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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
二章 求める者と授かる者
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涙は大切な日にとっとけ


翌朝、宿のベッドで目が覚める。


少し飲み過ぎたかな…頭が痛い。水、水はないのか?


起き上がろうとすると右にブルース、左にセレナ、股間の上にはカミツレの頭があった。


どういう状況?!セレナとカミツレは全裸だし、俺も半裸なんだけど?!


と、とりあえず落ち着こう。ゆっくり、捕まれてる腕を抜いてカミツレの頭の下には枕を入れて毛布を被せる。


はふぅ…終わった。少し取り乱したが女性経験がない訳じゃないし、これくらいで焦ってたら仕方ないよな。


水差しからグラスに水を注ぎ一気に流し込む。調子に乗って飲み過ぎたな。あー味噌汁飲みてえ…



「んんぅ…主殿?」


「おう、ブルース。おはよう」


「おはようでござる…主殿は朝に強いでござるな」


目元を擦って舌足らずな口調で挨拶をしてくるブルース。


「あぁー…酒には弱いがな…ブルース達が運んでくれたのか?」


グラスに水を注ぎブルースに手渡ししながらそう尋ねる。


「そうでござるよ。主殿はかなり飲まれてたのでアンリエッタ殿と一緒に拙者が運んで来たでござる、大変だったでござるよ?セレナが酔った勢いで夜這いに来たり、カミツレが寝ぼけて__」


「んー、呼んだ?」


「んんっ、おはよう。ソラト殿、ブルース、カミツレ」


カミツレが寝ぼけて何したのか気になるが二人が目を覚ましたのでうやむやになってしまった。個人的にはすごく気になるが今日は早くから行動することになっている。俺は宿に併設されている風呂へと向かうことにした。それと…セレナ胸、小さいな…だがモデルみたいなバランスの良い体つきをしている…やめよう、俺の欲望がこんにちわをしてきたので無心で風呂に入ることにした。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


風呂から上がり部屋へ向かう、おっと!


ここで俺が読んでたラノベでは鈍感系主人公はノックを忘れて入るとヒロインが着替え中なんてフラグが立つが俺はそんなヘマしないぜっ!


ちゃんとノックをして着替えてないか確認をして了承を得た俺は扉を開ける。


「さぁ、好きなだけ見ると良い!」


セレナが全裸で両手をこちらに向けてました。俺は無言で扉を閉めてそそくさと一階の食堂へと向かった。


しばらくして着替えてから降りてきたセレナとブルース、カミツレが食堂にやって来る。俺は無視して水を飲んでいると気付いたのか、こっちにやって来た。


「ソラト殿、ひどいではないか。あまりの態度に少し濡れてしまったぞ…はぁはぁ…」


いや、ひどくはありません。朝っぱらから暴走しすぎだろ、この人。


「今はそんな気分じゃない」


適当にそう返して店員にパンとスープと塩漬け肉とサラダのセットを人数分頼み待っているとアンリエッタさん達が食堂にやってきた。


軽く挨拶を交わし料理が来たのを見計らって俺は今日の予定を話すことにした。



「さて、食べながら聞いてくれ。この後だが俺とブルース、カミツレは昨日行った二十七階層で訓練するがセレナ達はどうする?一緒に行っても大丈夫だとは思うがオークが出るからな…どうだろう?」


「待ってくれ、それも話し合ったんだがある程度従士たちが育つまではアンリエッタとシアに任せて私はソラト殿と共に行くぞ。」


話し合ってたのか。じゃあ行動は決まったな。



「主殿、拙者に意見があるでござる。まずは主殿の装備や人数分の松明、ロープなどを買っておいた方が良いと思うでござる。何かあってからでは遅いゆえ」


おっ、そうだな。良くできました。後で頭を撫でてあげよう。ジャージもあちこち解れてきてるからそろそろ衣服を買わないとな。鎧も必要だろう。


それから意見を出し合いながらの充実した朝食を済ませそれぞれ買い出しに出掛けた。まずは俺の鎧か。あまり重くないのが良いんだが…おっ、どうやらアンリエッタさんが知り合いの武具屋に案内してくれる様だ。大通りから逸れて、てくてく歩く。十五分くらい歩いた先に辿り着いたのは鉄を叩く音が響き煙突からはもくもくと煙が上る鍛冶屋だった。


「なんだ、来やがったか!あん?客か…お前、アンリエッタじゃねえか」


扉を開けて中に入ると120センチくらいの髭もじゃなおっさんが面倒臭そうな顔してカウンターに肘を着いていた。だがアンリエッタさんを見掛けると態度を変え立ち上がり嬉しそうにしている。あれがドワーフか。ゲームで見たのとそのままだ。すげー!


「お久しぶりです。ベニートさん、昨日クロッセアに戻りました。」


「おうおう、見ねえうちに別嬪さんになりやがって!ガイには会ったのか?」


「ええ、ギルドで。昔話はまた後程。今日はこちらの方にベニートさんの武具を見繕って欲しくて参りました。」


「ああん?なんだ、他にも居たのか。」


ベニートと呼ばれたドワーフは俺を見るとさっきまでのテンションを無くし一気に面倒臭そうな顔になった。さっきからいましたよ…



「初めましてソラトです。」


笑顔で手を差し出す俺。



「けっ、男と手を繋ぐ趣味はねえ。適当に持ってくるからそこで待ってろ」


こんにゃろー…我慢、我慢だ俺。こんくらいで腹を立ててたら紹介してくれたアンリエッタさんの顔を潰すことになるからな。うん、俺は大人だからな。


「カミツレ、主殿の顔が怖いでござる」


「ソラトはたぶんトイレに行きたいんだよ。オレ分かる」


「なるほど、流石でござるなカミツレ」


流石じゃないよ。てかそんな俺の顔怖いか?


「おらよ、適当に持ってきたぞ。好きなの選んで金置いてさっさと帰れ」


イラッ…我慢、我慢だ。とりあえず目の前に置かれた防具を見る。俺から見て一番左端から革鎧、革と金属の合成鎧、銀色の金属鎧、真っ黒な金属鎧、金ぴかの鎧と種類が様々だ。適当に銀色の鎧を手に取る。思ったよりすげー軽い!


「それはミスリルと鉄の合成鎧だ。価格は金貨二枚」


うへー、かなり高い…てか異世界金属の代名詞、ミスリルさんキター!その隣の黒色の鎧に手を掛けベニートに尋ねる


「これは?」


「それはアダマンタイトだ、お前さんみたいな貧乏面したやつにはまだ早えーよ」


悪かったな、貧乏面で…頭来た、絶対に買ってやる!


「幾らか尋ねてるんだが」


声を低くして改めて尋ねるとベニートはほほう…とかしたり顔をしてこう答えた。



「金貨十枚だ。それ以下はビタ一文下げん」


「よし、買った!明日の朝、金を持ってくる。それまで取り置き出来るか?」


売れちゃったらやだからね、一応確認しとこう。


「ふん、生意気な小僧だな。こんな寂れた防具屋、物好きな貧乏しか来んわ!」


「商談成立だな…ではまた明日邪魔する」


俺は格好着けて扉に手をかけ外に出ようとする。すると後ろからベニートが声を掛けてきた。


「おい、とりあえず持ってけ」


ベニートがアダマンタイトの鎧を俺に向けて投げてくる。慌ててキャッチすると俺は何故こんなことをしたのか聞く。


「良いのか?」


「あぁ、アンリエッタの知り合いなら流石に盗みはしないだろ。お前さんは鎧を買いに来たんだろが!それにお前さんを気に入ったてのもある」



そうでした、意地張って帰るとこでした。とりあえずお礼を言っとこう


「感謝する」


「おう、そいつは自己修復のついた一点物よ!大事に扱ってくれや」


え、何それ!またゲーム的なの出てきたよ、武具に能力が付いてるのって完全にゲームだよね!


「ではまた明日お邪魔する。」


そう言ってベニートの鍛冶屋を後にした。改めてアダマンタイトの鎧を確かめてみる。かなり軽くて光沢があり太陽を反射している。丁寧に磨かれたそれは冴えない男の顔を写していた、誰が冴えない顔やねん


「主殿、よかったでござるな」


「ソラトすごい。あれだ。前、セレナにおそわった。買い物上手ってやつだ」


うちの従魔たちが俺を誉めてくれる。もっと誉めて良いんだよ?ソラト君は誉められて伸びるのさ。


「じゃあ、次は衣類でしょうか。冒険者御用達の衣服店が有るので案内しましょう」


ということでアンリエッタさんにホイホイ着いて行って買い物を済ませる。あれ、そういえばセレナが静かだなぁ?


「おい、セレナ__ 」


居ませんでした。あれー?さっき衣服店を出た時には居たんだけどなぁ…


「主殿、あそこでござる」


そこには通りの真ん中でセレナと知らない男が会話をしていた。誰だあいつ?


「それで以前話した件ですが、検討して頂けましたか?」


ヒラヒラした服を着て優雅に立つその男は中々イケメンだがどうにも気に食わない…


「いえ、ですからあの時私ははっきりと断りました…」


「答えを聞く前に任務で王都を出たと聞き居ても立っても入られずここまで駆けつけてしまいました。」


話を聞いてないのか男はセレナに一歩近づきそう捲し立てた。


ストーカーかよ、キモッ…!


とりあえず俺はセレナとそいつの間に割り込むことにした。セレナ押しに弱いからな…。



「あー、すんません。うちの婚約者に何か?」



セレナに触ろうとした汚い手を掴み口から出任せを言った。


一応そうゆう設定でクロッセアに入ったんだし大丈夫だろ。


「ソ、ソラト殿…」


チラッと見るとセレナは顔が真っ赤になっている。まぁ、大丈夫だから安心しとけ。


「貴様は一体誰だ!このニンジーク伯爵家の長子であるガリーノ様の会話に割って入るとは無礼なっ!」


うわっ、ダセー…親が偉いのにそれを笠に着て威張り散らすとかガキかよ…また、面倒臭いやつにセレナも絡まれたもんだ


「失礼なのはそっちだろう。セレナが言うには一度はっきり断ったらしいじゃないか。それに人の婚約者を捕まえてぐちぐち未練たらしく口説くあんたの方が失礼だ。それにここは王国じゃなくてクロッセアだ。あんたの身分なんかここでは糞ほどの役にも立たねえ」


そうなんです。ここは何処の国にも属さず共同で統治してるから貴族の威光なんて毛ほども恐ろしくない。


「貴様…!!調子に乗るなよ!者共、こいつを切り捨てろ!」


おっ、ニンジークだかニンニークだか知らないけどこの常識知らずは武力に頼るのか。正論を言っただけなんですけどねえ。


さて、先生出番ですよ?



「ブルース」


名前を呼んだだけなのにブルースがニンニクの私兵をぶち倒していく。ニンニクさんは驚きすぎて口が開いている。そんなに開けてると顎外れますよ?



「……まだやるか?」


どやっ!ニンニクさんを睨むとプルプル震えだしてそいつはどっか逃げてった。ざまぁみろ!


「セレナ、行こうか」


厄介者は居なくなったしこのままダンジョンとシャレこもうかね。高級なレストランじゃなくて締まらないけどさ。いやぁ、どうもどうも、道行く野次馬さんたちが俺に賛美を送ってくれる。ちょっと照れるね。あれ、セレナのようすが…!!


「ソラト殿…すまない… 」


あれ…泣いてる?どどどどどうしよう?えと、えーと…よし、とりあえず格好つけとくか


「涙はいつか来る大切な日にとっとけ。お前の大切な日にな。それに隊長が泣いてたら格好着かないぞ」


頭を乱暴に撫でて背中を向けて隊の皆が待つダンジョン前の広場へと歩き出す。確認はしてないけどちゃんと着いて来てるかな?うん、このまま行こう。


少しだけ…本当に少しだけだぞ?泣いてるセレナにきゅんと来たのは内緒だ。


ベニート 46才

ドワーフのおっさんで武具屋の店主。昔アンリエッタがよく世話になっていた。ソラトの言葉に心を動かされアダマンタイトの黒鎧を授ける。実はそこまで代金のことは気にしてない。実はツンデレ属性持ち

顔 ☆☆★★★

性格☆☆★★★

武力☆★★★★

魔法☆★★★★

髭 ☆☆☆☆☆



ガリーノ・ニンジーク 27才

ニンジーク伯爵家嫡男 たぶん二度と出番はないかもしれないモブ。セレナのストーカー

顔☆☆☆★★

武力☆★★★★

魔法☆★★★★

ストーキング☆☆☆☆☆



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