み物を持ってセレナにに近付く。


「おい、ティア!」


呼び止めたがそのままセレナの正面に行き声を掛けた。


「何の様だ?」


「セレナ、さっきはからかってごめんなさい」


「ふん…別に気にしてない。それよりあっちに行ったらどうだ?皆お前と話したがっているぞ。」


「セレナは気にしてなくても私が気にする。だから謝る。これから一緒に生活する仲間。円滑な関係を結びたい。」


「ティア…お前…」


俺は言葉が出なかった。そこまでこれからの事を考えてたとは思ってなかった。俺はティアに助け船を出すことにした。


「セレナ、いつまでも臍曲げてないでお前も謝れ。ティアも悪気があってしたわけじゃない。……そうだな、俺も謝ろう。セレナに対してこれまで心の整理がついてなかったがそろそろきちんと向き合う時期だ。今度埋め合わせに…その、えと…デート……でもするか。」


「ソ、ソラト殿…?それは本当にござるか?」


テンパりすぎてブルースの侍語が感染パンデミってるセレナ。まぁ、そんなとこも可愛げある…か。


見た目は美人だしな、一緒に居て楽しいのもある。それは認めよう。


今まで不誠実にセレナと付き合ってきたが丁度良い機会だ。一度ちゃんと向き合ってみるのも悪くないかもしれない。


「……明後日の夜、予定空けとけ。二人きりで食事にでも行こう。」


「ひゃ、ひゃい…!」


涙ぐむセレナ。隊員たちにやりましたね!とか隊長ずるいでござる!とか言われてるけどこれで何とかいつも通りに戻ってくれるだろう。そう思いたい。あと、ブルースさんや、貴方はずるくないだろ?寝るときも一緒なんだから


「とりあえずティアにお前も謝っとけ。それで仲直りして終わりだ。良いな?」


「はい、旦那様!ティア、臍を曲げて拗ねてすまなかった。大人気なかったな」


「ん、大丈夫。これからよろしく」


まだ旦那様じゃねえよ。まぁ、これで解決したか。食事を済ませてさっさと部屋に戻ろう。


………デートって何処行けば良いんだ?とりあえず、明日朝イチでガイのおっさんとカインのおっさん、あとユリアン辺りに聞いておこう。


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