魔王様、獣王国へお散歩に
待 た せ た な !!(某傭兵風
遅くなりました、不定期になりますが連載を再開します!
読者の方々には大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございません…
ソラトの旅はまだまだ続きます!エタらないよ?!
今までの大まかなあらすじ
とある夏の暑い日、エアコンの壊れた部屋でゲームを遊んでいた大学生結城 空人。
暑さに耐えかねコンビニへアイスを買いに行った帰り道に居眠り運転のトラックに轢かれ短い生涯を終えるーー
かと思いきや気が付けば広大な草原に一人佇んでいた。
周囲には跳ねる粘性魔物スライムや額から角を生やした兎が闊歩していた。
まるでゲームじゃないか!ーー若いソラトは心を躍らせる。
脳内に響く謎の音声に戸惑いながらもソラトは水と食糧を求め充てもなく歩き出す。
漸く川を見つけ、魚を取って食事をしていると一体のスライムがゆっくりとソラトへと近づいてくる。
何故かそのスライムは武士言葉でソラトに感情を伝えてきた。
腹が減っているらしく余った魚や食べられない骨や内臓などを分け与えるとソラトの脳内で謎の音声が響く。
『スキル【テイム】を習得しました』
これがソラトと最大にして最強の剣、ブルースとの出会いだった。
ソラトは人化したブルースと冒険し、沢山の仲間を手に入れる。
しかし同時に決して開けてはならない扉を開きその足を一歩踏み出してしまった。
仲間を増やし強大な力を得た為にソラトは魔王へと覚醒してしまう。
五感を失いながらも懸命に生きる青年は遂に自ら国を興す。
前回のあらすじ
ある日属国となった帝国皇帝ハルトから勇者ユキヤがソラトの国フロストバニアへ向かおうとしている事を聞かされる。しかしブルースが足止めしている為上手く身動きが取れないユキヤに以前から興味を示していたソラトは会う事を決めた。
部下に何も告げず獣王国へ転移したソラト。物語はここから続く。
では本編をお楽しみ下さい!
獣王国付近に辿り着くと俺は早速城門目指して歩き出した。
突発的な行動なので部下は勿論、ブルースウォッチすら着けていない。
冬だと言うのに穏やかな気候の西側は何となくのんびりとした気持ちにしてくれた。
暫く歩くと5メートルを超える大きな城壁に近づいてきた。
門番が此方に気付き槍を構え警戒している。
「貴様何者だ!」
「ここを獣王様が治める地だと知っての行動か!?」
「やぁ、ご苦労さん。面倒だから邪魔しないでくれるとありがたいんだけど…ダメかな?」
無理を承知で頼んでみる、が聞く耳持たず兵隊の数は増えていくばかりだ。
「はぁ…俺は勇者ユキヤの同郷の者だ。ユキヤに会わせてくれないか?」
なるべく穏便に済ませたい。もしかしたらフロストバニアの国民になるかも知れないのだ、丁重に扱いたい。
これでダメなら動きを封じてでも強引に押し入る事にしよう。
「皆、武器を納めろ!」
「道を開けて下さい、彼は敵じゃありません!繰り返します!彼は敵じゃありません!」
そんな事を考えていると目の前に大柄な熊人が現れた。
そいつは何か気付いたかの様に俺を見て口を開く。
「おっ?ソラトか?テメェ俺らを放っぽり出して何処ほっつき歩いてやがった!礼を言いそびれちまったじゃねえか!送り届けてくれてありがとうだ、この野郎!」
何処かで見たような…あぁー、確かダンジョンの深層にいたクマ公か…名前は確か…
「お前…誰だっけ?」
「ガルーだ!いい加減覚えろこの野郎!」
そうそうガルーだった。その隣には小柄な熊人の少女が立っており目が合うとペコリと頭を下げた。
「お久し振りです、魔…勇者様!以前は兄妹共々お助けいただきありがとうございます。とりあえず中へどうぞ!仲間達には私の方から事情を話しておきます!」
「あー、えっとクルンだったか?すまん、助かるぞチビクマ」
「お前、折角名前で呼んだのにもう呼び方変えるのかよ…」
大きい方のクマ公が口元を抑えうわぁ…と口から漏らしている。
脳筋に哀れに思われるのは癪に触る。
それから物置みたいな狭い小屋に案内され(一応兵士の詰所らしい)、チビクマが他の兵士へと説明を始め俺はクマ公と席を共にしながら五人の監視に付けられた兵士に睨まれながら口を開いた。
「おう、クマ公!そういえばいつ獣王国に戻ったんだ?いつの間にかクロッセアの屋敷から居なくなってたよな?」
「何言ってるんだ?お前の部下の青いプルプルした姉ちゃんが送ってくれたんじゃねえか!」
ん?はて?俺はブルースにそんな事を命令したっけか?
よく覚えてないがもしかしたらブルースが気を遣ったのかもしれない。さすブル!
とりあえず話を合わせておこう。幸いこいつは脳筋だ、大して気にしないだろう。
「あー、そうだった!悪い悪い!ここ最近忙しくてすっかり忘れてたぜ!元気そうで何よりだ!」
「お前…実は知らなかったとかじゃねえだろうな?まぁいいか。そんで獣王国には何をしに来たんだ?」
こいつ…脳筋のくせに意外と鋭い…だと?!
話題を変えてくれたのでとりあえず乗っておこう。
「ん?あぁ、同郷の勇者にちと挨拶にな。」
「ああ、ユキヤのことか!荒削りだが中々いい筋肉をしてるぞ、あいつは!ソラト、お前は獣人の女より細いな?もっと肉食え!肉ッ!」
おおー!脳筋ぽい発言が飛び出した。
あれかな?筋肉で人を判断してるのかな?
それと大きなお世話だ。
こちとら味覚を失ってから食事量が極端に減ったが前世より筋肉量は増えたんだぞ?
まぁ脳筋に言っても仕方ないので敢えて無視するけど。
「そういやソラト!ジンの旦那やカミツレは元気か?また一緒に酒を酌み交わしてぇもんだ!」
「あぁ、元気だぞ?ジンなんかこの前魔族の新妻を娶ったばかりだしな。後で伝えといてやるよ!それととある理由で今はスカイって名乗ってる、出来ればそっちの方で呼んでくれ!」
「んー?スカイ…ねぇ。あいよ、お前らもソラトの事はスカイって呼べ!良いな?」
いや、彼らは関係ないような…
「あの…隊長!仲良さそうに話してますけど大丈夫なんですか?一応俺たちこの人を警戒してるわけでして…」
恐る恐ると言った風におずおず手を上げる犬人の青年。
というかクマ公って隊長格なんだな。別にどうでも良いが。
「気にすんなポロン!それに俺とクルンの命の恩人だぞ?つまりはお前たちの恩人でもある訳だ!帝国の魔族からも守ってくれたしな!」
「え?初耳なんですけど!それと獣王様に報告してきますね!?帝国の侵攻からその人が守ってくれたと言うのならば直ぐに報告しないと!獣王様滅茶苦茶探してましたから!」
扉を急いで開けて出ようとするポロン君。だが何かにぶつかり尻餅を突いてしまう。
「その必要は無い。全て聞かせて貰った!」
威厳の漂う低い声、堂々とした立居振る舞い、豪緒な赤のマントを靡かせ仕立ての良い服に袖を通したやたらデカい二足歩行の頭に冠を乗せたライオンが居た。
うん、獣王だよねこの人。
お久し振りの方はお久し振りです。
如月です、前書きにもちょろっと書きましたがデータ紛失によって更新が滞ってしまいました。
別作品のリリアナ〜は更新前日に書いていたので何とか連載を続けられましたが、本作と一から始めるダンジョン〜は取り返しが付かなくなり後者は降板をせざるを得ませんでした。
ですがせめて本作だけは復活させたい!
そう一心に思いながらもデータは復活せずまた一から書き直すことに決めました。
遅筆な作者ですがどうか今後とも宜しくお願いします。