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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
一章 転移した者と付き従う者
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アリシア

む?知らない天井だ。なんてテンプレをしながら、ふぁー、おはようございます。。。


よく寝た…ん?朝か?いや、窓から見えるお日さまは中天を差してる。ってことは昼を回ってるのか。疲れは取れ、体力、魔力も回復してる様だ。


毛布から抜け、立ち上がる。戸を開けて部屋を出ると廊下だった。一体どこなんだろ?キョロキョロしながら歩いていると一人のエルフと知り合う。知らない人だ。


「すみません、ここはどこでしょうか?気を失って起きると此処にいたのですが、仲間は何処に居ますか?」



「貴方がブルースちゃんの言う『主殿』ですね?初めまして。私はアリシアと言います。一応この家の主です、今ブルースちゃんの所に案内するから着いて来て下さい!」


「あ、すいません。ソラトって言います。案内、お願いします。」


この家の主だというアリシアさんにほいほい着いていき二つの部屋を経由するとそこにはブルース、カミツレ、セレナなど俺の従魔たちが寛いでいた。アリシアさんの奥に俺の姿を見つけると三人はこちらへと駆け寄ってくる。



「主殿、お目覚めになったでござるか。アリシア殿、何か主殿が食べれる物を頂けぬだろうか?」


「えぇ、待ってて…すぐに用意するわ。ソラトさん、適当に寛いでて下さい。」


「すいません、アリシアさん。ご迷惑をお掛けします」


俺は頭を下げアリシアさんを見送る。丁度腹が減ってたんだ、有り難い。


「ソラト殿、ここが空いている。私の隣だ、座ってくれ」


「あ、あぁ、ありがとう」


来た、セレナのアピール攻撃。何だかんだ、セレナには慣れてきた。四六時中隣で歩いてたしその度に俺の気を引こうとしてくる。


……うん、


まぁ、あまり人の感情とか言いたくはないけど、

その、セレナは俺に…惚れてんだな。

と染々思う、これで勘違いとかだったら恥ずかしすぎて俺は死ねるぞ…?!


「ソラト、また沢山寝た。あれから2日立ったよ。」


うぇ?マジか…そりゃ迷惑掛けたな…


「そうなのか…ありがとな、皆。心配掛けてすまない」



「気にしない。ソラト弱い。オレ達ソラト守るの当たり前。ソラトこれから強くなる。」


「カミツレ!!口が過ぎるでござるぞ!」


「ブルースの言うとおりだ。もう少し内容を優しく話せないのか?」


「む?オレ事実だけ言った。悪くない。けどごめんなさいする。ソラトごめんなさい」


あぁ…そうだよな…まだまだ俺は弱い。カミツレは事実を語ってるだけだ。その気遣いが心に響く。カミツレの頭に手を乗せ軽く撫でる。つやつやのすべすべで気持ちいい。



「気にすんな。そうだな、頑張って強くなるよ。こんな情けない主だけど、いつか皆を守れるような立派な主になるからさ。その時までダメな俺を支えてくれ」


「拙者はいつも主殿のお側に」


ブルースが羨ましそうにカミツレの頭を見ている。ん、なんだ?


「私も側に居るぞ。何ならその…よ、夜の特訓も…ありだぞ…?」


おい、セレナ。それは少し違うんじゃないか?顔を真っ赤にして美人にそんな事言われて嬉しくないはずないだろ?だが、この作品は全年齢向けなんだよ。残念だったな(メタァ



「セレナ、盛りすぎ。コボルトの発情期よりひどい。セレナには無理、オレがソラト鍛える。」


「皆ありがとな。気持ちだけ受け取っておくよ。明日の朝にはダンジョンに向かって特訓だ。しっかり休んでくれよ?」


「承知!」「あぁ!」「わかった!」


うむ、返事は良いな。その後俺はアリシアさんが運んできてくれた麦粥を食べながら話し合う三人の姿を見てほっこりした。内容は不適切なのでお話出来ないがそれはもう聞いてるこっちが赤面するくらいの内容でした。



さぁーて食事も終わったし、歩く程度の体力はある。少し里を回ってみようかな。皆着いて来ようとしたが俺はそれを断り好きに過ごすよう頼んだ。


ブルースは木材やダンジョン探索に必要な道具、物資集め、セレナは部隊の修練、カミツレはお昼寝らしい。さて、行きますか。



「ソラトさん、すみません」


玄関を出ようとしたとき、後ろから声が掛けられる。


「アリシアさん、どうしたんですか?」


「ブルースちゃんからソラトさんが里を回ると聞いたので案内しようかと。一応私は里長をしてますので」


「そうなんですか。それなら是非ともお願い出来ますか?」


「任せて下さい!」


銀髪を揺らしにこりと微笑むアリシアさんに俺は内心どきっとした。


だってエルフだぜ?エルフ!


実はエルフ兄妹に会ってからテンション上がりっぱなしなんだよな!

ゲーマー冥利に尽きるぜ!


オラ、ワクワクすっぞ!


「では、行きますか!まずは商店や市場でしょうか…庭園もいいな…どうしましょうか?」


にこにことあれこれ考えながら楽しそうに話すアリシアさん。アリシアさんの笑顔を見ているとこっちも楽しくなってくるな。


「あ、じゃあお任せします。」


「はい!この里の魅力を沢山お伝えしますよ!」


溌剌とした表情で俺の手を引くアリシアさん。この里が好きなんだろうな。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼



三時間ほど連れ回されて茶屋で一休憩。紅茶というよりも緑茶に近いそれは日本人の俺の舌によく馴染む。ふぅ…癒される。


「あー、楽しかった!そろそろいい時間ですね…あ、一番大事な場所を忘れてました…最後に一ヶ所だけ案内したい場所があるんです。良いですか?」



「ええ、勿論ですよ!お願いします!」


茶屋を出て西の方へ向かう。比較的疎らに生えた木々を通り抜けると川が流れており雰囲気の良い川原に出た。


「ふぅ、着いた!ここです、ここが連れてきたかった場所なんです!」


「なぜ此処に?」


「ここは私とブルースちゃんが初めて会った場所なんです。三百年も昔の話ですけどね。」


首を傾げながらおどけたように笑い舌を出すアリシアさん。正直、あざといぞ?可愛いから良いけど


「そうなんですか。じゃあアリシアさんがブルースの言っていた『エルフの友人』なんですね?」


「ふふ、友人…ですか。嬉しいなぁ。あの時私は家の手伝いが嫌で家を飛び出してここに来てました。私結構お転婆だったんですよ?」


後ろ手に組みながら微笑むアリシアさん。森とエルフって最強だよな……うん。俺の中のエルフスキーがシャウトしながらヘドバンを始めた。



「その時、傷付いた珍しい色のスライムに遭遇したんです。慌てて薬草を採取して薬を作って飲ませると少しずつ元気になって私に懐いたんですよ。可愛かったなぁ……今の姿もすごく可愛いけど」


嬉々として思い出を語り出すアリシアさんは楽しそうで幻想的で、まるで夢でも見てるんじゃないかと俺は錯覚したほどだ。


「流石に家には連れて帰れないからその日は別れて、次の日もまた次の日も沢山食べ物を持ってここに来たんです。ブルースちゃん美味しそうに食べててみてるこっちが楽しくなっちゃったんですよ!」


「だけど、ある日突然ブルースちゃんは居なくなりました……私は必死に探したんです…けど見つからなくて…後から聞いた話なんですけど、ブルースちゃんは進化して私にお礼をどうしても自分の言葉で伝えたかったらしいんです。そこまでしなくても良いのにって思ったんですが、私嬉しくて…!」


当時の気持ちを思い出したのか突然泣き始めたアリシアさん。そうだよな、突然居なくなったら辛いよな…。


「だけど、ブルースちゃんはちゃんと私の前に現れてお礼を言ってくれたんです。嬉しかったなぁ…その時仕える『主殿』のお陰で進化出来たって初めてソラトさんの事を聞いたんです。しかも里の危機を救ってくれた…!あ…ちゃんとお礼してませんでしたね…里を救ってくださりありがとうございます、ソラトさんは里の英雄です!里長としてお礼を言わせて下さい!」


英雄なんて照れるな‥俺は無我夢中で戦っただけなのに…でも悪くない気分だ…!


「いえ…当然の事をしたまでです。それに何日もお世話になってしまって申し訳ないです」


「あら、何時までも居てくださって大丈夫ですよ?里の皆も歓迎してくれるでしょうし」


「お言葉に甘えてばかりには行きません。俺達は明日の朝からダンジョンに向かうので」


「なら…私も連れてって下さいませんか?これでも魔法の腕には自信が有るんですよ?」


力こぶを作るポーズをして冗談ぽく笑うアリシアさん。居てくれたらすごく心強いだろうな…だけど。


「そこまで甘えては申し訳ないです。そうですね、どうしてもアリシアさんの力が必要な時は頼らせてもらうかもしれません。それにまだまだ俺は弱いので恥ずかしいところを見せたくないので強くなったらもう一度里に遊びに行かせて貰います」


「約束ですよ?」


「ええ、約束です!」


俺はアリシアさんに差し出された右手をやさしく握り握手をする。俺みたいにゴツゴツしてなくて滑らかな女の子の手だ。この世界にも握手の文化が有るんだなと余計な事を考えながらアリシアさんに声を掛け里に戻った。

今回で第一章《転移した者と付き従う者》完結です。

拙い作品ですがどうかこれからも宜しくお願いします。

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