、
虚無…。
俺の心を支配する感情。何故勇者に喧嘩を売ったのか、獣王国に宣戦布告をしたのか。
それは自分でさえ分からない。だけど、言える事は一つ…。俺が魔王として君臨する為の唯一無二の目的。
それは………
「主殿ー!東からまた騎馬民族が攻めて来たでござる!如何致すでござるか?」
「んあ?そういやカミツレが暇そうにしてたな…ブルース、カミツレ引っ張ってちょいと蹴散らして来い。あ、殺すのは無しな?」
「承知に御座る!」
ふぁ〜あ…ポカポカ陽気の元セレナの膝枕で微睡んでいた俺の元にブルースが報告したのは些事だった。
獣王国に宣戦布告をしてから一週間が経った。あいつら…というより、レオンハルト三世は強情で素直に降れば良いものを断固拒否とし、フロストバニアに逆に宣戦布告してくる始末だ。よって…あー、名前は忘れたが、ナントカという姫は現在城の牢屋に閉じ込めている。特に害するつもりはないから元セレナ隊の現近衛騎士団に持ち回りで世話をして貰ってる。
そして勇者…いや、ユキヤ達は現在ダンジョンの71階層付近にいるらしい。
いつだったか、モネと落とし穴に落ちプルと出会い、ブルース達と再会した思い出の場所だ。
「さて…そろそろ仕事に戻るかねぇ…」
「ソラト!あ…えと…いや、何でもない…」
「どうした、セレナ?言いたい事があったらハッキリ言えって。」
「ウッ…そう、か?じゃあ言わせて貰おう…少し、無理してないか?」
「んあ?別に何も無理なんてしてないが。お前は自分とお腹の子供の事だけ考えてりゃ良いんだ。分かったな?」
「はうッ…不意打ちは止め…じゃなくて、誤魔化そうとしてもそうはいかないぞ?!」
ハハッ、そりゃそうか。仰る通りキスで誤魔化そうとしたんだが、ウチのカミさんはそう甘くはないらしい。だがここはこのまま押し切らせて貰おう。
「クックック…セレナよ、我はこの大陸に覇を齎す魔王だぞ?この程度で止まれるか…!セレナ、お前は自分とお腹の子供の事だけ考えていれば良い。分かったな?」
「それはそうだが…私は夫の心配もさせて貰えないのか?」